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チョコレートリリー寮の少年たち

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自己満足で書いているお話です。チョコレートリリー寮に住んでいる少年たちの、とうといまいにち。 ご飯を美味しそうにたべます。 (少年たちがいちゃいちゃします、要注意)
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#創作

スピカの写真集⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

「すごいなこれは、完全にモデル撮影の機材じゃないか」
「触るなよノエル次触ったら追い出すからな」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
「部費で落としたとはいえど、素人が触っていいものじゃない」
小鳥遊先輩が必死にカメラを庇っている。
「はいはい、じゃあ俺たちはちびっこたちと壁に張り付いてるよ、スピカ、頑張れ!」
背中をどんどん力強く叩いて激励して、ノエル先輩が壁の方へやってきた。
「スピカ!かっこいい

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スピカの写真集④【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集④【チョコレートリリー寮の少年たち】

よく分からない理論を述べながら、セルジュ先輩が小鳥遊先輩に近づいて、杖でとんとん、おたまを叩いた。するとあっという間に自動的にうごくおたまになった。
「あとは勝手に駆動する。ぜひみんなで一緒にご飯を食べよう」
「セルジュ先輩、すごい!」
「天才ー!!」
天使たちが唱和する。立夏が憧れの眼差しをセルジュ先輩にむけて、にこにこと微笑んで拍手をした。ちょっとだけやきもちを焼いたのはここだけの秘密だ。

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スピカの写真集③【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集③【チョコレートリリー寮の少年たち】

「ぼくらの情報網によると、えっと……パンチェッタのミモザガーデンサラダがメインで、三日月麺麭、きのこと玉ねぎのミネストローネ、だったと、思います」
「今日も美味しそうだね。給食のことは、天使たちに聞くのが一番だ。なぜ献立表に載ってないメニューまで知っているんだろう」
サミュエル先輩がさらりとブロンドの髪をゆらして首を傾げた。
「くわしいことはひみつです」
「うん、秘密」
「学食情報については、任せ

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スピカの写真集②【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集②【チョコレートリリー寮の少年たち】

立夏が、机上にあった小さなベルを鳴らしてママ・スノウを呼んだ。メモを渡している。
「立夏くん、ありがとうございます……あと、ご学友一同のお写真の件は……」
「せっかくの写真集だし、みんな、協力しよう」
「はーい!」
「やった!たのしそう!」
「ぼくはすみっこにいていいですか」
「ロロは僕が責任をもってセンターに」
「わあ、どうしよう。リボンの編み込み、気合い入れなきゃ!可愛く撮ってくださいね」

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スピカの写真集①【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集①【チョコレートリリー寮の少年たち】

四限を終えた放課後。
僕たちはいつもと変わらずデイルームではしゃいでいた。おひさまが傾いていく優しい夕暮れ時、スピカが物憂げにアナスタシアが注がれたグラスに視線を落としたままでいることに気づいた。
僕のとなりでじゃれあう天使とリヒトをノエル先輩とサミュエル先輩にちょっとごめんね、とおしつけて、スピカの隣の席に着いた。
「スピカ、大丈夫?なんだか元気ない。隣、失礼するね」
「ん、あ、ああ、エーリク。

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ハッピーバレンタイン!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

ハッピーバレンタイン!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

今日は、待ちに待ったバレンタインデー。
いつものメンバーみんなで寄り集まり、デイルームでささやかなパーティーをひらくことになっている。
僕は天使たちが起きる前に、なるべく物音を立てないようにガトーショコラとお星様の形のクッキーを焼いた。もちろん、立夏あてのものだ。緑色の箱にしまい、不器用なりに赤いリボンをかけ、さくらんぼと葉っぱを模した飾りをくっつけた。なかなかおしゃれにしあがってしまい、これはも

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比翼連理【チョコレートリリー寮の少年たち】

比翼連理【チョコレートリリー寮の少年たち】

日曜日の朝、昨晩まで降り注いでいたパウダースノーを纏わせたつるばらのアーチを、立夏と手を繋いでくぐり抜けた。109号室に集結した仲間たちが窓から手を伸ばして、大声で、いってらっしゃい!とか、転ぶなよ!とか、楽しんできてね!などなど、ちょっと照れてしまう言葉のシャワーをあびせてきた。顔を見合せて微笑み合い、僕らもひらひらと手を振って、チョコレートリリー寮を後にした。
「立夏、きょうはふたりきり、だね

