見出し画像

無責任な人生だったらなって話

20代後半か30代前半くらいの、ロン毛でタトゥーとか入っててピアスばちばちの人と駅ですれ違った。

あの人は間違いなくスーツを持っていないだろうし、なんかちょっとアングラなことしてお金を稼いでいるに違いないと思った。

見た目で判断するのはよくない。でも、思ってしまって、さらに文字にしたい欲求が生まれてしまったのだから仕方がない。

きっとあの人は将来のことを1ミリも考えていない。ナウな人間なのだ。今を生きる、ナウな人。

今日を生きる金さえあればそれでいい。不安とかはない。

だから別に背負っている責任もない。毎日体が軽くて飛べそうな気分。

時々、そんな生き方に憧れる。抱えているものを全て投げ出してただ一人自由気ままにその日暮らしをする、ナウな人生。

つまりそれは、無責任な人生。楽だろうな。

頭の中でポケモンを思い浮かべる。ああいう人種って、40代や50代になったらどうなるんだろう。どう進化を遂げるのだろう。

リリーフランキーとかいとうせいこうとか高田純次みたく何やってんのかわかんないけどめちゃくちゃイケてるおっさんに進化するんだろうか。

だったらいいな。羨ましい。

そっちを選択できるチャンスは僕にもあった。でも怖くて選択できなかった。僕はチキンだ。未来を失うのが怖い。

無責任な人生を送る人間を、ここに「ナウ」と名付ける。

ナウは、何かにつけてセンスがある。写真、映像、絵、音楽、文学。ナウはやることなすことセンスを発揮できる。

ナウは失うものがない。だから気軽に才能を爆発させられる。

「えー、なんか、できちゃった」で済ます。

僕もナウだったら。今頃小説家デビューして世間をアッと驚かせて「えー、なんか、できちゃった(笑)」とか言ってたばす。

毎日4時間くらいバイトして、築44年家賃4万4帖半のボロアパートに帰って、タバコ吸いながら小説書いて、腹減ったら昨日頼んだけど食いきれなくてカピカピになったピザの残り貪って、ハイボール飲んでシコって寝て、起きてまた小説書く。

書いた小説は売れて、売れたけどバイトは続けて。

いかにもナウっぽい。僕はイタくてキツい奴だから、そんな生活に憧れちゃう。

でもね、いいんです。ナウじゃなくても。

抱えきれないくらいの責任背負って、信じられないクレームを受けて、毎日サビ残2時間して、疲れ果てて書くことから離れちゃっても。

いくつかの大事なものさえ死守できればそれで。

僕が夢を追っても「君は小説家になれない」と、未来が確定しているとしたら、僕は果たして書くことをやめるだろうか。きっとやめない。

でも仮に、僕が夢を追うことによって「君は大事なものを失う」と、未来が確定しているとしたら、僕は迷いなく書くことをやめる。

つまりまあ、そういうことです。

ナウの誰もがリングマに進化できるとは限らないし。てか金銀やってなかった。ルビサファからだった。

おわり。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?