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哲学の解説をします。ついでに良書の書評も書きます。好きな作家→ドストエフスキー、シェイクスピア、チェーホフ、ヘーゲル、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、ベルクソン、柄谷行人、など。英日翻訳(出版ではなく実務)、ライティング、ブログといった遍歴

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哲学の解説をします。ついでに良書の書評も書きます。好きな作家→ドストエフスキー、シェイクスピア、チェーホフ、ヘーゲル、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、ベルクソン、柄谷行人、など。英日翻訳(出版ではなく実務)、ライティング、ブログといった遍歴

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    【書評】複雑なものを単純化せずに考える 千葉雅也『現代思想入門』

    千葉雅也の『現代思想入門』(講談社現代新書)。2022年に出た本。 「え、なんで今になってフランス現代思想の入門書が売れてるの?」と不思議に思い手にとってみました。 著者の千葉雅也はツイッターなどでも存在感を示しているひと。フランス現代思想のなかでも専門はドゥルーズだと思われます。 「はじめに 今なぜ現代思想か」を読むと、本書が支持される理由がわかります。 著者いわく、現代思想を学ぶメリットは「複雑なことがらを単純化しないで考えられるようになる」点にあるとのこと。

      • 【神は】トマス・アクィナスをざっくり解説【存在そのもの】

        トマス・アクィナス(1225年-1274年)は西欧中世スコラ哲学を代表する超大物。 代表作のひとつである『神学大全』(実は入門書)は、キリスト教神学の教科書として君臨しました。 ちなみに現代日本でよく目にする「~大全」というタイトルは、トマスのこの著作へのオマージュです。 トマスはキリスト教神学とアリストテレス哲学を融合させ、さらにそこから「存在そのもの」をめぐるオリジナルの思索を生み出します。 過去の人かというと実はそうでもない。むしろ近未来を先取りしている部分があ

        • 【書評】天才ニクラス・ルーマンの最強メモ術『Take Notes』

          ニクラス・ルーマンは20世紀ドイツの社会学者。 パーソンズの社会システム理論を発展させた壮大な体系で知られます。 ルーマンはメモ魔としても有名でした。 思いついたアイデアを小さなカードに書き留める。そしてそれを小さな木箱に入れる。カードを組み合わせることで独創的なテーマが見えてくる。 このルーマンのメモ術「ツェッテルカステン」を一般の読者向けに解説してくれる本がズンク・アーレンス『Take Notes!』です。 ツェッテルカステンと聞くといかにも荘厳ですが、その意味

          • 【毎日更新はNG】月1万稼げる読書ブログの書き方

            「アウトプットの手段としてブログを始めてみようかな…収益化もできるっていうし」 このように考えている読書家は多いと思います。 実際、日常的に本を読んでいる人がブログをアウトプットの場にすることは非常におすすめです。 収益は月1万ぐらいなら超えますからね。アウトプットしつつ、それが年12万のお小遣いにつながるんだからお得です。本代くらいは余裕で回収できます。 収益以外にもメリットは多数。たとえば… ・文章が上手くなる ・アウトプット効果でインプットの質も高くなる ・自

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            【書評】勉強法のカタログ 読書猿『独学大全』

            しばらく前にたいへん話題になっていた『独学大全』。 そのうち読んでみようとは思いつつ時間は経過。今回ようやく目を通しました。 約750ページもある分厚い本。といっても1ページあたりの文字量は少ないのでスラスラ読めます。 これに従っておけばOKというロードマップ的な本ではありません。 色んな独学法を紹介したカタログという感じ。 だから最初から最期まで通読する必要はなく、自分に合いそうな方法のパートをつまみ読みしていくのがベストでしょう。 通読してあれもこれも試そうと

            老後の楽しみにとっておくのは罠【読みたい本はすぐ読むべき】

            よく「老後の楽しみにとっておく」という言いかたがされますよね。 読書界隈でもけっこう耳にします。 しかし実は、老後まで取っておこうという考えは大きな罠。読みたい本があったらすぐに読んだほうがいいです。 なぜか? 年をとるにつれて、本が読めなくなってくるからです。 僕は20代後半から怪しくなりはじめ、30代半ばにしていよいよ本の読めなさ加減が本格化してきた感があります。 どうして年をとると本が読めなくなるのでしょうか? まず大きいのが、自分の興味が移り変わること。

            【書評】医者が語る霊性 矢作直樹『人は死なない』

            矢作直樹氏は「東京大学大学院医学部系研究科救急医学分野教授および同医学部附属病院救急部・集中治療部部長」という、なんだかものすごい経歴の持ち主。 東大病院の総合救急診療体制確立に貢献したことでも知られます。 彼が近代医学のテリトリー外にある霊性について語った衝撃作が『人は死なない』。 以前から興味はもっていましたが、今回ついに読んでみました。 著者の自伝的な内容にはじまり、超常的な現象の紹介、近代スピリチュアリズムの発展に寄与した大物科学者たちの列挙というふうに話は進

