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新型コロナウイルス感染症の舌診について

※2020/4/14 舌診に関する論文を2本追加しました。

新型コロナウイルス感染患者の舌診では、白膩苔などが挙げられています。この記事では舌象の写真を伴った情報を集めています。


新型コロナウイルス感染症関連リンクもご参考ください。

新型コロナウイルス感染症の舌診についてもご覧ください。

「COVID-19に関する国際講座(国際專家抗疫大講堂)」がオンライン講座として開催もご覧ください。

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新型コロナウイルス感染患者の舌象写真を集めた書籍

『湿疫与舌象——新冠肺炎中医诊疗』

新型コロナウイルス感染症の治療において、中医師は感染防護服を着用するために、脈診などは行いにくいため、舌象が重要な役割を果たす。本書は約200名の新型コロナウイルス感染患者の舌象写真を選び、掲載。著者は世界中医薬学会連合会舌象研究専業委員会会長の王彦晖ら。中国工業出版社は、医療従事者のために第4章「望舌」のセクションと第10章を無料で公開している。

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新型コロナウイルス患者36例の舌象観察の論文

目的
新型コロナウイルス(COVID-19)感染患者の舌象を探る。
方法
武漢市のCOVID-19感染患者36名の臨床データを収集し、デジタルカメラで舌苔を撮影した。通常例、重症例、危篤例の舌象、および初期、中期、重症期、回復期の舌象を比較した。
結果
18例(50.00%)に歯痕舌が認められ、28例(77.78%)に舌苔膩が認められた。初期に一般的だったのは、淡紅舌(33.33%)、紅舌(33.33%)、白(厚)膩苔(83.33%)であった。中期に一般的だったのは、淡紅舌(36.36%)、紅舌(31.82%)、黄(厚)膩苔(72.73%)であった。重症期では、暗紅舌、舌苔は黄厚燥、または、舌苔が少ない紅舌であった。回復期では、淡紅舌(71.43%)、白(厚)膩苔(28.57%)が一般的であった。通常例では淡紅色(48.28%)が最も多く、黄(厚) 膩苔(55.17%)、白(厚) 膩苔(27.59%)、重症例では紅舌(60.00%)、白(厚) 膩苔(40.00%)、危篤例では暗紅舌、黄厚燥苔、または、舌苔が少ない紅舌であった。
結論
この感染症は主に「寒・湿・熱・瘀・虚」で特徴づけられる。罹患しやすい人の多くは湿盛を伴う脾虚であり、鑑別と治療は湿への対応に重点を置くべきである。

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オーストラリアの中医学学術誌The Lantern 2020年3月号

オンライン版は無料でダウンロード可能。
16~23ページの記事の抜粋:
covid-19は温疫であり、傷寒病や典型的な温病ではないことは明らかであり、この違いを理解することが基本となる。covid-19の症例に対しては、呉又可の『温疫論』や薛生白の『湿熱病篇』などが役立つ。これらのcovid-19の症例は寒だけでなく、湿毒の側面を持っているので、湿毒の邪気として診断する。呉又可は「温疫の舌は白い舌苔で覆われる。これは邪気が膜原にあるためである。邪気が徐々に胃に入っていくと、舌根が中心部まで黄色くなっていく。疫病が3本の陽経に影響を与える場合、達原飲という方剤を用いる」と記述している。患者の舌は、白厚膩苔となる傾向があり、これは外邪による湿であって、内部のダメージではない。そのため、舌自体が腫れて大きくなっているわけではなく、体質が変わっているわけでもない。高熱の症状であっても、湿や寒が原因なので、寒や苦に分類される漢方薬は治療に用いることができない。食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状は典型的な中焦の湿毒の症状である。病機は主に湿毒によるものであり、表では寒邪が滞り、また絡脈には湿毒の蓄積がある。上焦では肺気と津液を塞ぎ、燥に変える。中焦では湿濁が塞ぎ、少陽の三焦では孔や間隙を塞ぎ、熱に変化して発熱する。また、多くの西洋の薬剤や中国の科学中薬は苦く、冷たく、中焦を痛める。異なる体質で身体反応は異なり、様々なパターンが現れるが、最終的には邪気が膜原に入り込み、全身にある玄府(毛穴)が遮断されてしまう。この疾患は肺に現れるが、複数の臓が関与する。悪寒と悪熱の表証を分析すると、寒邪の侵入が表を塞いでいるためではない。また、発熱と便秘がある場合、陽明経で熱に変化しているためではない。いずれも、汚れて濁った邪気が膜原の奥深くに蓄えられ、気の機能を妨げていることが原因となる。そのため、陽気が行き渡らなくなり、悪寒と悪熱となる。閉塞が深刻であるほど、熱は高くなり、気が下に向かわないので便秘になる。呉又可によれば、ある患者は自然発汗で回復し、邪気は通常の形で外に排出されるので、薬を飲まなくても治ると記す。正しい治療法は、苦の漢方や温の漢方、直接排出する苦い漢方や冷たい漢方を使用しないことである。厚い膩苔で、濁っている限り、邪気の分散を行うことが必要であり、膜原から邪気を排出して、肺を宣発させて湿を変換し、毒を消散させる。正しい治療法は表の気と肺気、気の変容と湿の変容に焦点を当てる。筆者は厚朴夏苓湯などを主に処方する。重篤な病期でも湿を重視し、毛穴を開いて規則的に代謝させることが鍵となる。呉又可によれば、裏証を解決し、浮脈ではなく、口渇がおさまり、体温も下がっても、4~5日後には熱が戻ってくる、この再発は食事や疲労とは関係なく、膜原は邪気を隠す傾向があるために必然的と記す。そのため、数回のウイルス陰性結果後に陽性になることがある。1つの症状が変化した、あるいは検査結果が陰性だったからといって、治ったとは言えない。脈が穏やかになり、舌苔が正常に戻り、胸部の苦しさや呼吸困難などの症状が解消されて、臨床的に治癒したと判断することができる。中医学の通常の基準に従い、舌苔と脈に注意し、症状が完全に消失しているかどうかを確認する。この疾患は湿邪であり、舌苔を考慮することが最も重要となる。熱が下がっても、厚い舌膩苔のままであれば、内部に邪気が隠れている。厚みや膩苔の度合いで重症度がわかる。筆者は処方とともに舌象の経過写真を掲載している。

