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吉川英治『親鸞』
日本でもっとも巨大な影響力をもつ仏教者親鸞を主人公にした作品。
大まかに史実をベースにしつつ、ドラマティックな創作を盛り込んだ名作になっています。
とくに印象に残ったのは、九条兼実の邸を訪れたさいに、戯れで目隠しをされた親鸞が、玉日姫の袖をつかむシーン。
これは作品全体ないし親鸞の生涯の方向性を象徴する場面であり、異常な光彩を放っています。
終盤の平次郎の改心も感動的。
宗教小説とはいってもドストエフスキー的な深みがあるタイプではなかったのですが、この終盤に関してはだいぶ凄みがあります。
マイナス点を挙げるとしたら法然の描写か。
法然は親鸞に果てしない影響を与えた超重要人物で、本作でもそのような扱いを受けているわけですが、その人物像はあまり存在感がない感じ。
法然の何に、親鸞はそこまで動かされたのか?本書を読むだけではそこがいまいち伝わってこない気がする。
玉日姫の描写が浅いのももったいない感じがします。
吉川英治は女性の描写があまり得意ではなかったのでしょうか?全体的にモノ的な、客体的な存在感を帯びている印象。
とはいえ全体的に面白く、読んでよかった。僕は司馬遼太郎よりも吉川英治のほうが好きですね。
これで吉川英治の作品は『私本太平記』『平将門』ときて今回の『親鸞』で3冊目。いつになるかわかりませんが、次はいよいよ『新平家物語』を読む予定です。
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