            アンセルムスと「神の存在論的証明」【神の概念から存在を導き出せる?】

            古来より、神の存在を理論的に証明しようとする試みはいくつもなされてきました。 もっとも有名なのはアンセルムスの「神の存在論的証明」。 アンセルムスは11世紀ヨーロッパの神学者。カンタベリー大司教の座についていた大物で、スコラ学の父とも呼ばれます。 アンセルムスは次のように考えました。 ・神の概念はもっとも偉大な思考対象である  ↓ ・もしこのもっとも偉大な思考対象が存在しなかったら、存在する別の思考対象のほうが偉大ということになってしまう(存在することは存在しないこと

            【書評】明晰すぎて怖い 岩崎武雄『カントからヘーゲルへ』

            岩崎武雄(1913-1976)といえば日本のカント研究をリードした哲学界の大御所。 彼の『カントからヘーゲルへ』をひさびさに再読してみました。最近ヘーゲルにハマっているので。 やはり異様にわかりやすい。岩崎武雄が日本で最強の哲学研究者なんじゃないかと思えてくるほどです。 本書の内容はタイトル通りカントからヘーゲルまでのドイツ観念論の概説。以下の4名が扱われます。 カント フィヒテ シェリング ヘーゲル カントのパートは名著『カント』からの抜粋。日本語でフィヒテとシェ

            ヘーゲル哲学の弁証法を超ざっくり解説

            ヘーゲルの哲学にはファンタジーの物語形式と同じ構造があります。 ファンタジーの形式とは次のようなもの。 主人公らが平和に暮らしている  ↓ 異物の侵入により平和に亀裂が走る  ↓ 主人公らは悪者を倒すため旅に出る  ↓ 悪者を倒した主人公はレベルアップした姿で故郷に帰還する 最初にまったきユートピアがあり(正)、次にその完全な世界に亀裂が入り(反)、最終的にはその亀裂を包摂するかたちで最初のユートピアは一段高いレベルで回復される(合)。 この正→反→合の形式こそがヘー

            【書評】高配当株投資のススメ シーゲル『株式投資の未来』

            投資界隈でバイブル的な存在となっている本の一冊に、ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』という著作があります。 ずっと前から気になっていた本。今回初めて読んでみました。 訳がいいおかげか、思ったよりスラスラ読めます。ユーモアもあって読者を退屈させることもありません。 本書のコアとなる主張は次の2点。 ・株式投資のリターンは企業の増益率ではなく、投資家の期待に対して増益率がどの程度だったかで決まる ・時に裏打ちされた老舗企業の高配当株に投資せよ 成長の罠に注意本書で

            【書評】デフレそれは価格支配力の喪失『物価とは何か』

            1990年代以来、日本は慢性的なデフレに見舞われてきました。 しかしあらためて「デフレの何が問題なの?」と聞かれると、容易には答えられませんよね。 渡辺努『物価とは何か』によると、これはプロの経済学者であっても変わらないようです。 海外の経済学者から「日本のデフレは具体的にどんな弊害があるんだ?放っておいちゃいけないものなのか?」とたずねられ、そのたびに返答に窮してきたと渡辺氏は言っています。 じゃあデフレは放っておいてもいいのかというと、同氏は「No」の立場。『物価

            FP3級&FP2級、確実に合格する勉強法はこれ

            2022年9月にFP3級、2023年1月にはFP2級を受験し、どちらも一発で完全合格できました。 せっかくなので勉強法をシェアしておきたいと思います。 ポイントは以下の3点。 ・教科書ではなく動画を使ってインプット ・過去問題集(市販のテキスト)でアウトプット ・勉強期間は3ヶ月~4ヵ月 ちなみに6つある分野のうち金融については基礎知識あり。その他(年金、保険、税金、不動産、相続)はほとんど知識がない状態での学習スタートでした。 というわけで、FP関連の知識がない人

            【書評】『金利を見れば投資はうまくいく』長短金利差と社債利回りで景気を先読み

            投資を成功させるには経済の先読みが必須。 ではどうやって将来の予測を立てればいいのでしょうか?経済指標を見れば十分なのか? いや金利を見なければいけない。 こう主張するのが『金利を見れば投資はうまくいく』。今売ってるのは2022年に発売された改訂版です。 著者は先進国債券ファンド「グローバルソブリンファンド」の元運用者。3つの金利を活用して投資を成功させるすべを教えてくれます。 金利といってもいろいろあります。本書が参照する金利は次の3つ。 ・政策金利(短期金利)