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【長野県】目指すは“「共に知り、共に創る」図書館” 企業版ふるさと納税 活用事業紹介 #2 県立長野図書館

企業が寄附を通じて地方公共団体の行う地方創生の取り組みを応援すると、税制上の優遇措置を受けることができる「企業版ふるさと納税」。企業は具体的な使い道を指定して寄附することができます。

本noteでは、前回に続き、長野県の寄附を受け付けている事業について紹介をしていきます。
今回は「県立長野図書館」の取り組みについてです!

かつて寺子屋の数が全国一多かったことから「教育県」と呼ばれていた長野県。また、県の5年間の計画を示した「しあわせ信州創造プラン 2.0」 では「学びと自治の力」が柱となり、主体的な「学び」が地域課題解決の鍵のひとつであると位置づけられています。

今回は、そんな「学び」に向き合う県民の「知と情報の拠点」としての機能を託された、県立長野図書館の永野さんと文化財・生涯学習課の小澤さんに、県立長野図書館の取り組みについて聞きました!

長野県県立長野図書館 資料情報課 永野さん(左)
                  長野県教育委員会事務局 文化財・生涯学習課 小澤さん(右)

(聞き手:ライター 筒木愛美)


「共に知り、共に創る」人と人をつなぐ新たな情報拠点

―県立長野図書館は、長野県にひとつしかない“県立”の図書館ですが、そもそも市町村立図書館と県立長野図書館ってどんな違いがあるのでしょうか?

永野:市町村立図書館が住民向けに図書館サービスを展開しているのと同じく、県立長野図書館の主なサービス対象は長野県民であり、レファレンス(調査相談)や資料の提供を行うほか、信州に関する資料の網羅的収集にも努めています。
あわせて、県立図書館ならではの業務として、県内市町村立図書館の支援があります。図書館職員の研修といった人材育成や図書館の運営相談のほか、横断検索システムやデジタルアーカイブサイトの運用といったさまざまな情報基盤の整備など、長野県の図書館全体の活動を支える役割も併せ持っています。

小澤:でも県立長野図書館って、蔵書が飛び抜けて多いわけではなくて、予算も実は全国的にみても低い時期があったんです。そんななか2015年から県立長野図書館の役割や機能を再定義する改革が始まり、大小さまざまな取り組みを進めてきました。

―具体的にはどんな取り組みをしてきたのですか?

小澤:例えば、2019年にオープンした「信州・学び創造ラボ」があります。ラボのコンセプトは「共知・共創(共に知り、共に創る)」。ラボと付いているとおり、これからの図書館や公共空間のあり方を考えるための実験室です。人と人がつながり、共に学びあい、みんなと共に学び、共に創る場を目指しています。

ラボは、図書館3階の会議室や閲覧室をリノベーションしたスペースで、整備段階から何度もワークショップを開催し、のべ300人を超える方々に参加いただいて話し合いを重ねながらつくってきました。その取り組みはオープンしてからも続けていて、ラボで自分がやってみたいことや、運営や空間のあり方など、みんなで「”公共”ってなんだろう」と考えるきっかけとして、さまざまな方にご参加いただいています。

信州・学び創造ラボの施設内観

―図書館において「共知・共創」がコンセプトというのはなんだか意外です。

小澤:図書館って、一人で静かに読書や勉強をしたり、本を借りたりする場所というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、図書館は「地域の情報拠点」ですから、その本質的役割のひとつは「情報」と出会う場所だと考えています。

これから先、答えのない社会において主体的に生きていくためには、情報を使いこなす力が大切だと言われていますが、それを身に着けるためには、インプットだけでなくアウトプットすることがとても重要です。アウトプットを試みることで、自分に足りないものが見えることってありますよね?

だから、もっと日常の中に、さまざまな価値観を持つ人と出会い、対話し、新たな視点に触れる機会があったらいいな、という想いで、「共知・共創(共に知り、共に創る)」をコンセプトにしています。

もちろん、このラボ「だけ」がそうなればいい、ということではなく、ラボの空間や運営のあり方、情報との向き合い方、人と人のつながりなど、なんらかの「カケラ」を県内の図書館や社会教育施設などにも繋いでいくことで、「そういったのもいいよね」とか「そういうのも必要だよね」って思っていただけるよう活動しているって感じです。

ラボのホワイトボード壁面や可動式の机・椅子を活用しながら、映画の感想を語り合う参加者
各自がやりたいことや試したいことを持ち寄って開催したラボカフェ
(※感染症予防のため、R4.10現在は食事は不可)

―これまでの図書館のイメージが覆ってきました。

永野:県立長野図書館には、「禁止は禁止」っていうモットーがあって。

例えば、このような時代なので、感染症防止に関するお願いだけは貼ってありますが、図書館全体として「飲食禁止」とか「静かにしてください」みたいな掲示物は、本当に必要最低限しか貼っていません。こちらから強制するのではなく、利用者のみなさんにルールを委ねているんです。みんなが使う公共空間はどうあったらいいかを一緒に考える、あり方をデザインするということを意識しつつ、運営をしています。

小澤:図書館ってどうしても「静粛に!」ってイメージがありますよね。でも、例えば友だちと一緒に図鑑を見ながら調べものをしたり、工作機器を使って一緒に作品を作ったりとか、誰かと対話しながら教え合いながら学ぶことって、新たな気付きが多いし、何より楽しいですよね。

そこで、県立長野図書館の場合は、ラボはもちろんですが、2階の一般図書室でも基本的には音を出してもいい場所としていて、一人で静かに本を読みたいとか何かを調べたいという人には個室をご案内することで、音のゾーニングをしています。

