思い出のソシュール
大学時代、ソシュールくらいは読まねばと、『一般言語学講義』に手を伸ばしました。
生前、本を出さなかったソシュール。
死後、教え子たちによる記録がその言行を世に伝えているという、ソクラテスやイエスのようなシステムです。
私が読んだのは、『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』(影浦峡・田中久美子訳、東京大学出版会、2007)。
青い表紙が素敵でした。
コンスタンタンは講義の出席者の一人で、いわば'使徒'です。
石田英敬さんの「解題」にあるように、訳者たちはソシュールの専門家ではありません。
それがゆえに、謙虚さと瑞々しさが感じられる気がします。
私も謙虚に、本の内容を自分なりに書きまとめながら読みました。
シニフィアン/シニフィエ、ラング/パロール、共時性/通時性といった二分法の美しさ。
そして、言語を弁別的な差異の体系として描き出す筆致の鮮やかさ。
人間言語の一般性が、読者を勇気づけてくれます。