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龍がついてきちゃった話

今朝は何週間ぶりに台所に立って料理をした。

今まではカップや皿を洗うのが精一杯。立っていることがつらいし、そもそもお腹がすかず、食欲がないので、アミノ酸のサプリなどを飲んで、あとは外出した息子に頼んで、コンビニで買ってきてもらうサンドイッチなどで生きていた。

今日は肉じゃがを作ろうと、じゃがいもやにんじんの皮をむき、下茹でするために小さめに切っていたら、変な言い方だけど、久しぶりに「生きたものに触れた」感じがした。冷蔵庫で冷え切ったいもやごつごつしたにんじん、なかなかむけない玉ねぎの皮…。

あたりまえだったことから離れると新鮮である。そして、昨日買い物したときにしらたきを買い忘れるという痛恨のミス!仕方ないのでマロニーちゃんを代わりに入れてみた。

肉じゃがを作りながら、N H K B Sの、水木しげるさんが遠野物語の地を訪ねる番組を見ていた。2010年のものらしかった。昨日も水木さんが出ている番組をやっていて、通院で出かけるため最初だけ見たのだが、そのなかで水木さんが「この世には出てきたくても出てこられない存在がいて、なにかの拍子に姿をあらわす。それに触れたものは伝えなくちゃならないと思う」という内容のことを言っていた。聞いたときに真っ先に思い出したのが龍のことだった。

10年以上前になるが息子が小学生だった頃、彼が入っていたボーイスカウトで山梨県の忍野村にキャンプへ行った。

富士山に降った雨が長い年月をかけ湧き水となる「忍野八海」という小さい湖というか池があり、そのなかのひとつのほとりにある宿に泊まり、3泊4日を過ごした。山登りやキャンプファイヤー、ゲーム、芋掘り、忍野八海をまわるハイキングなど盛りだくさんだった。

富士山のふもとというだけあって、私にとっては、こんなに近くで富士山を見たことがないという大きさで、目の前にどーーんと存在するでっかさに、ただただ圧倒された。

宿は小さく古い建物で、おばけが出るというウワサがあったが、幸い私は何も見ず感じず、それどころか、キャンプファイヤーで披露しようと子どもたちに内緒で夜な夜な父母だけで集まり、当時流行っていたA K Bの曲のダンス練習に夢中だった。バカバカしいことを真剣にやるのはいいものである。

キャンプファイヤーでの出し物はスピーカーがなく音が小さかったということが悔やまれたが、子どもたちの笑いを誘い、長いと思っていた3泊4日の旅は無事終わり、おばけも見なくてよかったなぁ〜と帰ってきたその晩のことだった。

夜中に寝ていると、耳元で複数の人の話し声のような、ラジオのノイズのような音がしてきた。同時にトンネルの中にいるようなゴーッとした音。なんだなんだ?と目が覚めた次の瞬間、あおむけで寝ていた私は、そのまま下から突き上げるように、天に向かって一瞬で200mほど空に持ち上げられた感覚におそわれた。

なんだ、これはーーーっ!!

とにかくものすごい速さで上に向かって進んでいく。これはまずい!どこまで行ってしまうかわからないと思い、力を振り絞って身体を起こそうとした。しかし、なかなか思い通りにならず、身体を起こすことができない。どんどん天高く昇っていくのがわかった。このままだと宇宙に放り出されてしまうぞ!私は、ありったけの力で身体の向きを変えた。

すると、あのゴーッという音や、ものすごい勢いで天に昇る感覚がやんで、しーとした真っ暗な自分の部屋に戻っていた。となりの布団では息子がすうすうと眠っていた。

私は一体何が起きたのかわからず、心臓はバクバクするわ恐ろしさでガタガタ震えていた。その夜はそれきり何も起こらなかった。

あの体験はなんだったのか…。誰にも言えず、数日考えて思い当たることがあった。

龍である。

キャンプで泊まった宿の忍野八海のほとりに立て札があり、そこには、昔からこの池には龍が住んでいるという言い伝えが書かれていた。一緒に参加していたお母さんとそれを読み、忍野八海を回るときに歩きながら、むかし見た龍の夢の話などしていたのだった。

子どもが生まれる前の年にみた夢で、外国人のような背の高い男性が「おもしろいものがあるから見せてあげる」というので、ついて行くと、長方形の形をした平べったい木の枠の箱があり、中にこどもの竜がいたのだった。竜は1.5mくらい、カルピスみたいな白濁した色をしていて、生きてごそごそと箱の中で動いていた。私はそばに行き、手を伸ばして竜に触れたのだが、その感触がなんとも言えなかった。ひんやりしていて弾力があり、ゼリーのような…。でも、この世で触れたことがない感覚なのでたとえられないのだが、なんとも不思議な触感だった。

ガメつい私は、その夢をみてきっと縁起がいい夢に違いないと思い、宝くじを買ってみたがハズレ笑。しかし、翌年の正月、山が大噴火する夢をみた後、子どもを授かった。


当時通っていたユング心理学の分析家には、キャンプ後の不思議な体験を話すことができた。

先生は「(龍が)ついてきちゃったんでしょうね、この人ならと思って。あなたが体験して、(龍を)帰した。」

私「あのまま身体を起こそうとしないでいたらどうなってたのかなあ。どこまで行ったのかなと思うんです。行き着くところまで行っちゃえばよかったのかなって。」

先生「よかったですよ、身体起こして。帰ってこれなかったかもしれない。でも、いつかこの体験を書かなくては、ですね。存在を知らせてくれた龍のために」


今日の水木さんの番組で、遠野ではお盆にお供えする食べ物の上に、ところてんをかけるという風習があるのを知った。

あ、ところてん?!

あの夢の、私が触れた竜の感覚。似てるかも…?

でも、ところてんをちゃんと触ったことないと気づく。


肉じゃがに入れたマロニーちゃんは、汁をぜーんぶ吸って茶色ーくなっていました!

やっぱりしらたきじゃないとね。


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