それぞれの「知る」を手にできる場所へ

―ラボの取り組みもユニークですが、1階にある児童図書室のコンセプトは「体験、発見、やってみ!?」。これも随分めずらしいのではないでしょうか…。

小澤:そうですね。図書館なので子どもたちにたくさんの本に出会ってもらうことは大切にしていますが、それと同じぐらい、五感を使っていろんな「知る」を手にしてほしいと考え、絵本や児童書が借りられるのはもちろん、「体験の貸出」ということで双眼鏡や図鑑、ストライダーなども貸し出しています。

ほかにも、初めて出会う人とつながるきっかけの一つになればということを考えて、囲碁や将棋、ボードゲームなども用意しているんですよ。


―おお…!それはいいですね。県立長野図書館は目の前が公園ですから、遊びのなかから学ぶ機会も提供できるんですね。
ところで2階の一般図書室には、「信州のくらしの記憶を記録する」と題した、長野県に関するコーナーがとっても充実していますね。

小澤:地域の歴史をまとめた市町村史のような資料もたくさん所蔵していますが、過去の営みを記したものだけが郷土資料ではありません。例えば長野県が近年力を入れている、ワインや日本酒の魅力を紹介するリーフレットも郷土資料ですし、県内の各地域で制作している移住定住のパンフレットも郷土資料なんです。

永野:書店に並ぶ本だけではなくて、地元ゆかりの資料や県内で発行されたもの、県内の人が書いたもの、有料無料問わず集められるだけ集めています。少なくとも紙で入手できるものは、できるだけ網羅的に収集しています。

小澤:これらはいまみれば、なんてことのない情報かもしれないですが、50年、100年と経ったときに、その時代の人が過去の地域のことがわかる貴重な資料になっていくんです。図書館はそうやって地域の記憶や記録を収集し、保存し、未来へつなげていくための大事な役割も担っています。

市町村立図書館はそれぞれの地域に関わる資料を、また県立長野図書館は長野県や信州全域に関係する資料を郷土資料として広く収集し、多くの方の調査研究などにご活用いただいています。

公共図書館の情報基盤の拡充を応援する「企業版ふるさと納税」という関わり方

―最後に「企業版ふるさと納税」についてもお聞きしたいと思います。県立長野図書館には、これまで数社から「企業版ふるさと納税」の寄附事例がありますが、どのように活用されましたか。

「タブレットをかざすとさまざまな情報が飛び出てくる地球儀」。寄附を活用して購入。

小澤:これまでいただいた寄附は、プログラミングを体験できる玩具やAR技術を搭載した地球儀など館内で自由に使えるデジタル関連グッズ、また、低視力や弱視などの方の読み書きを支援する拡大読書器の整備などに使わせていただきました。

―図書館でデジタル関連グッズ、なんだか意外ですね。

小澤:インターネットの普及以降、情報のカタチがデジタルへと劇的に変わってきています。図書館は「地域の情報拠点」という役割を担っているわけですから、当然、紙の本だけでなくデジタルな情報資源も備える時代になっています。
小学校でプログラミングが必修化されましたが、おうちに帰ったときにやっぱり個々の家庭の状況とかで、それ以上深めたくても深められないっていうケースは当然あるかもしれません。

だからこそ県立長野図書館は、誰でも望めば、そうした体験に出会える場所でありたいんです。

また、紙には紙ならではの良さがありますが、文字では情報を得にくいタイプのお子さんもいらっしゃいます。今の時代だからこそ、デジタルを活用して可能性を広げるといったこともできるんですよね。

小さな子どもでも「プログラミング」体験ができるグッズ。こちらも寄附を活用。

とはいえ、デジタルを活用するといっても、大切にしているのは、自分の手で握ったり動かしたりする体験。ディスプレイの中で操作するだけじゃなく、ささやかであっても自分の実感が伴うグッズをなるべく選んでいます。

企業版ふるさと納税でいただくご寄附では、デジタル関連グッズだけでなく、今後郷土資料を購入する予定もあり、全体のバランスをみながら、情報資源の充実に活用させていただいています。

―今後について何か考えていることはありますか?

永野:コロナ禍でなかなか難しいところですが、寄附いただいた企業さまとじっくりお話したいですね。

小澤:せっかくご縁ができたので、人材育成や協働のプロジェクトを立ち上げる…みたいなこともできるといいですよね。

永野:そうですね。「企業版ふるさと納税」に関連した企業連携はまだないですが、これまで県立長野図書館では「信州・学び創造ラボ」の運営に関し、スマホアプリなどを手掛ける株式会社アソビズムや本の買取・販売などを行う株式会社バリューブックスと連携協定を結ばせていただいた例もあります。

小澤:県立長野図書館は「共に知り、共に創る広場」として、これからもさまざまな方と共に考え、アクションを起こしながら「これからの図書館」の実現に向けて前に進んでいきたいと思っています。「企業版ふるさと納税」を行うにあたり数多ある寄付先から当館を選んでいただいた縁をきっかけに、今後企業さまとも何かコラボレーションができるとうれしいですね。

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私たちと「企業版ふるさと納税」を契機としてパートナーシップを構築し、一緒に地方創生に取り組んでいきませんか?

もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ企画振興部総合政策課までお気軽にご相談ください。

長野県「企業版ふるさと納税」
WEBページhttps://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/kensei/shisaku/kigyobanfurusatonouzei/soudanmadoguchi.html


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