見出し画像

映画レビュー『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)’90年代の女子高生に捧ぐ

高校時代の親友たちとの再会

韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(’11)の
リメイク版です。
(原作は観たことがありません)

『モテキ』(’11)、『バクマン。』(’15)などを
手掛けたことで知られる大根仁監督が
監督・脚本を務めました。

夫・娘との三人家族として、
平凡な主婦として暮らしていた
阿部奈美(篠原涼子)は、
偶然、病院で高校時代の親友・芹香(板谷由香)
と再会します。

芹香は末期がんを患っており、
余命1か月と宣告されていました。

奈美と芹香は、高校時代に
「SUNNY」という6人グループで、
いつも行動をともにしていたのです。

彼女たちはある事件をきっかけに、
疎遠になっていました。

奈美は芹香が亡くなる前に、
もう一度、高校時代の仲間たちと再会させるべく、
バラバラになった旧友たちを探しはじめます。

’90年代ヒットソングのオンパレード

本作は現在と過去の物語が、
交互に描かれていきます。

原作の学生時代の設定は、
’80年代だったようですが、
本作の時代設定は’95~’97年です。

あの時代をリアルタイムで
過ごした方ならば、
説明するまでもないことですが、
この時代は日本の音楽史の中で、
特にCDが売れた時代でした。
(ピークは’98年)

毎週のようにヒットソングが生まれ、
テレビでも街中でも、
絶えることなく、
それらの音楽が耳に入ってきたものです。

本作では彼女たちの青春時代を彩った
安室奈美恵、TRFといった、
小室ファミリーを筆頭に、
小沢健二、久保田利伸、
ジュディマリ、パフィーなど、
多くのヒットソングが使用されています。

私自身は、彼女たちよりも少し下の世代で、
当時は中学生でしたが、
やはり、それらの音楽を聴くと、
その頃の思い出が鮮やかに甦ってきますね。

音楽はBGMとして流れるだけでなく、
当時のコギャルルックである
茶髪、ガングロ、ルーズソックスといった
いで立ちの女子高生たちが
曲に合わせてダンスを披露するシーンもあります。

この辺りの見せ方が、
とりわけ音楽には強いこだわりを持つ、
大根監督ならではの見応えを感じました。

’90年代スタイルを知るきっかけに

このような時代設定なので、
もちろん、ばっちりハマるのは、
’90年代に青春時代を過ごした方々でしょう。

しかしながら、若い方が
’90年代を知るきっかけの一つとしても、
本作は機能するはずです。

時代には、その時代ごとの
様式のようなものがあります。

それを疑似体験するツールとしては、
映像作品がもっとも効率がいいのです。

例えば、本作を振り返ってみると、
学生時代の描写に携帯電話が
出てくるイメージがありません。
(まだポケベルの時代だった)

たぶん、この時代には、
高校生が携帯電話を持つのは、
一般的ではなかったのではないか
と思うのです。

先ほども書きましたが、
私自身は劇中の女子高生よりも
いくつか下の年齢で、
’98年に高校に入学しました。

その頃の高校生は、
まだまだPHSが主流だった気もしますが、
多くの人が携帯電話を持っていたんですよね。
(私は持っていなかった)

これは細かいところなので、
リアルタイムで過ごした人でなければ、
あまり気にしないところかもしれませんが、
この時代を知るうえでは、
結構、大きいことのような気がします。

特徴的なファッションや音楽だけではなく、
さまざまなツールが変化していることも、
このような作品から、
窺い知ることができるのです。

また、本作で描写されている
学生時代の過ごし方、
特に、少し開放的な高校時代の青春は、
世代が違っても共感できるところが
多くあるのではないかと思います。

若い世代の方は、
本作を観て、自分の青春時代と比べてみるのも、
また一興かもしれません。


【作品情報】
2018年公開
監督・脚本:大根仁
原作:『サニー 永遠の仲間たち』
出演:篠原涼子
   広瀬すず
   小池栄子
配給:東宝
上映時間:119分

【原作】

【同じ監督の作品】


この記事が参加している募集

#映画感想文

66,844件

サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。