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完全趣味的音楽レビュー

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レビューと言う程でもない感想文乱れ打ち
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【11/28】いつか生まれ出づる魂に寄せてーーDannie May、渋谷WWW初ワンマンを観た

【11/28】いつか生まれ出づる魂に寄せてーーDannie May、渋谷WWW初ワンマンを観た

新しい事を始める瞬間、人間は誰もが迷い、恐れる。“ファーストペンギン”という言葉もあるぐらいで、初めの一歩を踏み出す事は誰からも讃えられて然るべきだし、それだけ怖い事でもあるのだ。

新しい事を始める瞬間の人間は震えている。それには、武者震いだなんて勇ましい呼び名がつけられているが、気分としてはどちらかというと、生まれたての赤ん坊の心許なさに近い。母親が苦しみながら赤ん坊を産み落とすとき、赤ん坊も

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【11/9】ライク・ア・レター・イン・ア・ボトルーーKEYTALK、2年ぶりの全国ツアー千秋楽を観た

【11/9】ライク・ア・レター・イン・ア・ボトルーーKEYTALK、2年ぶりの全国ツアー千秋楽を観た

KEYTALKがアルバムを出さなかった。しかも、2年も。
2年程度なら、それ程珍しい事でもないと思われるかもしれない。もう5年も10年もアルバムを出していない、HUNTER×HUNTERみたいなバンドだって少なくないなか、何を贅沢を言っているのだろうとは我ながら思う。

先日、11月9日に行われたKEYTALKの約2年ぶりのツアー千秋楽に赴くにおいて、音源を改めて聴き直しているとき、ふと、彼等が“

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魅せてくれ、モノホンの“レトロスペクティブ”ーディストピア東京、真夏の下北沢でビレッジマンズストアとベッド・インを観る

魅せてくれ、モノホンの“レトロスペクティブ”ーディストピア東京、真夏の下北沢でビレッジマンズストアとベッド・インを観る

■古風なものが割と好き8月の終わり、秋の気配を感じてもおかしくないはずのその夜はまだまだ蒸し暑くて、Tシャツを容赦なく背中に貼り付かせる汗はもう何度も空調で乾いてはまた流れを繰り返していた。
どんなに換気に気を遣っても、ほかの観客との間に今までの3倍ぐらいディスタンスが設けられていても、地下のライブハウスはいつだって蒸した。手強い盟友であるマドンナ達との闘いを半ば程終えた、真っ赤なスーツが日本一似

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別にライブじゃなくてもいいーー真夏に観た小林私と“ミュージシャンの応援のしかた”について

別にライブじゃなくてもいいーー真夏に観た小林私と“ミュージシャンの応援のしかた”について

■ライブに行く理由を考えなければいけない今程ライブに行く明確な理由を考えなければいけない時代は後にも先にもない気がする。
「推しを生で見てみたい」「生の歌声やバンドサウンドを体感してみたい!」「ライブハウスが好き」……そもそもライブなんて、そんな感じの簡単な理由で気軽に足を運んでも構わない場のはずだった。でも、正直今はそう気軽には行けない、色々な事情を抱えているひとがきっと増えてしまったんじゃない

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【7/25】かがやけみらい――Dannie May自主企画『Welcone Home!』ゲスト小林私、感想【@渋谷O-nest】

【7/25】かがやけみらい――Dannie May自主企画『Welcone Home!』ゲスト小林私、感想【@渋谷O-nest】

インディーズミュージシャンを応援していると、必ずと言っていい程ファンの多くが「売れてほしい、でも売れてほしくない」というような葛藤に駆られている場面に遭遇する。いわゆる「安易な売れ線になってほしくない、でも彼等の音楽は広く認められてほしい」というような批評的な目線もあるかと思うし、「まだ知られてほしくない(=遠い存在になってほしくない)、でも彼等の生活は保障されてほしい」というようなある種何様感あ

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【5/13】たとえ何処にも行けなくても――TempalayのZepp Hanedaワンマンライブに連れて行ってもらったら凄まじかった話

【5/13】たとえ何処にも行けなくても――TempalayのZepp Hanedaワンマンライブに連れて行ってもらったら凄まじかった話

霧雨に靄った何もない道を友人と連れ立って歩いていくと、巨大な鉄の塊のような建物が靄の向こうに見えてくる。人影が見えなさ過ぎて怖い程だった視界の端に、人間の気配をうっすらと感じるようになった。小さなエレベータに乗り込んで上へ。煩わしい傘は早々に閉じ、吸い込まれるようにして喧騒の中に身を投じた。

アニメショップらしき店にカフェなど、きっと普段はお客で賑わい、人気が絶えないのであろう店々が軒を連ねる空

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【4/18】ディストピアの灯台守――ビレッジマンズストア、下北沢シャングリラ凱旋

