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高校生 「デザイン採集」 @ IMPROVIDE

インプロバイド主催「夏休み高校生インターンシップ」は僕池端がファシリテーターを務める2日間の体験イベント。インターンという名だがこのイベントはいわゆる職場体験的な意味合いは薄く、実際には講義とワークショップを組み合わせたもので「勉強会」に近い。

なぜ高校生と「デザイン」なのか?

僕はもともと「小中学校の教育ではデザインの解釈が狭い」と感じていて、それが進路の可能性を狭めている気がしている。中高生や先生たち話すと、デザインが描画や造形など図工や美術の類いにしか当てはまらないと認識されていることが多い。

最近では「デザイン経営」や「デザイン思考」という言葉も流布している。意匠やビジュアルだけでなく「物事の考え方」や「よりよくする仕組み」という風に広義でデザインを捉えておくと世界がぐんと広がる。「デザイン」は絵が得意な子どもだけの進路ではない。学校とはちがうデザイン会社という機関で高校生にデザインの本質を学んでもらうことには何かしらの意義があると考えている。

1日目 「デザインって何?」 講義とまち歩きへ

集まったのは札幌市市内の普通科の高校1〜3年生。昨年はデザイン系の人もいたが今年はゼロ。1日目は「デザインって何?」というテーマでお話をする。グラフィックデザインや建築、ファッション、タイポグラフィ、コミュニティデザイン、UI・UXなどデザインの関係するジャンルや職種を俯瞰し、「アートとデザインの比較」「排除アート」「デザインの敗北」などキーワードごとにトピックを紹介していく。

フィールドワークのお題は4つ

講義で「デザインって広いんだ」という共有ができたら、午後は「デザイン採集」と題して参加者各自でフィールドワークへ出かける。課題テーマは以下の4つ。

(1)フライヤーを採集

観光案内所・市役所・区役所・道庁など公的な施設のフライヤーがたくさんある棚を見て「これは!」と思うものをゲットする。

(2)地域商品のパッケージデザインを採集

「どさんこプラザ」「きたキッチン」などの地域産品を扱うお店へ行き、知らなかったけれど「これは!」と思うものを採集。選ぶものは札幌市以外の道内市町村で製造されている商品に限る。なぜ興味を持ったのか、どういう工夫・表現がなされているか考察。

(3)店名ロゴのタイポグラフィ採集

自分の住むまちから1つ・商店街やショッピングモール・ファッションビルから1つ。パソコンで打っただけの活字ではなく、創作したと思われる文字を採集。どういう意図でその文字デザインが施されているか考察する。

(4)「余白」の採集

「この余白があるからこそ効果的に伝わる」と感じたデザインを採集。場所も対象も媒体もなんでもOKとする。

札幌市役所のパンフレットコーナーにて。ぱっと見で手に取りたくなるのはどんなものだろう?

2日目 共有と講評

多様な視点で採集した「まちのデザイン」

それぞれ半日かけて採集してきたネタは当然多様。一方でかぶることも珍しくない。例えばパッケージデザインでいうと「海のかけら」というふりかけは昨年も今年もピックアップしている人が複数いた。商品が数多く陳列されている売り場できちんと目立つという証ともいえる。

「余白」をみつけるという課題は特に新鮮さを感じてもらえる。余白という「脇役」に主眼を置くことで、情報の目立たせ方、その環境の中での見え方など、相対的にデザインについて考える機会につながるからだ。実際の仕事でもクライアントから「要素を大きくして目立せてほしい」という要望がある。我々デザイナーはそこであっさり御用聞きにはならず、余白と全体のバランスから伝えたい情報が際立つ、そんなセオリーをお話して納得してもらうことがよくある。

“採集”した画像を印刷して共有。一人一人から選んだ理由を聞きながら池端が補足していく。


参加した高校生の声


◯気づいていないだけで周りにはデザインがあふれていて、デザインには必ず意図があり、視点が変わりました。

◯排除アートを知って町中の椅子を見ると面白いものであふれていると思った。大通駅のHIROSHIの椅子も排除アートなのかなと考えが深まっている。

◯デザインって今までは絵と文で伝えるものだと思っていたので発見になりました。発表でみんなのいろいろな視点を知るのが楽しかったです。

◯「デザインに関わる何かがしたい」と漠然と頭にあったが、インターンを経験して具体的な形が見えるようになった。TVやラジオ、動画など創作物が好きで大学を探しています。

◯この世の中はデザインでできているんだと感じました。正解がないので生み出すのも大変ですがその分ひらめきをしたときの快感も大きいなと思います。

◯フライヤーやパンフレットを市内で探してみると、あまりたくさんの種類がないんだと発見しました。普段から余白を探すのが好きなので「あ、ここはこういう工夫があるんだ」と思えました。

◯普段とは違った視点でモノを見ることができた。講評をいただいたことで自分の気づきが昇華され楽しかったです。

今後も継続していきます

このインターンシップはインプロバイド(会社)にとっては「広報」や「社会貢献」の意味合いがあります。引いては「地域でデザイン」をめざす若者たちが一人でも増えていくとうれしいなとも思っています。グラフィックデザイナーはもちろん「まちづくり」や「地域での発信」「企画」「ものづくり」「観光」「教育」など広くデザインを捉えてもらえることが目的です。

今後も夏休み期間をメドに継続開催する予定です。またお声がけいただければ学校単位での出前授業も可能です。たとえば「デザインの本質を教えてほしい」「地域ブランディングの仕事事例を見せてほしい」「2コマで収めたい」など内容や時間は柔軟にアレンジ可能です。小中高でできますし、非デザイン系の大学でも可能です。開催地域・場所はまったく問いません。

デザイン会社という「場」に触れること自体がよい体験になったという声もありました。
参加者を応募したときのフライヤーの画像です(デザイン:八木橋ひかり)
フライヤー裏面の一部


 ご一読ありがとうございました。




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