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記憶の記録

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大切な人との思い出を、大事な感情を、文章として残すための場所。
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ある意味一番特別だったかもしれないという話

ある意味一番特別だったかもしれないという話

人の数だけ特別があって、特別の数だけ人がいて、
それを取り零さないよう、私達はゆっくりと歩く。

白木さん(仮名)に初めて出会ったのは、2019年夏頃の同年会だったはずだ。いきなりこんな話をするのは恥ずかしいが、彼女への第一印象は"結婚したい"だった。雰囲気や性格が絶妙に心地いいのもあって、「自分にはもうこの人しかいないのでは?」とさえ思った。今になって思えば恥ずかしい、本当に恥ずかしい限りだ。

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悪徳に靡く鴉、咆える私は猛虎という話

悪徳に靡く鴉、咆える私は猛虎という話

かつて握手を交わした掌は、拳へと変わって相手に迫る。
敬愛から軽蔑、互いの立場や道程さえも違えて。
それはどんな正しさや優しさよりも純粋な、絶対零度の蒼い炎。

そいつに初めて出会ったのはハノイ1年目の春頃、確か異業種交流会か何かだった気がする。
第一印象は"特撮ヒーローやってそうな若手俳優にいそうな感じの名前"だった。本人の風貌や人となりはそれとは全くの別物。とはいえ、共通の趣味も多かったので、

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それは一輪だけ宙に咲く向日葵の話

それは一輪だけ宙に咲く向日葵の話

ハノイから旅立ってしまう、その人へ。

難波さん(仮名)の話をさせてほしい。
彼女に初めて出会ったのは、私がハノイ2年目に入ってすぐのこと。
赴任して早々に、何かのきっかけで会社に訪問してくれたのがファーストコンタクトだったと思う。その後は初心者会や商工会などで度々会う機会もあったし、年が近いのもあって共通の友人も生まれやすく、何かと接点も多かった。

正直に書いてしまうと、彼女に対してはほぼ間違

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"楽しい"は正義だという話

"楽しい"は正義だという話

私の人生において大きな転換点となった人の話をしたい。

池澤さん(仮名)に初めて会ったのは、ハノイ1年目の初夏。確か、高級サービスアパートに住む知り合いが主催したホームパーティだったかと思う。
この頃まだ90会の存在を知らなかった私にとって、貴重な同い年だった。

私から見た彼女は、誰よりも親しみやすく、誰からも慕われるような人だった。少しだけ舌っ足らずというか、可愛い話し方をする。性別や年代、職

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心の鍵盤を調律していく話

心の鍵盤を調律していく話

同じ音色、同じ曲調でなくて当たり前。
大事なのは弾き続けること、引き続けられること。

今年もテト期間を利用して一時帰国をした。
私の地元である北海道へは直行便が無いので、いつも何処かの空港を経由して、帰省する予定を立てなくてはならない。
一昨年は東京経由。当時はまだ駐在員で、確か滞在期間のおよそ半分位を本社での仕事に充てていたと思う。
昨年も東京経由。元ハノイ在住者にも声をかけ、浅草の一角にあ

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全ては気持ち次第だという話

全ては気持ち次第だという話

ハノイで出会った人達の中でも、一際強い存在感でもって私の心の中に残り続けている人がいる。
佐竹くん(仮名)。同い年の商社マンで、ハノイには長期研修の形で1年間だけ来ていた。

私はそれまで、いわゆる"商社マン"という人種(表現合ってるかな?)に会った事がなかった。
第一印象……はて、佐竹くんに初めて会ったのはいつだったか。確か同年会だったと思う。実の所よく覚えていなくて、でも、気がつけば既に仲良く

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優しく強く面白い人の話

元ハノイ在住の女性との云々。

戸田さん(仮名)がハノイに来たのは、確か私と同時期だったと思う。
仕事柄休みが少なくて忙しい毎日を送っていた彼女だけれど、それでもよくご飯に誘ったり誘われたりする関係だった。

僕から見た戸田さんは「周囲の人を幸せにする」才能の持ち主だ。まるで女神様のような明るさに、凛とした意志の強さ、そして(時々)間の抜けた様な妙な面白さを見せる。
僕はそんな彼女に恋焦がれて

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