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子どもがいても、やりたいことをやる。旅を仕事に、5歳児との日本一周計画も。ライター・カミイマイさんのキャリアと子育て両立のポイントとは?

子どもは何よりも大切。でも、自分のやりたいことやキャリアも諦めたくない。子育てとやりたいことの間で、深く悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

そのような悩み解決の糸口を探るべく、今回は5歳の息子さんに愛情を注ぎながらも、好きな旅行を仕事にしたライター・カミイマイさんにお話を伺いました。

子育てとやりたいことを両立するためには、何が必要なのか。マイさんにお話を伺う中で見えてきたのは、「自分軸を持つこと」と「家族を個として尊重する姿勢」の大切さでした。



今回お話を伺った方:カミイマイさん

ライター。おでかけ体験型メディア『SPOT』の旅行記事コンテストで入賞したことをきっかけに、ライターとしての活動を開始。現在は、全国各地のおでかけスポットや地域の取材を中心に、JR東日本グループのメディアなどで執筆している。5歳の息子さんと47都道府県の親子お試し移住旅(分割日本一周)を計画中。
Twitter:https://twitter.com/mai_kamii
note    :https://note.com/rios0827/



結婚と出産、ライフイベントで訪れた大きな転機とは

カミイマイさんは、専門学校卒業後に就職するはずだった会社が倒産し、急遽進路を変更してアルバイト先だった映画館に入社します。当初思い描いていたキャリアとは異なる道に進むことになったマイさんですが、映画館の仕事は「毎日が文化祭のようで楽しかった」と語り、まずは映画館業界でキャリアを重ねていきました。


ーー結婚と出産というライフイベントのとき、お仕事はどのようにされていたのでしょうか?

夫が転勤族だったので、結婚直後に映画館を退職して、転勤先についていきました。

でも、転勤先での生活を続けるうちに、私には「転勤族の妻」は向いていないと気がつきました。夫が転勤するたびにその土地で仕事を探さなくてはいけないし、仕事に就けたとしても、その職場ではこれまでのキャリアは関係なくて、ずっと新人扱い。

結局2年ほどで我慢できなくなって、夫の転勤先についていくのをやめて、私も好きな仕事をすることにしました。このままだと、いつか夫に「あんたについていったから」と愚痴をこぼして、不幸な結婚生活になってしまうと思って。そうなるくらいなら夫には単身赴任してもらい、お互いに自分を大切にしながら夫婦生活を送ろう。好きなことをしようと。私は夫の転勤先とは別の土地に住んで、また映画館の仕事を始めました。


ーーその後、息子さんを出産されたんですね。映画館のお仕事はかなり忙しかったかと思うのですが、妊娠・出産とお仕事をどのように両立されていたのでしょうか?

息子を妊娠・出産したときは、自分の体調のことも含めて両立するのが本当に大変でした。

まず、映画館業界って基本的に男性社会なんですね。だから、周りの方の妊娠出産への理解が乏しかったんです。初めての妊娠で体調もままならない中で、仕事も求められる役割をしっかりと果たさなければいけない。
そのような状況の中で、今後の自分の生き方や働き方を考えるようになって、そうこうしている間に大きな転機が2つ起こりました。


ーー大きな転機があったのですね。

はい。まず、産後うつになってしまって。そのときに、人生の中心を仕事に置きすぎていたことに気がつきました。

2つ目の転機は、息子が生後6か月のときに仕事に復帰して、に昼も夜も働き続けた結果、体もメンタルも壊してしまったことです。周囲の人は一応気遣ってくれたものの、夜中に仕事で呼ばれることも多かったんですね。

体もメンタルも壊してすべてが嫌になってしまって。映画館の仕事を辞めることにしました。


ーーそうだったのですね…。長く続けてきた仕事を辞めると決めた時、どんな気持ちでしたか?

それはもう、やっぱり「ここまで頑張ってきたのに」という葛藤はありましたね。給料も高めだったので、その点でも悩みました。退職後の収支計算とかもしましたし。

人間って、会社からいただく給料とか、安定して得られていたものものがなくなると、心が削られるんですよね(笑)。最後は夫の「好きに生きたらいいよ」という言葉に背中を押してもらって、退職に踏み切れました。


たまたま見つけたコンテストから、ライターに転向。独自スタイルで、好きだった旅が仕事に。


ーー映画館の仕事を辞めた後、ライターにキャリアチェンジされたのはなぜですか?

実はライターという仕事にたどり着いたのは、偶然なんです。退職後は息子とフィリピンに語学留学に行こうと思っていました。でも、私が退職した2020年初頭は、既にコロナが猛威をふるい始めていて、語学留学はキャンセルしました。

空いてしまった時間で何かできることはないかと探していたときに、SPOTというメディアで「楽しかった思い出の場所記事コンテスト」があるのを見つけて。旅行記を書くのが好きだったので、ちょっとチャレンジしてみようと応募したら賞をいただき、SPOTさんでお仕事をするようになりました。


ーーライターというキャリアは偶然たどり着いたものだったのですね。今のマイさんのように全国各地を取材して歩くスタイルは、いつ頃から始まったのでしょうか?

