映画レビュー『音響ハウス Melody-Go-Round』(2020)名曲の誕生秘話、音響ハウスの魅力とは
音響ハウスを知ってますか?
アルファベット表記で
「ONKIO HAUS」、
このワードは、
YMO 関連の情報を
漁っていた頃に
よく見かけたワードでした。
これは音楽の
録音スタジオの名称で、
日本語表記では
「音響ハウス」と書きます。
音響ハウスは、
’73年、東京都中央区銀座に
設立されました。
以降、半世紀近くも、
多くのミュージシャンに
愛用されてきたスタジオです。
本作は、歴代の著名な
ミュージシャンたちの証言も
交えつつ、
音響ハウスの歴史を辿る
ドキュメンタリー作品に
なっています。
音楽はどのようにして
作られるのか
本作の冒頭では、
メンテナンスエンジニアの
遠藤誠さんが出社する光景が
収められています。
遠藤さんは、毎日、
ピッタリ同じ時間に出社・退社し、
スタジオ機材のメンテナンスを
行なっているそうです。
その仕事ぶりは、
まさに職人的な立ち振る舞いで、
このように、陰でスタジオを
支えるスタッフがいることによって、
良質な音楽が生まれるのだ、
というのが実感できる映像でした。
そこから映像は、
スタジオでセッションする
ベテランミュージシャンたちに
切り替わります。
そこには、
ギタリスト・佐橋佳幸を中心に、
ドラム・高橋幸宏、
キーボード・井上鑑、
といった錚々たる
顔ぶれが揃いました。
ブースの向こうで、
ミキサーを調整するのは、
レコーディング・エンジニアの
飯尾芳史氏です。
彼もまた、YMO などの
レコーディングに携わり、
この道40年以上の
大ベテランなんですよね。
彼らがレコーディングしているのは、
この映画のための主題歌でした。
コンピューターによる
打ち込みの音が多く、
ボーカルもまだありません。
本作では、
この楽曲のレコーディング風景と
関係者のインタビューによって
構成されています。
レコーディング風景を
収めたパートでは、
音楽がどのようにして
作られるのかが、
よくわかる内容になっています。
最初は、打ち込みの音が
多く含まれる楽曲でしたが、
ここにストリングスやブラス、
ボーカルを加え、
徐々に楽曲が完成していくのです。
その工程を順を追って
見ていくのもなかなか
エキサイティングな内容でした。
名曲の誕生秘話、
音響ハウスの魅力とは
なんせ、50年近くの歴史を持つ
有名なスタジオですから、
インタビューに登場する
アーティストも
錚々たる顔ぶれでした。
以下に、その一部を列挙します。
坂本龍一、矢野顕子、
佐野元春、
デイヴィッド・リー・ロス
(ヴァン・ヘイレン)、
綾戸智恵、松任谷正隆、
松任谷由実、葉加瀬太郎、
鈴木慶一、大貫妙子
どうですか、このメンツ。
これだけのミュージシャンが
愛してやまないスタジオが
この音響ハウスというわけです。
ミュージシャン以外にも、
CM 用の音楽を制作する
会社の方なども出演し、
大滝詠一が手掛けた
三ツ矢サイダーの CM ソングの
録音風景について聴けたり、
資生堂の CM に使われた
忌野清志郎・坂本龍一による
『い・け・な・いルージュマジック』
の誕生秘話が聴けたり、
他では聴けない
レアなエピソードが
満載でした。
ミュージシャンへの
インタビューでは、
音響ハウスの「音の良さ」を
挙げるミュージシャンが多いのは、
当然のこととして、
「使いやすさ」を挙げる方も
多かったのが印象的でした。
やはり、スタジオは、
長時間使う場所なので、
ストレスなく、
音楽に集中できる環境こそが
もっとも大事なのでしょうね。
当たり前といえば、
当たり前ですが、
こうしてアーティストの方々の
生の声を聴かなければ、
素人にはわからない話です。
また、そういった居心地の良さ、
使い勝手の良さは、
冒頭に登場した
メンテナンスエンジニアの
遠藤さんのように
黒子として働く
無数のスタッフのたゆまぬ
努力があってこそのもの
だろうと思います。
これからも音響ハウスから
たくさんの魅力的な音楽が
生まれるのが楽しみです。
【作品情報】
2022年公開
監督: 相原裕美
出演:佐橋佳幸
飯尾芳史
高橋幸宏
配給:太秦
上映時間:99分
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※本文中の画像は
音響ハウス公式サイトから
お借りしました。
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