見出し画像

勘違い

好きな人に少し怒られたんだ。

でも、決して嫌な
怒られ方じゃなかった。

怒られた、というより
彼が教えてくれた
そう言った方が正しいかもしれない。

好きな人には
嫉妬しちゃうし、
自分のことを好きでいてくれるのか
不安になる。

だけど、不安の気持ちは
ただの妄想でしかないのかもしれない。

そう気づいたのは、
先週末の出来事。

学園祭での出来事だった。

有名なアーティストが来ると
話題になっていたこともあり
たくさんの人が会場にいた。

私も女友達と2人で参加した。

私の好きなアーティストの出番まで3時間ほどあったが。
それでも人は多かった。

他の出演者の曲を聴きながら
気持ちもだんだん昂ってきた。

いよいよ私の大好きなアーティストの出演。
あたりはもう真っ暗で、
周りの人たちも心をときめかせているのが
伝わってくる。
私も嬉しくて、
ドキドキしてた。

大好きなアーティストを目の前に
私は興奮して、
今にも飛び跳ねたいところだった。

その目の前に映ったのは、
好きなアーティストではなく
私の好きな人の姿だった。

彼は、私の左斜め前の席に
ちょうど人混みで隠れるか、
隠れないかぐらいの
ところにいた。

びっくりして、
大好きなアーティスト
どころではなくなった。

なぜなら、
女の子が隣にいたから。

私は夢かと思い、
自分の目を疑った。

もしかして、勘違いかな
そう思いたかったが、

見覚えのある白Tは
彼のお気に入りの服。

間違いなく、彼だと確信した。

私は、そこから
全く曲が耳に入ってこなくなり、
ほとんど彼のことを考えていた。

女の子との距離は少しあったが、
話す時は音が大きいのもあり、
耳元まで顔が近づくのがわかった。

彼に突撃してやろう。
女の子と浮気しているんだ。
内緒でイベントに来るなんてひどい。
でも、彼に突撃して聞く勇気なんか
自分の中にはちっぽけもなく
彼の姿を眺めていたら
いつの間にか音楽祭は終わっていた。

嫉妬でおかしくなりそうなくらい
悲しかった。

コンサートが終わると
彼の前の方を歩いた。
気づいてほしい気持ちと
気づかれたくない気持ちで
私の頭の中が混乱と苛立ちで
パンクしそう。

そんな時、
彼が私の名前を呼んだ。
呼ばれたことに驚いて、
目を合わせたが、
すぐにそらしてしまった。

怖くて、体が少し震えて
隣にいるのは誰なの。
聞き出せなかった。

彼を避けるように
私は入り口を出て、
そのまま、人混みを出る頃には
彼の姿は見当たらなかった。

私は彼にすぐにメッセージを送った。
どこに行くのか
聞いたら、今日は予定がある
って言われて、
その後も彼からのメッセージが何件が来てたけど、

辛くてその日は
メッセージを開かないまま
次の日も
彼のテキストを開ける勇気がなかった。

友達には
ちゃんと話してみなよ。
そう言われた、

だから、渋々、
メッセージを見たら、

彼が今日会える?って聞いてきた。

私は、夜なら
会いに行ける。

その言葉だけ伝えて、

彼のアパートに行った。

彼の顔を見ると
いつもの癖で
普通に話しかけてしまいそうで、
そんな自分にも腹が立った。

彼は、いつものように
呑気にふざけ始めたけれど

私は彼の部屋で黙り込んだ。
どうすればいいんだろう
そんな気持ちでいっぱいだった。

そしたら、
彼がどした?
優しく聞くから

私はなんて返事すればいいか
わからなくなって。

少しの間沈黙が続いた

彼が私の心の中を覗くように、
昨日のこと?

そう聞いてきたから、
私は心臓をバクバクさせて
頷いた。

あの女の子誰だと思う?

彼が質問してきたから、
私は思わず、
わからないから怒ってるんじゃん!
そう口にした。

彼は、じゃあ当ててみて、
そういったから
デートしてたの。?

今にも不安で泣きそうだったけど
ぐっとその気持ちを隠した。

彼は、とっても余裕そうな顔で
笑っていた。

彼が話し始めた。
あれは、仕事仲間の同僚。
しかも、彼氏いるから。

なんでそんなに心配してるん。

考えすぎ、
イチャイチャするのは
君とだけだから。
もっとコミュニケーションしようね。

私がじゃあなんで昨日教えてくれなかったの!
そう聞いたら。

彼は、
君を知るいいチャンスだと思ったんだ。
まだ出会って間もないし、
どんな風に反応するのかみてみたかった。

それから、
君に気づいて欲しかったんだ。
自分で全部作り上げてて、
現実を見てないことを。

感情に飲み込まれて、
コミニケーションどころか、
自分自身で自分のことを不安にさせていることを。

私はとても恥ずかしくなった。
全部自分の妄想で
作り上げた話で不安になって
彼に苛立って。
怒って。
不安と悲しみに
飲み込まれてたけど、
全部は私の思い込みだった。

彼の話は確かに嘘なく、
全部正直に話してくれた。

そんな彼にギュッと抱きしめられる時
私は、彼のことが前より少し好きになった。

というより、安心して、
居心地よくて、
ちょっと好きなんじゃなくて、
多分だいぶ好きなんだと思う。
あと、彼を
疑うのはもうやめよう。

そう心に決めた。



この記事が参加している募集

忘れられない恋物語

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?