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雪合戦!【チョコレートリリー寮の少年たち】

雪合戦!【チョコレートリリー寮の少年たち】

とある日の放課後、最悪で、でもとてもたのしいことがあった。でもこれは僕の鍵付き日記帳にかきとめたものなので、あまり面白くないかもしれない。初めに謝っておくね、ごめんなさい。
エーリク・ミルヒシュトラーセ

元旦の喧噪もすっかりおさまり、僕らはいつもの日常を取り戻しつつある。しかし、ちらちらと降ってきた雪がいっそう降り積もり、やがて猛吹雪に変わった。寒さに弱い僕はますます憂鬱な気持ちになってきた。ス

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夏季休暇のアルバイト!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

夏季休暇のアルバイト!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

期末テストからようやく解放され、まちにまった夏季休暇がやってきた。僕ら実家に帰らない一年生の親友たちが、一週間に三日、再び物語喫茶レグルスのギャルソンとして雇われることになって、皆かおをみあわせてはくすくす笑ったり、スピカがロロの髪を入念に手入れしたり、とてもそわそわどきどきしている。
ひと月ほど門限が0時になるので、レグルスで暴れ放題だ。たのしいなつやすみのおもいでにしようね、と、リヒトがとても

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リュリュの本気【チョコレートリリー寮の少年たち】

リュリュの本気【チョコレートリリー寮の少年たち】

「…………ねえ、ねえエーリク。エーリク!!起きてってば、お疲れ様!」
四限終了のチャイムが遠くで聴こえる。突っ伏して睡魔と戦っていた僕の覚醒をうながす、リヒトの声もきこえる。
「今日放課後、なにか予定、ある?」
気だるげに後ろを振り返る。
「…………おはよう」
「おはよう、気付け薬、気付け薬」
チョコレートボンボンを手のひらに三つ乗せてくる。
「ありがとう、いただきます!」
「ところで、予定は……

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Happy birthday!(改稿)【チョコレートリリー寮の少年たち】

Happy birthday!(改稿)【チョコレートリリー寮の少年たち】

きょうはいよいよ、僕の誕生日パーティーが邸宅で催される。楽しみで気持ちが高ぶり、なんだか上手く寝付けなくて、うとうととしているうちにあさをむかえてしまった。洗面台で身支度を整え、式典用ローブに着替てから、鏡台に座る。じっと自分の顔を見つめる。ひとつ歳をとったけれど、昨日の僕と全く同じ僕が写っている。
誕生日って、ふしぎだ。
ふわふわな髪を、ファルリテに借りていたコテでくるくるにする。全然うまくでき

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春の学院祭【チョコレートリリー寮の少年たち】

春の学院祭【チョコレートリリー寮の少年たち】

今日はいよいよ、春の学院祭当日だ。僕たちのクラスからは、蘭の提案でお好み焼き、というものを鉄板で焼いて提供することになった。昨日の夜中まで頑張って作っていた「スピカ君のとってきたうみたてたまごのお好み焼き」という大きな旗が春の暖かい風に揺れている。
「たまご、おれがとってきたって、なんでわざわざ書くんだよ」
「そのほうがうれそうです、から」
「黒蜜店長にも、アドバイスしていただいた」
「うん!何せ

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スピカ君によろめき隊!特装版写真撮影会当日(改訂版)

スピカ君によろめき隊!特装版写真撮影会当日(改訂版)

スピカ君によろめき隊!の会誌の写真撮影会当日。僕は早朝からスピカがいつやって来てもいいように身支度を整え、待機していた。最近よく読むようになった哲学の書物を、難しいなあと指で拾いながら読んでいると、かるい、控えめなノックの音が響く。
「どうぞ、はいって」
「おはよう、エーリク……なんか、見張られたりしてないかな」
きょろきょろ視線をさまよわせながらチョコレートリリー寮のアイドルが109号室へ入って

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ミルヒシュトラーセ家の手作りアフタヌーンティー【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿版

ミルヒシュトラーセ家の手作りアフタヌーンティー【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿版

「……エーリク、おはようございます。起きてください、」
僕は柔らかなボーイソプラノで覚醒を促された。小さな手が背中を摩る。ロロだ。僕より先にロロが起きるなんて、珍しい。
「ん……あ、朝か、ロロ……おはよう」
その時ロロの松ぼっくりのかたちの時計が鳴り出した。優しい、アマリリスの旋律に合わせて体をゆらゆらさせていたけどあきてしまったのか、そっとアラームを止めた。ゆるゆるあるいて僕のベッドに腰掛け、そ

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