【4/18】ディストピアの灯台守――ビレッジマンズストア、下北沢シャングリラ凱旋

ビレッジマンズストアが東京にやってくる。今年4月、その事実が一体どれ程のひとにとって希望の狼煙のように見えたことだろう。
長く暗い産道のような階段を上った先に出たフロアの壁は、月並みな言い方かもしれないが、まるで彼等を待ち構えていたかのように真っ赤なペンキで彩られていた。

16時30分、開場。筆者はこの日、同じく彼等との邂逅を待ち焦がれていた友人と共に下北沢シャングリラへ赴いた。地下へと続くライ

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【3/18】Dannie May初自主企画『Welcone Home!』感想――この光さえ見えていればどこに行ったって帰れると思った【@渋谷o-nest】

【3/18】Dannie May初自主企画『Welcone Home!』感想――この光さえ見えていればどこに行ったって帰れると思った【@渋谷o-nest】

「ライブハウスでしか呼吸が出来ない、ここが俺のホーム」なんて言う人種のひと達からしてみたら甘ちゃんなのかもしれないが、筆者にとっては何処までも、ライブハウスは非日常だ。非日常だからこそ、時々、定期的に帰りたい場所でもある。

この日筆者が約1年ぶりに帰ったのは初めて行ったライブハウスで、1年前では考えられない程の大観衆を前に威風堂々振る舞う3人の前だった。

螺旋の外階段をおっかなびっくり降りた場

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Plastic Tree『doorAdore』ー明日の朝は海へ行こうか

ひと月以上遅れの亀更新ディスクレビュー(的なサムシング)、二本目。前回のKEYTALK『Rainbow』と同じ日にリリースされた、こちらも永遠の憧れであるあのバンドのアルバムを。

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「adore」と言う単語を、僕は知らなかった。

辞書を引くと「敬慕、崇拝」と言う意味らしいが、奇しくも僕にとって誰よりもこの言葉が相応しい

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KEYTALK『Rainbow』ー虹の彼方へ駆ける方舟

最近CDアルバムを聴く勇気がなかった。

「は?勇気なんて必要なん?所詮音楽じゃん」とお思いの方もいらっしゃるだろうが、僕にとって音楽を聴く事は製作者の魂とのガチンコの闘いなので(本を読む事もまた然り)、結構元気がないと体力を消耗しすぎてしまう。特に十曲以上も収録されたフルアルバムなんかとんでもない!気合い入れなければCDのパッケージすら開封出来ない始末だ。食欲がない時のお茶碗のご飯や、体調が優れ

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Mrs. GREEN APPLE『Love me,Love you』-誰が心にも春は来る

Mrs.GREEN APPLEの新曲が、めちゃくちゃお洒落だ。
今年二月十四日(ヴァレンタイン!)に発売された『Love me,Love you』と言うタイトルのシングルなのだけれど、毎回違った顔を見せてくれる彼等がまた新しい形態に変身した事がよくわかる楽曲になっている。前回のシングルでシンセサイザーバッキバキだったバンドが一体どんなメガシンカ遂げたらこんな事になるのか、甚だ謎である(※褒めていま

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KEYTALK『ロトカ・ヴォルテラ』-荒野に咲いた“紙一重”

乾いた風の吹きすさぶ荒野、背を向け合う男女。男の手にはナイフが、そして女の手には銃が携えられている。かつては愛し合ったふたりだが、今は敵同士。運命が無情にも恋人達を引き離してしまったのか。今となっては彼等は”喰うもの”と”喰われるもの”。そしてその関係は、いつ入れ替わるかわからない。紙一重の愛と狂気を胸に秘めた恋人達は次の瞬間身を翻して見つめ合い、その懐に隠した刃を互いの喉元へ突きつける――。

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ゲスの極み乙女。『戦ってしまうよ』-戦うために戦ってんだよ

僕にとって音楽は、言わば親指プッシュひとつで接種出来るワクチンのような、鎮痛剤のようなものだったりして、日々生きてゆく上で胸が痛んだり、物理的に身体が痛むような事があった場合にそれを少しでも和らげるために再生ボタンをクリックする事が多いわけだけれど、そのためにはその鎮痛剤――音楽を提供してくれるミュージシャン自身の挙動にもついつい安心感を求めがちである。

誰とは敢えて言わないけれど、昔っから音楽

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GOOD ON THE REEL『光にまみれて』-たとえ光にまみれたとしても

暗い部屋から外に出た瞬間、陽光のあまりの眩しさに目がくらんで何も見えなくなる事がある。これは別に僕に特有の現象でも何でもなく誰もが経験しうる事だけれど、人体と言うものは実に有能で、ものの数秒で足元を確認し、眩しいながらも歩みを進める事が出来るのだ。だけど、心はそうじゃない時がある。

今年自主レーベルを立ち上げたばかりのGOOD ON THE REELが、その一作目としてリリースしたミニアルバム、

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