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先人から学ぶリスクマネジメント思考

 皆様お疲れ様です。identity academy2期生のT.Kです。
今回は先日行われたトークセッションの内容を取り上げながら私自身が感じた事柄等をまとめさせていただきます。
先日のトークセッションでは株式会社エルテス代表取締役の菅原貴弘様、Minerva Growth Partners創業パートナー長澤啓様にお越しいただき、金融・ビジネス・人生選択など幅広いトピックに関するお話をしていただきました。
 その中でもアカデミー生から特に質問が多く上がったのはキャリア・人生選択の部分でした。東大を中退し、起業に挑戦し続けて株式会社エルテスを創業された菅原様と慶應から三菱商事、ゴールドマンサックス、メルカリCFOを経てMinerva Growth Partnersを創業した長澤様、一見対極にいらっしゃるように見えるお二方にはある1つの共通点が見受けられました。今回はトークセッションで言及されていた内容を取り上げながら人生選択とリスクマネジメント思考について記させていただきます。

1. はじめに

 皆様は普段リスクを取って生活していますか?
日常生活において「今日はどの服を着ようか」「ランチは何がよいか」「卒業後はどんな進路にしようか」といった大小様々な意思決定においてリスクとリターンを経験しています。個人的にはそもそも意思決定の方法は大きく分けて2種類あると考えています。
 1つはリスク回避型意思決定、もう1つはリスクテイク型意思決定です。前者の「リスク回避型意思決定」は「いつも着ているシンプルな服を着る」「何がしたいかわからないけどとりあえず大学は卒業しておく」などといったものが例でしょうか。後者の「リスクテイク型意思決定」は「今日は心機一転奇抜な服を着る」「大学は中退して自分のやりたいことに挑戦してみる」などでしょうか。

・リスク回避型意思決定人間
  世の中にはいわゆる“王道”と呼ばれるレールを進む人々がいます。卑近な例として東大・早慶を卒業し、商社やデベロッパーに就職する人などが挙げられるでしょうか。“王道”という言葉が指す通り、このレールを歩く人間は間違いなく「王」の風格を纏っており、基本的には生活に困窮するほどの苦境には陥りにくいのではないかと思います。リスク回避型意思決定人間は今回の講義の中では5番アイアンと例えられることがありました。要するに大きなアップサイドは狙えないかもしれないが、その分ダウンサイドの幅も狭いということです。「石橋を叩いて渡る」タイプの人たちにとってはもってこいの選択肢の一つなのかもしれませんね。
 今回お話をいただいた長澤様は学生時代の自分は何に打ち込めるかが明確ではなかったため、リスク回避的に商社に入社したとおっしゃっていました。「石橋を叩いて渡らない」という徹底して慎重な選択を志向するアカデミー生に同意する参加者の姿もあり、非常に多くの方から支持される考え方であるのだと認識しました。

・リスクテイク型意思決定人間
 一方で世間一般(特に日本国内)からはある種“異質”とみなされるレールを選んで進む人々がいることもまた事実です。“王道”の対概念として表すとすれば、武力などを行使して新しい道を突き進む“覇道”という言葉が適切でしょうか。現代に即して言えば、自分自身の実力で裸一貫戦うことを意味していると捉えています。
 トークセッション内で菅原様、長澤様がリスクテイクをする目的は何なのかという話題がありました。菅原様は「お金を稼ぎたい」という欲求から大学を中退し、自分自身で起業して稼ぐ決断をしたそうです。菅原様はその行動を「背水の陣」と表現しており、まさにリスクテイク型意思決定を体現されているという印象を持ちました。一方で長澤様は世間一般では“王道”と呼ばれるキャリアパスの一つである三菱商事を「自分でキャリアを選択したい」という欲求に従って退職されました。その後は様々な会社を経て現在のMinerva Growth Partnersを創業するに至っています。現在までの長澤様の行動もまたリスクテイク型意思決定であると感じました。

2. “すごい人”たちのマインドセット

 冒頭で少し言及した一見対極にいるお二方の共通点は“自己実現の欲求”ではないでしょうか。歩んできたキャリアパスは全く異なりますが、菅原様は「お金を稼ぎたい」長澤様は「自分でキャリアを選択したい」という自己実現欲求に従ってこれまでの意思決定を続けているように見受けられました。そして何よりもその欲求に従って新しい活路を見出して進んだことこそが世間一般から抽象的に“すごい人”と評価されるようになった所以ではないでしょうか。トークセッション前は別のカテゴリーに属しているように見えていたご両人を終了時には同じカテゴリーにグルーピングしている私の感覚の変化に驚かされました。

3. 自説(純度100%)

