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バンド 【完結】

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2021年12月の記事一覧

【小説】 ずっと大晦日

 リビングに戻ると、母はストーブの前で丸くなりながら読書をしていた。  すっかり老眼鏡が…

井川文文
2年前
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【小説】 口の中のつぶやき

 ドラムを始めて気づいたことがある。  身体と心は繋がっているということ。  どんなに心に…

井川文文
2年前
2

【小説】 「好き」が原動力ではなかった。

 夕方って何をすればいいんだろう。  ヒロナは漫画を読む手を止め、ボンヤリと考えた。  テ…

井川文文
2年前
4

【小説】 お茶の時間

「あんたって、ほんと行水なのね」  タオルをクビにかけ、湿った髪からシャンプーの香りを振…

井川文文
2年前
2

【小説】 鬱屈する時期なのかしら

 トントンと心臓が胸を打つ。  急に走ったから、体内器官がみんな驚いているのだ。  本当は…

井川文文
2年前
3

【小説】 ボコボコと呟く大晦日

 十二月も昼下がりになると、柔らかな太陽光は、すっかり影を落とし、一気に冷え込んだ。大き…

井川文文
2年前
3

【小説】 受験する者、しない者

 特製卵ソースに隠されたワサビ醤油が、ツンと鼻に抜けた。  卵、アボカド、トマトのバランスが絶妙だったが、サラダ菜があればもっとフレッシュな食感になったに違いない。ヒロナは味わいながらも、少し反省した。 「美味しい・・・」  ポツリとこぼしたミウは無心でサンドウィッチを頬張っている。  暫し、無言の時間が続いた。  自分達と同じように大晦日を公園で過ごす子どもたちの声に混じり、ヒュルヒュルと北風が歌っている。指先はかじかむほど冷たくなっているのに、ヒロナはうっとりと耳を澄

【小説】 大晦日のピクニック

 北風がヒュルヒュルとヒロナの顔を打った。赤くなった鼻をマフラーに潜り込ませる。ニット帽…

井川文文
2年前
4

【小説】 静かな大晦日の始まり。

 顔を洗い、歯を磨く。  たった数分の出来事のはずなのに、ヒロナの身体は芯まで冷えてしま…

井川文文
2年前
3

【小説】 大掃除の意味

 掃除機の騒ぐ音で目が覚めた。  年季の入った掃除機は我が家の騒音問題になっている。  勉…

井川文文
2年前
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【小説】 決めたから、悩む

 現実を見るのは、おっかない。  見なくて済むなら、眼を逸らしていた方がいい。  本を読ん…

井川文文
2年前
5

【小説】 日記を書いたから、一日が始まった。

 十二月二十八日。  今日はマネージャーの阿南さんに呼ばれて、新しく製作されたミニアルバ…

井川文文
2年前
3

【小説】 年末は感傷的になるのかもしれない。

「ヒロナ、お腹空かない? 年越し蕎麦でも茹でる?」 「ううん、いらない。ありがと。まだ年…

井川文文
2年前
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【小説】 手に残るもの

 雪のない東京とはいえ、冬は寒い。  ストーブに当たりながら漫画を読んでいたヒロナは、思わず小さく身震いした。家には暖房や炬燵も揃っているが、ストーブの吹き出し口から香るホコリが焼けるような匂いが好きで、冬になるといつもこの場所を独占する。  同級生は受験勉強に躍起になっているというのに、自分だけがヌクヌクと背中を丸めながら暖をとっているなんて・・・。  ヒロナは背徳感を覚えたが、部屋の隅にあるリュックサックに眼をやると、その気持ちは自然とどこかへ飛んでいく。  数日前、ヒロ