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舌象の経過を分析した30名の新型コロナウイルス感染症患者の症例報告

抜粋:入院から退院まで、30名の新型コロナウイルス感染症患者の舌象とCT画像を分析する。ほとんどの患者は2月4日に入院し、数人は2月5日に入院している(発症は1月31日~2月2日の間)。WeChatのアプリを用いて、各患者には毎朝舌の写真を送ってもらい、症状、活力、睡眠、食欲、排尿、排便、発汗、顔色、処方薬などを報告してもらった。分析により、30人の患者の大半は寒湿犯肺であった。患者らは抗ウイルス性の西洋薬と漢方薬を処方され、漢方薬の中でも麻黄は治療に不可欠としている。患者の報告では、痰を吐くと呼吸が開くように感じたという。このことは乾性咳を抱える30人の患者にあてはまった。全ての患者は息を吸うことが困難で、息を吐くのは正常であった。2020年2月4日から2020年2月20日までの治療期間を通じて、重症患者のほとんどが軽症化し、ほとんどの軽症患者が統合的治療で退院した。この経験から、著者はCOVID-19のすべての段階の治療に漢方薬を使用することを強く推奨しており、疾患の特定の段階での正確な診断と漢方薬処方の更新の重要性を強調している。漢方薬の使用は、軽度・中期の治療に有効なだけでなく、重症化に移行するのを防ぐのにも役立つ。退院時、全ての患者において、白厚膩苔の舌象が無くなった(※写真に振られている番号、例えば2-20-14は、2月20日に撮影されたベッド番号14の患者を意味する)。2月8日の各患者のCT画像は重症化を示したが、自覚症状はすべて改善していた。COVID-19のピークは大体7~8日目だという。直腸解熱薬、解熱のための漢方薬、点滴液などを過剰に使用すると、午後や夜間に発熱が見られるが、日中には見られない。熱が下がった後、咳が悪化する。肺における粘液、中医学における湿痰を取り除くことが回復には不可欠である。漢方薬の力を借りて痰を吐けるようになれば症状は改善する。入院時の患者は食欲が無かったが、退院時は脾と胃の機能が回復し、食欲が戻ったという。

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中医学の舌診とCT画像が新型コロナウイルス肺炎の診断と治療で果たす役割

目的:新型コロナウイルス肺炎(NPC)の診断と治療において、CT画像と組み合わせた舌診の有用性を検討する。方法:異なる治療を受けている患者の胸部CT画像と同日の舌象を観察することにより、CT画像と舌質や舌苔の特徴との関連性を検討した。また、胸部CT画像の変化と舌象の特徴と疾患の経過との相関関係について検討した。結果 NPC患者の胸部CT画像では、初期に局所的なパッチ状のスリガラス状陰影(GGO)が認められ、複数のGGOの滲出、融合、浸潤影へと進展する。重症期では両肺にびまん性で広範囲な緻密化を示し、回復期では病変の縮小または吸収を示す。同時に、NPC患者の舌象も初期、進行期、重症期、回復期の経過に応じて変化し、舌の色は淡紅、紅、暗紅(または紫)、淡紅の順に変化し、舌苔は薄く、厚く、薄くなり、白、黄(または濁)、白の順に変色する。舌体の厚さや歯痕の程度も病変の変化に伴って変わる。これらはCT画像の変化と相関しており、いずれも病変の進行を反映していると考えられる。結論:中医学において、傷寒は脈診に重きを置き、温病は舌診に重きを置く。NPCにおいて、防護服を着た医師が脈診を行うのは難しい。中医学の舌診と組み合わせたCT画像は、NPCの診断と治療において簡単に、タイムリーに、正確に使用でき、疾患の進行度の判断、治療効果の観察、予後の判断において重要な指針的意義を持っている。また、院内感染のリスクと放射線被爆を軽減し、重症患者の移動リスクを最小限にし、医療資源を節約し、患者の金銭的精神的負担を軽減する。

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コロナ禍の治療院経営を考えるための本

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月刊「医道の日本」2020年5・6・7月号

【緊急企画】新型コロナウイルス感染症と鍼灸治療

月刊「医道の日本」の5・6・7月号では、3号連続で、新型コロナウイルス感染症に関する緊急企画を掲載しています。ぜひ併せてご覧ください。

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