 私自身お二方の「お金が欲しい」「縛られず、自分の好きなように生きたい」などの欲求を抱くことがある一方でふとした時に「なんでお金が欲しいのだろう」や「自分の好きなように生きたら今より幸せなのだろうか」というある種哲学的な問答を心中ですることがあります。結局敷かれたレールの上を歩いたとしても幸福なのではないかという考え方です。この感覚に陥る要因は日本という国の社会的安定感だと考えています。日本においては、いわゆる“王道”な道を進んでいけば大きな問題なく生活を送れるシステムが整備されていると考える方は私以外にもいるのではないでしょうか。一方で日本の幸福度ランキングが未だ低いのは、そんな社会的安定感を維持し続けられてしまう日本の構造上の問題だと思います。
 日本人は安定的な社会構造の中で自己実現をしたいと奥底で思っているのにもかかわらず、その安定しすぎた画一的な社会への慣れが原因で、自らの欲求を認識できず、また新しいレールを敷くこともできないのではないかという私見を持っています。私はこれを「無意識的怠惰」と呼んでいて、幼少期から画一的で何不自由ない人生を過ごしてきた私を含む多くの日本人は斬新なものに対して無意識的に臆病さを抱いているということです。その臆する心を排除し、新たな活路を見出すために「今我々が取っている選択肢は本当に自身の好奇心を満たすのに足りているのか」と問いかけてみる必要があると考えます。「今よりもう少し刺激的な生活を送りたい」「〇〇に住みたい」などといった自己実現欲求が少しでもあるのだとすれば、自ら新しいレールを敷き、“覇道”を歩んでみるのもありだと思います。
 一方で現在の生活に100%満足しているのであれば、その道を突き詰めるという選択肢が存在するということも忘れてはなりません。何も皆様の現状を否定し、新しいことに挑戦しろと主張したいわけではなく、純粋に自分自身に問いかける機会を用意するのはいかがでしょうかという提案をすることが本稿の目的です。

4. 結び

 今回のトークセッションで一体どの自己実現欲求から満たしていくべきなのか、またどのような姿勢でそれに取り組むべきなのかということに関しても言及がありましたので、最後それについて記載させていただきます。
 「結論本能的欲求から満たしていくことが良いのではないか。“今”こうしたいや“1年後”こうなっていたいといった本能的な欲求をまずは追求してみるのが自己実現の第一歩である。」とのことです。幸か不幸か我々は用意されたレールに従って進む能力(受験や就職活動など)はすでに持ち合わせていると考えています。その能力を最大限に活かすために必要なことは目標点(お金を稼ぎたいなど)の認識とその目標点行きのレール(選択肢)を自ら準備するガッツ(活力)です。これらが備わっていれば状況に応じてまた新たなレールを敷き直すことも可能だからです。たとえば「お金を稼ぐ」という目的地に向かうレールの候補には「起業」「副業」「投資」「大企業」「スタートアップ」など様々です。上記の認識とガッツを獲得した先ではどのレールの上を進んでいくかの決断が迫られます。それらの選択肢の中から自分に適したレールを判断するための手段としてリスクマネジメント思考が重要になってくるのではないでしょうか。

 以下私個人の話と今回考えたことを記します。これまでの学生生活で自分の興味関心に従って、非常に多くのことに同時に取り組んできました。そんな背景があって、広げすぎた選択肢をどのように取捨選択するべきなのかについて学びたいと考えてリスクマネジメント思考が学べるidentity academyに入りました。今回のトークセッションを通じて、不確定な未来の選択肢の中で本能的な自己実現欲求を最も満たせるものに目を向けることの大切さを理解しました。その上でしばし考えてみたものの、ひとまず保身に走ってしまいそうな気がするというのが正直なところです。具体的にはとりあえず一般的なレールに従って就職活動をするという選択をし、会社に入社した後にまた何かしたいことがあれば追加でやってみようという決断の遅延行為です。学生の中には私と同じように「将来的には〜したいかもしれないから〇〇をする」「何年か働いて〜できたら良いな」など将来何かあったときのためにひとまず〇〇しておこうという感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。「とりあえず」や「一旦」という保険的導入は日本人特有のものなのでしょうか。もしかするとこの徹底した保守のスタンスが政治での与党一強、金融市場での高い預金率を助長してしまっているのかもしれません。他力本願ではありますが、他国よりも安定した社会制度が整っているのにもかかわらず未来に対し漠然とした不安を抱える日本人の“王道”から外れることへの恐怖心をどうにか拭って欲しいと思わんばかりです。そもそも日本特有の画一的なレールに従い続ける“右へ倣えの保守性”は変えられるべきなのでしょうか。画一性の善悪がどうであれ、より多くの人間が必要な時に本能的欲求を十分に満たし、自己実現を成し遂げられるような社会の雰囲気が確立されるべきであると信じています。
 自己実現という目的までのあらゆる筋道をどのような基準でもって選択するかについて確かなセオリーは存在していません。しかしそれらの選択肢を少しでも定量的に俯瞰する力を養うことができれば、目的地までのあらゆる手立ての取捨選択を可能にし、より多くの人間の自己実現の可能性を高めるのではないでしょうか。画一的な社会である日本において、あらゆるリスクを認識し、徹底的に腹落ちする選択を追求するためのリスクマネジメント思考の獲得が急がれます。

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