全米の少女たちの憧れ!「アメリカンガール」のNY旗艦店の「究極の顧客体験」とは?
この記事依頼、締切の3ヶ月前にはいただいていたのですが、何せあの頃は、日々の仕事プラス我が家のお兄ちゃんの結婚式、プラス次男坊の大学受験、そしてはたまた姫のなんちゃってステージママと、何が嬉しくて人生こんなにもイベントが重なるのであろう。。。と思うような日々。自虐的に「母のトライアスロン」などと笑っていたら、本当にこの私がトライアスロンに挑戦してると思うひとまで続出して、何が何だかしっちゃかめっちゃか。
そんな頃になんとか頑張って書き上げた原稿だけど、色々書きたいことがありすぎて前後編に分けていただきました。それでもボツになったところがいっぱいですが、原稿としてはこんな感じに仕上げています。ぜひ読んで頂けたら嬉しく思います。
全米の少女たちの憧れ!「アメリカンガール」のNY旗艦店の「究極の顧客体験」とは?
2017年11月にロックフェラーセンターに開設されたゴールドに輝く店舗。顧客の少女たちを迎えるのは、甘いだけの可愛いピンクではない、強い自己主張を感じるビビットなピンク。それでいながらも上品なピンクの世界。「アメリカンガール」の店舗は「究極の顧客体験型」店舗と呼ばれていますが、そのゆえんが内装にも現れています。ネット販売では得られない、ここでしか体験できない価値を提供し、全米の少女たちを集めるその強さの秘訣とは一体何でしょうか。そして、リピートを促す仕組みはどこにあるのでしょうか。
アメリカン・ガール人形とは?
そもそもアメリカン・ガール人形は、1986年イリノイ州出身の女性教師、プレザント・ローランド氏が少女を主役に架空の歴史物語小説を書き、その少女に似た人形を売り出したのが原点です。そして、その人形が全米で大ヒットしたというわけです。
物語は、歴史的な事実と交差させながら、その時代の社会問題、児童労働、児童虐待、人種差別、動物虐待などの話題を盛り込んでいます。
物語の登場人物と同じ肌、目の色。そして同じようなデザインの服。少女たちは物語を読み、そしてその人形に自己投影しながら歴史を学び、様々な社会問題に触れていきました。
アメリカン・ガール人形は、体験型の店舗が展開される以前から、人形のコンセプト自体が体験型であったというべきかもしれません。
現役の子育て世代であるミレニアム世代は、政府の経済や社会政策への介入を肯定的に見る者が多い世代でもあり、オバマ大統領を当選させる原動力にもなったとも言われています。そんな世代を語る時、もう一つ忘れてはならない視点があります。それは、ソーシャルジャステイスウオーリア。揶揄される言葉でもありますが、今やそれに心を配らない企業は危険ですらあります。
アメリカン・ガール人形はラインナップの人形自体が、まさに前述のように様々な人種、民族、文化、社会問題にも対応していることから、今、現役の子育て世代であるミレニアム世代が、「良識のある親として」安心して子供達に与えられる玩具であることも人気を下支えしているのです。
アメリカン・ガール人形を扱うプレザント社は1986年に設立され、 1998年、バービー人形などを扱うマテル社の子会社となりました。プレザント社の親会社であるマテル株は過去数年間では低迷しており、2013年に2.58ドルのピークを迎えて以来、玩具メーカーの株価収益率は著しく低下しています。しかしながら、2107年の年間配当では、1.52ドルの寛大な配当をカバーするのに十分な現金を生み出すことができました。コンピューターゲーム分野以外のおもちゃが低迷する中でこのような成果をあげられたところにも、アメリカン・ガール人形の成績好調さを見ることができます。
ショールームではない店舗戦略
1986年に最初のアメリカン・ガール人形が発売されてから、このプレザント社は一貫してカタログ注文で販売を続けています。2001年、筆者が男児をを出産しても、すぐに会社からカタログが送られてきました。それは今に至るまで変わりません。四季折々、今では季節ごとに届くカタログですが、あの当時は月に一度は届いてたように記憶しています。2000年初頭といえばネット通販の黎明期です。プレザント社が販路に大手玩具店などを使わず、自社での販売に力を注いでいた姿を見ることができます。インターネットの普及から、小売店は店舗の「ショールーム化」に悩まされて来たと言われいます。筆者がカタログの山に驚かされたネット通販の黎明期、その頃はまさにトイザラス全盛の時代でした。しかし衰退してしまったトイザラスは、まさにこの「ショールーム化」の煽りを受けた例と言えるでしょう。実店舗で製品に触れ商品の魅力を知った後に、ネットでもっとも安い価格のショップで購入するという消費者の買い方の変化によって、小売店はビジネスの機会を失ってしまったのです。
