ジュニアアスリートと親
ジュニアアスリートにとって親の存在は特に大きく、良くも悪くも親や周りの親しい人達からの言葉がパフォーマンスに大きな影響を与えます。
「我が子をなんとかして後押ししたい」
「なんとかやる気にさせたい」
そう想っている時は
「失敗したことにフォーカスを合わせネガティブな言葉がけ」をするのではなく
「気持ちを切り替えて快く次の挑戦ができるようにポジティブな言葉がけ」
をしてみてはどうでしょうか。
また、我が子が挑戦し上手くいかずに親の元に帰ってきた時に
「しかめっ面で腕を組み拒否的な態度でいる」
よりも
「柔和な表情や態度で受け入れる」ほうが双方にとって良いのではないか。
そんなことを考える場面に遭遇しました。
久しぶりに休日の午後に登りに行った時のこと、リードクライミングをしている2組の家族がおり、クライマーはどちらも小学生の高学年から中学生くらいの女の子でした。
1組は父親がビレイヤー、もう1組は父親がビレイヤーそして母親も傍にいました。
そして、どちらの女の子も泣いているのです。
「なんで同じところで何度も落ちるの」
「なんで同じ失敗を繰り返すの」
「なんでできないの」
「とにかく頑張れ」
「やらないなら片付けろ」
「登れないなら終わりにしろ」
そんな言葉を投げかけられていました。
きっと彼女達自身も上手くいかずに悔しい思いをしていると想うのです。そんな時に追い討ちをかけるような言葉を浴びせられたらどうでしょう。
クライミングのみに関わらず、親が子どもの指導をしている時にそのような場面に遭遇したことはありませんか。
以前は
「そこまで言うのなら自分でやってみろよ」
「親のあんたはどれ程のクライマーなんだよ」
そう言ってやりたい、苛々した気持ちが溢れていました。
しかし、親になってからは心境の変化があったのか、そんなやり取りをしている親子を見ていると切ない気持ちになってしまいます。
親が我が子に期待している気持ちは十分わかります。勝敗が決する舞台に立つのだから甘い指導では戦えないと考える気持ちもなんとなくわかります。我が子に頑張って欲しいがためにそのような言葉がけになってしまうのだとも想うのです。
ただ厳しさだけでは成長は望めないと想うのです。
発達の観点から見ると、
生まれたばかりの子どもの発達の原動力は
「興味やモチベーションなどの内的な動機」
だと言われています。
また、乳幼児期には両親が精神的な安全基地(不安になったら戻れる場所)としての役割を担っています。
不安な時、うまくいかないことがあった時、心の整理がつかない時、困った時など、親の元に戻りアイコンタクトや言葉交わしたり、スキンシップによるコミュニケーションを図ることで安心をもらい、また親から離れて様々なことに挑戦していくのです。
また、生理学的には
「心身が安心し安全であると感じる環境」
「他人に評価や判定をされない」
ということも良好なパフォーマンスを発揮するためには重要な条件になるようです。
ぼく達大人ですら想定外な場面に遭遇した時には心が乱れ、どうにかして安定や平静を取り戻そうとしますよね。
だとしたら、心も身体も発達途上の子ども達が困難に直面し、心が乱れた時に自力で安定や平静を取り戻すことは容易ではなく、表向きには強がってはいても、心のどこかで助けを求めているのかもしれないと想うのです。
それにも関わらず、親から怒られたりネガティブな態度や言葉がけをされたらどうでしょう。
「またうまくできなかったらどうしよう」
「また失敗してしまったらどうしよう」
「また怒られるかもしれない」
そんなことを考えていたら、
精神的に緊張してしまい息もつまり、
身体の緊張も高まりパフォーマンスが低下してしまう要因にもなります。
親の表情・仕草・言葉が「脅威」として感じられ、闘争・逃走反応さらには、極端かもしれませんが不動・シャットダウンに陥ってしまう可能性すら考えられます。
ぼくが幼かった頃、通っている小学校のサッカー少年団に所属していました。
ぼくの定位置はベンチではあったものの母は常に練習や試合の応援に駆けつけてくれていました。
時々試合に出してもらい、その時の母は人一倍大きな声援を送ってくれていました。
しかし、ぼくにとってはその大きな声援がきっかけとなり緊張してしまい、ただでさえ下手くそなのにさらに身体が動かなくなってしまうという経験をしました。
今考えてみると、母が良かれと送ってくれた声援がぼくにとっては大きすぎる刺激だったのかもしれません。
「我が子をなんとかして後押ししたい」
「なんとかやる気にさせたい」
そう想った時や、我が子だけに限らず人と関わる時には「暖かく見守る」そんな手段があることを知って欲しいのです。
どうしても言葉をかけたい時には
「柔らかな表情と態度」で
「良かった点を探して言葉にする」
「過去の我が子と比較して成長している点を見つけて伝える」
などはいかがでしょう。
「自分のことを観てくれてる人がいる」
「自分の成長を感じてくれる人がいる」
「応援してくれる人がいる」
そんな存在がいるということを知っていると安心感が得られ、困難にも果敢に挑戦し、のびのびと本来のパフォーマンスが発揮できるようになると想うのです。
厳しく指導をするのはもっと成長してからでも
良くないですか。
「勝負の世界で生きていくには甘すぎる」そう感じる方もいると想います。
ただ、ネガティブなフィードバックだけでは心身にネガティブな反応が起きるのだと知ってもらうきっかけになれば幸いです。
お付き合いいただきありがとうございます。
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