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〔小説〕朝起きたらアザラシになっていた その24 名古屋散歩
※この話はフィクションです。実在する人物・団体名とは何ら関係ございません。100%作者の脳内妄想のみで構成されています。
朝起きたらアザラシになっていた俺は、東京から名古屋市の公的機関に出向いて書類手続きをしていた。
お役所ならではの煩雑(はんざつ)な書類手続きの連続にうんざりする。
書類の2枚目と3枚目にもする捺印(なついん)が面倒だけれども必要なのでキレイに押す。
(・ω・っ)З(アザラシ)でもハンコは必要だ。面倒だから朱肉さわったヒレで拇印(ぼいん)押してすませたくなる。
お役所手続きをすませると午後3時になろうとしていた。
昼飯はまだ。
今日食べたのは名古屋駅の店で食べたきしめんだけ。
残りの時間で市営バスにのってプチ観光しつつ『孤独のグルメ』みたいに昼飯食べる店を探す。
バスで向かうと豊臣小学生や豊国神社など秀吉にちなんだ地名が多く、秀吉の故郷中村をバスが通る。
名称言行録によれば秀吉は大根とごぼうが好きで中村の百姓に大根とごぼうを献上させる代わりに年貢を免除した。
しかし、中村の百姓たちは余計な忖度(そんたく)して絹を送ると
「余計なことするな!」
と怒って免除を取り消したとも言われる。
秀吉と百姓、両者の気持ちは痛いほどわかる。
秀吉の立場からすれば都会のご馳走と珍味は三日食えば飽きる。
皆さんもコロナで宴会を自粛する前は飲みの席に出た経験もおありでしょうが、俺は帰宅すると炊飯器に残った冷飯と冷蔵庫にある飲みかけの緑茶。それと賞味期限ギリギリのニンニク味噌や筋子を乗せたお茶漬けを食べてから寝るのが恒例だった。
なんだかんだで子供の頃から食べなれたものが飽きないしホッとする。
秀吉も俺と同じ心境立ったのだろう。
でも、地元民からすれば都会の豪勢な料理に比べたら地味なので要らないだろうと考えてしまい。こちらから郷土料理を指定して余計な忖度(そんたく)されるのは今も昔も変わらない。
俺が帰省するとなぜかスーパーで買ってきた寿司が実家でも親戚の家でも出る。
俺が寿司を好きでも嫌いでもないので出されたら食う程度で自分から食いに行った事は一度もない。
俺からすればホタテ貝に溶き卵で溶かした味噌を落としてストーブの熱でゆっくり加熱した卵味噌のほうが好きだから
「寿司は要らないよ」
と何度伝えても俺に対するもてなしの心と怠惰で未だに寿司と対面する。
都会で食えない郷土料理の価値を灯台もと暗しで逆に気付かないのだろう。
秀吉もさぞ、それを残念に思ったことだろう。
そんな思索にふけりながら弁当屋に入る。ハンバーグ弁当が350円と東京に比べて激安だ❗
住民が窓口で唐揚げ、ハンバーグ、焼肉を注文する。
でも俺はおでんが食いたくなった。
歳をとるとスタミナ丼を食べるためにスタミナを要して本末転倒となる。
4月上旬なみの暑さにヘトヘトな俺はだしの染み込んだ大根とゴボウ巻き 茶色くなった卵、ふわふわのがんもどき、プルプルのこんにゃく。これに味噌とカラシと白米がついて400円だ買うしかない!
野獣な俺が「おでん弁当下さい!!」言うから何度も確認された。
そりゃ見た通りの野獣が肉を頼まずに申し訳程度の卵、練り物、野菜しか注文しないのだ。
のちに世をはかなんで出家した旅の坊主が来たと噂されても仕方ない。
逆に弁当屋の箔がつくかも知れないので、それはそれでヨシ。
皆さんはテレビで「細かすぎて伝わらないモノマネ」をご覧になったことはあるだろうか?
あれは物凄い熱量こめてるのだけどマニアックかつコアすぎて一般人には伝わりにくい芸ばかりが披露される。
それと同じで俺も小さくてコアな世界でずっと尖っていた。でも、いまは自転車旅行中に歴史談義して巷説(こうせつ)を聞いても
「家康は天ぷらであたったんだよねぇ~」
と流す。
むかしは「史実云々は~~」「時代考証は〇〇で~~」など突っ込んでいたが月日が経つとマイルドになった。
いまは細かいことはさておき大体伝わればよしとする。
だから坊主みたいな(・ω・っ)Зが来たと語り継がれたらOKなのだ!
こんな俺は親戚から「角が取れて丸くなったね」言われるが、
「太ったんだよ」と言い返している。
親戚一同そこで爆笑するんだけど、目の前に(・ω・っ)Зがいるんだぞ!そこ突っ込めよ!!と問い詰めたら。
「アザラシになってもお前はお前だよ」
泣かせてくれるじゃねーか。
「小遣いあげるからこれでお寿司食いなさい」
そこも変わらずかよ!
つづく。
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