世界規模で巨大な店舗を拡大する戦略を展開していたトイザラスと同じ時期、アメリカン・ガールは1998年シカゴに引き続き、ニューヨーク、ロサンゼルスなどで専門店をオープンさせます。
そしてこれらの直売店が、アメリカン・ガール人形の世界を直に「体験」できる場として認識され、人気を不動のものにしていったのです。
人形の世界観を一体化する体験型店舗
アメリカン・ガールの店舗には、人形を専用の椅子に座らせ、顧客が望む髪型に、プロのヘアスタイリストが本格的なヘアアレンジを人形に施すヘアサロンがあります。
ヘアアレンジは一回15ドル、廉価なヘアカットチェーン並みの値段がかかりますが、顧客である子供達は、楽しそうに自分と同じ髪型、または好みの髪型に自分の人形を整えてもらうのです。ヘアサロンはヘアケア並びにヘアカットだけではありません。5ドルの追加料金で好みのネイルも施してくれます。
また日本では子供達がピアスを開けることに抵抗があるかもしれませんが、アメリカでは小学生の女の子たちが、いつ自分がピアスを開けるか、よく友人たちと楽しそうに相談しています。記念すべき自分がピアスを開けた時、人形も一緒にピアスを開けることができる、そんなサービスすらあるのです。
また店舗の中にはオリジナルのカフェがあり、自分が座るテーブルに人形専用の椅子を置き、一緒に食事を楽しむことができます。カフェのお料理も、少女の心をワクワクさせるようなケーキスタンドにのったクッキーやケーキのアフタヌーンテイースタイル。まさに「女子力満載」なのです。
カフェに併設されたパーテイー会場では、バースデーパーテイーを開催することができます。パーテイーが終わった後に「引き出物」のように渡されるGoody bag.その中身もアメリカン・ガールの世界観が広がります。人形のTシャツ、人形がもつ風船とアメリカン・ガールのショッピングバック。ショッピングバックは、同じデザインでありながら人形サイズなのです。バースデー会場にはたくさんの風船が飾られることが多く、ゲストはそれを持って家路に向かう場合があります。それを人形でも「体験」できるのです。
アメリカン・ガールの店舗は、少女とその人形の年齢に合わせた贅沢さを楽しむように設計され、すべての女の子が一日女王になる場所と言われています。
店内で展開される、食事、レストランカフェ、美容室、それらスタッフの技術すらもアメリカンガールの世界を体験する一部であり、包括的に計算されているとも言われますが、このような細やかな配慮からも、その一旦をみることができるのです。
余談ではありますが、筆者の娘がそのバースデーパーテイーに招待された時、ゲストはそれぞれに自分の好きな人形を持って出席するように招待状に書かれていました。私は招待客の中には、アメリカン・ガール人形を持たない子供もいるのではないかと心配になりましたが、出かけてみるとアメリカン・ガール人形を持っていない子は一人もおらず、それどころか、半数以上の子が人形と同じドレスを着てパーテイーに出席していたのです。アメリカン・ガール人形の普及率にたいへん驚かされた出来事でした。
シームレスな買い物体験を促すオムニチャンネル作り
新しいアメリカン・ガール・ロックフェラー・プラザ・ストア。究極の体験型店舗と言われる広い売り場面積を誇る店舗では、アメリカン・ガール人形が提供する全ての商品のラインアップを見ることができます。しかしながら、従来の大型玩具店舗のようにただ商品が大量に並べられているわけではありません。ポイントは、アメリカンガール人形の魅力を感じる空間だと言われています。
今、大手企業はをあらゆるメデイアで顧客との接点を作り、購入の経路を意識させないオムニチャンネル作りに舵をきっています。
