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リビングに戻ると、母はストーブの前で丸くなりながら読書をしていた。 すっかり老眼鏡が…
ドラムを始めて気づいたことがある。 身体と心は繋がっているということ。 どんなに心に…
夕方って何をすればいいんだろう。 ヒロナは漫画を読む手を止め、ボンヤリと考えた。 テ…
「あんたって、ほんと行水なのね」 タオルをクビにかけ、湿った髪からシャンプーの香りを振…
トントンと心臓が胸を打つ。 急に走ったから、体内器官がみんな驚いているのだ。 本当は…
十二月も昼下がりになると、柔らかな太陽光は、すっかり影を落とし、一気に冷え込んだ。大き…
特製卵ソースに隠されたワサビ醤油が、ツンと鼻に抜けた。 卵、アボカド、トマトのバランスが絶妙だったが、サラダ菜があればもっとフレッシュな食感になったに違いない。ヒロナは味わいながらも、少し反省した。 「美味しい・・・」 ポツリとこぼしたミウは無心でサンドウィッチを頬張っている。 暫し、無言の時間が続いた。 自分達と同じように大晦日を公園で過ごす子どもたちの声に混じり、ヒュルヒュルと北風が歌っている。指先はかじかむほど冷たくなっているのに、ヒロナはうっとりと耳を澄
北風がヒュルヒュルとヒロナの顔を打った。赤くなった鼻をマフラーに潜り込ませる。ニット帽…
顔を洗い、歯を磨く。 たった数分の出来事のはずなのに、ヒロナの身体は芯まで冷えてしま…
掃除機の騒ぐ音で目が覚めた。 年季の入った掃除機は我が家の騒音問題になっている。 勉…
現実を見るのは、おっかない。 見なくて済むなら、眼を逸らしていた方がいい。 本を読ん…
十二月二十八日。 今日はマネージャーの阿南さんに呼ばれて、新しく製作されたミニアルバ…
「ヒロナ、お腹空かない? 年越し蕎麦でも茹でる?」 「ううん、いらない。ありがと。まだ年…
雪のない東京とはいえ、冬は寒い。 ストーブに当たりながら漫画を読んでいたヒロナは、思わず小さく身震いした。家には暖房や炬燵も揃っているが、ストーブの吹き出し口から香るホコリが焼けるような匂いが好きで、冬になるといつもこの場所を独占する。 同級生は受験勉強に躍起になっているというのに、自分だけがヌクヌクと背中を丸めながら暖をとっているなんて・・・。 ヒロナは背徳感を覚えたが、部屋の隅にあるリュックサックに眼をやると、その気持ちは自然とどこかへ飛んでいく。 数日前、ヒロ