2020年の秋、10月か11月頃だったと思います。そのころコロナが一旦落ち着いたので、息子と福岡の実家に帰るついでに、四国も旅行することにしました。

それで、せっかく行くなら何か現地でできる取材をしてみたいと、お世話になっているメディアの方にお話したら、いくつかのメディアから四国での取材のお仕事をいただきました。

このとき、帰省をかねた旅行が仕事になった。今の全国各地を飛び回って取材するスタイルはそこから来てるんですよね。


ーーなるほど、自分の旅先ありきで、お仕事を獲得されたのですね!そのようなお仕事のやり方があるとは知りませんでした。

もともとは好きな旅行をライターの仕事に生かせたらと思っていたのですが、先輩ライターの中村洋太さんとお話する中で、旅行ライターはそんなに儲からないという事実に気がつきました。

旅行ライターとして仕事をするよりは、全国各地を旅しているから「各地で取材できますよ〜!」というスタイルのほうが自分に合っているかもしれないと思って、今のような仕事のやり方に進化しました。



旅する取材ライターとして、次なるチャレンジは『5歳の息子との47都道府県お試し移住旅』


ーー旅する取材ライターとして、着々と実績を積まれている中で、これから5歳の息子さんと一緒に『47都道府県の親子お試し移住旅』を開始されるそうですね。

そうなんです! 後には引けなくなるように、noteに決意表明の記事を書きました。ただ、この状況下なので、実行できるかどうかは不透明です。


ーーなぜ、息子さんと全国各地でお試し移住をしようと決めたのでしょうか?

理由は2つあります。息子が小さいうちにたくさん経験を積ませてあげたいのと、今住んでいる東京と実家がある福岡以外に、もう一つ拠点となる地域を見つけたいと思ったからです。

本当は息子とフィリピンに語学留学に行くことで、いろいろと経験させられるはずだったのですが…。国内で何かできることはないか…と考えて、『日本一周チャレンジ』を思いつきました。


ーー今回のチャレンジの中で、息子さんにいろんな経験をさせてあげたいと思っているのですね。

私自身はずっと仕事に出ている父と出不精の祖母に育てられたので、外出はほとんどしたことがなくて。いつも近所でずっと1人で遊んでいるか、漫画を読むか、絵を描いているかという感じでした。記憶があるとすれば、祖母と遊園地に行ったことくらいでしょうか。

でも、外での経験が少ないと、世界は広くて、たくさんの選択肢があることになかなか気づけないんですよね。実際、私が海外旅行に行くようになったのは30歳を超えてから。すごくもったいないなって。

だからこそ、息子には外でいろいろ経験してもらって、自分の可能性の広げ方というか、世の中には選択肢がたくさんあることを知っておいてほしいんです。受験や勉強はできなくてもいいから、地球が滅びても何とかなるくらいに(笑)たくましく育ってくれたらと思います。


ーー今回の親子お試し移住旅の目的である「もう一つの拠点探し」とは、具体的にどのような土地を探されているのでしょうか?

息子に関わってくれる大人の数を増やせたらとも思っているので、のどかな田舎で、みんなが気軽に集まって、適度におせっかいするような環境に出会えたら最高だと思います。

東京は何でも手に入るし、受け身の姿勢でもなんとかなりますけど、これから生きていくうえで自力でこなしていく経験もさせたいです。少し不便な環境で、自分の力で生活を回していく経験を子どものうちにしておくのも悪くないと考えています。

私の仕事という面では、自分の持っているスキルを生かして、その拠点にある商店などのPRもお手伝いしたいです。ライターとして取材に行ったとき、困っているお店があるのに部外者だから何もお手伝いができなくて心苦しく感じるんです。お客さんとして上辺だけかき乱すのではなくてその地域に住む人として、地域に深くコミットしていきたいと思っています。


ーー今回のマイさんのチャレンジについて、周囲の反響はいかがでしたか?

それが意外と皆さん優しくて、いろいろな方からTwitterのDMでメッセージをいただきました。

直接Twitterでつながっていない方からもおすすめスポットを教えていただいたり。あとは、コロナの状況次第なのですが、地域おこしを担っている方から「自分たちの地域にぜひ来てほしい」と声をかけていただきました。

鳥取県のイベントでワーケーション実践者として登壇することにもなったんですよ。やりたいことを発信するって大事だなあと思いました。





家族のだれも我慢せず、やりたいことを極力実現させる。

ーーマイさんのように、子育てしながらやりたいことを実現させる秘訣はどこにあるのでしょうか?

うーん…私も日々試行錯誤なので、これといった大きい秘訣はないです。

ただひとつだけ言えるのは、私は出産後に子どもを優先しようとして心を死なせてしまったので、自分のやりたいことは我慢せずに極力やるようにしています。


ーー子育て中でも、やりたいことを我慢せずに実現していこうという心構えなのですね。

我が家では「みんなわがままであれ」というスタンスなんです。みんなが家族の一員だから、相手のやりたいことも尊重するけれど、自分のやりたいことも諦めない。私が旅行や仕事に行きたいときは、夫が家のことや子育てをやってくれますし、逆に私が子どもを旅行に連れていくことで、夫は大好きなゲームや仕事に没頭できます。

子どもにもそのスタンスは浸透しつつあって、家庭内で各々が好きなことをやる自由時間を設けることがあって、息子も自分の自由時間を有意義に使おうと工夫しているようです。


ーー家族のメンバーが、それぞれを個として尊重している様子が伝わってきます。とても素敵な関係性ですね。

ありがとうございます。親が我慢したことで、いつか子どもが大きくなったときに「あんたのために我慢してきたのに」と絶対に言いたくないのも、家族みんなが自分の好きなことをやろうとする理由かもしれません。

私は自分が思うよりも子どもが大好きらしく、いつも子どものことが気にかかるんですよね。子どものことが自然と優先されるからこそ、自分のやりたいことはあえて意識して大切にしているのだと思います。

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