オムニチャンネルとは、TVやラジオ、インターネットなどあらゆる媒体を用いて顧客に商品に興味を持たせ、顧客にシームレス(購入の経路を意識させない)買い物体験を提供するサービスと言われいます。SNSを中心に、人と人の繋がりから製品が周知され、口コミで広がりながら他メディアに進出していくのが戦略の一つです。例えば、Instagramでアメリカン・ガールの店舗を位置情報で出すと、様々な「体験」をして楽しむ、キラキラとした人々の世界が広がっています。それは、「こんなものを発見した」「こんな経験をした」「こんなインスタばえをする写真を撮った」それら全てが「体験」なのです。そんな素敵な「体験」を目にした消費者は、自らも「体験」することを望み、人形の購入意欲もまた増していくことでしょう。
今、販売機会の損失を防ぎ利益を拡大するためには、実店舗とインターネットの連携が取れたシステムを構築し、シームレスなサービスを提供するオムニチャネル戦略が必要不可欠と言われています。アメリカン・ガールは、ネット販売の黎明期から、まさにこの路線を極め続けてきた店舗であり、そこが満を期して展開したマンハッタンのロングフェラープラザストアは、まさに究極の体験型店舗と言われて然るべきなのかもしれません。
アメリカン・ガール人形第一世代が、豊かな「思い出の共有」を求めて
アメリカン・ガールが設立された1986年、今まさにミレニアム世代と呼ばれる人々が子供時代を過ごしています。
子育て現役、ミレニアム世代へのアプローチ
前述の「ミレニアム世代」1981年から1996年ごろに生まれた若者で、世界人口の約3割を占め、世代別では「最大勢力」とも言われています。幼少期からデジタル化された生活に慣れ親しみ、ほとんどの人が日常的にインターネットを使いこなして消費にもそれ以前の世代とは違う思考、行動、価値観があるといわれています。まさに現代の「新人類」とも称される所以です。
そんなアメリカのミレニアム世代は今、まさに子育て現役世代。アメリカン・ガール人形の顧客としては最大ターゲットと言えるでしょう。
ミレニアム世代は「ものを買わない世代」とも呼ばれます。ミレニアム世代に多い極力もの持たない生活を好むミニマリスト。彼らはものを消費しない生活をしたがる傾向がありますが、ミニマリズムとは消費をしないということではありません。ミレニアム世代は所有できるものではなく、自身や家族の幸せや体験に価値を見出そうとしているのが特徴です。そこで消費行動は、「共感できる情報」が鍵と言われています。
アメリカン・ガール人形で遊んだ第一世代、彼らが今、親になっているのです。アメリカン・ガールの店舗に行くと、自分が遊んだ人形とおなじ人形が今でも販売されています。夢中になったドレスも、小物も。もしかしたら、その当時でも高価であったであろう小物を揃えることができなかった「少女」もいるかもしれません。しかし今大人となり、「大人買い」ができる。しかも「子どものため」という名目があります。親が遊んだ人形はきっと、子どもたちにも最初から好意的に映ることでしょう。そこにはまさに、世代を超えた思い出の共有があります。
アメリカン・ガールは小物のラインナップにも流行に敏感です。筆者が取材に訪れた日、飾られていた人形同士のお泊まり会の夜のスナックはお寿司でした。
教室での一場面、クラスペットはハムスター。そのハムスターケージですらが、今子どもたちに人気のハムスターケージの人形サイズなのです。
「懐かしい」「こんなものを見つけた」「可愛い」「たのしい」。。。発信したい情報、共有したくてたまらない情報が店舗には溢れているのです。
高級路線だけではないリワード活用に垣間見える
コストコ並みの顧客目線サービス提供事例
小売店としては一般的なOtoO戦略を逆手にとったようなネットの「ショールーム」化とリワードポイントをうまく利用したリアル店舗への誘導。
ネット販売からリアル店舗へという流れが主流の昨今、アメリカンガールはむしろその逆の戦略を感じます。
ネットはあくまでも販売手段、カタログ販売の時代からの販売ツールという存在です。
アメリカンガール人形に関して、読者の皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?
華やかなガールの世界。数百ドル、数千ドルの単位のお金が動く誕生会や宿泊プラン。美容室、カフェの利用一つをとっても、ちょっとした経験に子供の遊びの世界とは少し離れた金額が動きます。
高級路線ビジネスにも思われますが、実はしたたかな顧客目線のサービスが展開されているのです。
その良い例が、大きなリワードシステムかもしれません。
リワードプログラムは大きく分けて3つのクラスに分かれています。
購入金額が積み立てられ、349ドルまではシルバークラス、699ドルまではゴールドクラス、それ以上はベリークラス。
それぞれに誕生日のプレゼントがもらえますが、クラスによってクレジットカードのようにそれぞれ、特典が違うのです。
どのクラスによっても200ポイントによって$10のギフトカードが得られますが、
シルバークラスは、1ドルの購入によって1ポイントが加算されゴールドクラスになると、1ドルで1.25ポイント、ベリークラスになると$1ドル1.5ポイントと、ポイントが貯めやすくなることも魅力です。
そして、ゴールド、ベリークラス会員のみ商品の新着情報がいち早く届きます。
最高のベリークラス会員になると、それ以上に、季節ごとのスペシャルプレゼントが店舗でもらえることになっているのです。
まさに高級路線とは少し離れた、コストコ並みの顧客目線を感んじます。
ウェブサイトを見ると、リワードを楽しむ顧客たちのコミュニテイーまであり、どれほどお得だったか、どれほど楽しんだか、そんな「体験」がシェアされています。
NY旗艦店が仕掛ける究極のオムニチャンネルとは?
「ブランドが顧客の体験を手助けすること、その動きが生態系のように回ること。それこそが、魅力的なデザインの形なのです」とアメリカン・ガール・ロックフェラー・プラザ・ストアをデザインした、FRCH Design Worldwideの設計担当ディレクター、Mike Ruehlman氏は語ります。
彼がいう「生態系のような循環」これはどのようなことなのでしょうか?
「空間内の技術的統合はこれまで以上に大切なことでした」とRuehlman氏は語ります。 「技術的な機能強化を施した体験型の店舗は、アメリカンガールのブランドイメージに合った触覚、聴覚、嗅覚、視覚など、ゲストの感覚レベルを高める手助けになっています。
そして、それらの店舗の中の「仕掛け」が生態系のように循環することによって、来店者の購買意力を高めるです」とインタビューで語っています。
この「仕掛け」こそが来店者にとって「体験」であり、店舗での体験が「共感できる情報」を産み、「感動の発信」へと導くのではないでしょうか。まさに前述したオムニチャンネルが仕掛ける、シームレスな(スムーズに流れるような)購入意欲を高めて行くのです。そして、それがまた次の発信へ繋がる。生態系のように循環して行く流れとは、この店舗に広がるワクワク感。ドキドキして、人に伝えずにはいられない「体験の喜び」なのかもしれません。
デザインとは面白い言葉。デザインは「ものがどのような形に見えるか」ということだと思う人がいるが、しかし深く掘り下げると、デザインとは「ものがどの様に機能するか」という意味になる。
これは、ステイーブジョブズの有名な言葉ですが、ミレニアム世代といえば、まさにジョブズの手のひらで育った世代と言えるでしょう。私たちはまさにこのアメリカン・ガールの店舗で、この名言を、世代を超えて「体験」できるのかもしれません。
資料その1 バースデーパーテイー 金額
電話で確認しました。
料金は、さすがにサイトに載せていませんね😊
さすがのお値段で、私もびっくりしました。
平均、私たちの街で子供の誕生会の値段は、10人ぐらいよんで300ドルぐらいが平均です。
アメリカンガールバースデーパーテイーの場合
ケーキ、アイスクリームが用意される、普通の会の場合
お子さん一人につき30ドル 付き添いの大人一人(20ドル)
食事付きの場合、子供一人39ドル、大人一人29ドル
そして、それは広いレストランの一角テーブルでやるパターンで
もし個室を利用の場合は、お一人につき20ドルましだとか。
このお値段には、アイスクリームなどの食事、プラスお土産の引き出物。
それと、パーテイーの余興のクラフトづくりの材料なども含めます。とのことでした。
そして、予約状況を聞いきましたら、一月まで週末はいっぱいだとのこと。。。さすがですね。。
資料その2、 アメリカンガールホテル宿泊プラン
宿泊ホテルはNYではありません。
アトランタだけの限定です。
アトランタにある マリオットホテルでの限定パックです。
https://www.marriott.com/hotel-info/atlaw-atlanta-marriott-alpharetta/american-girl/y9giegr/home-page.mi
ピンクのガウンにに、ピンクのベットメイキング。全てアメリカンガールの世界のようです。すごいですね。。。。
1992年からのアメリカ暮らし、ボストンはそろそろ四半世紀になりました。 「取材」と称していろいろ経験したり、観光ガイドも楽しんでいます。 https://locotabi.jp/loco/hyacinth 応援していただけたらとても励みに思います。