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リユース容器を地域で循環させてプラスチックゴミ削減に貢献。株式会社カマン/Megloo代表 善積真吾さん

今回登場していただくのは、飲食店のテイクアウト時に使うリユース容器を地域内で循環させる、Megloo(メグルー)を運営する株式会社カマン代表の善積真吾さんです。Impact HUB Tokyoが運営するデリカフェ・焼き菓子のDeli at Communitaも、Meglooの実証実験に参加しています。

善積さんがMeglooを始めたきっかけやサービスの仕組み、現状の課題、将来のビジョンなどについて、お話を伺います。


学生時代の経験を起源にして生まれたリユース容器循環サービス

―まずMeglooの基本的な仕組みと現状をお聞かせください。

飲食店がデリバリーやテイクアウトをする際には、使い捨て容器が使用されています。Meglooは、地域共通のリユース容器を循環させることで、使い捨て容器を減らす取り組みです。アプリで簡単に容器を貸し借りできる仕組みを導入して、リユース容器の返却率を向上させています。お客様側は店舗に来てリユース容器を無料で利用でき、店舗側には使った分の費用をいただくというビジネスモデルで運用しています。

Meglooは現在、北海道の栗山町、東京の中目黒、目黒、蔵前、神奈川県では横浜と鎌倉、静岡県の袋井市の全国7都市でサービスを展開しています。

社会全体でプラスチックゴミは非常に多い状況です。ゴミの約半分がプラスチックゴミで、容積比だと半分以上。ゴミ全体の約6分の1を弁当容器やカップ容器が占めています。そうした現状にインパクトを与えるサービスにしていきたいと考えています。

写真提供:株式会社カマン

―Meglooを立ち上げるきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

息子が3歳になった頃から、一緒に散歩すると道端に落ちているゴミを拾うようになったんです。偉いなあと感心すると同時に、周囲を見渡すとゴミがたくさんあって、何か申し訳ない気持ちにもなりました。

ちょうどコロナ禍の緊急宣言が出た時期で、僕自身もデリバリーやテイクアウトをよく利用していて、オフィスのゴミ箱がプラスチックゴミであふれていました。自宅でもプラスチックゴミが思った以上に大量に出ていました。そんな様子を目にして、ゴミ削減への取り組みを具体的に考えるようになりました。

振り返ってみると、学生時代から旅行が好きで、70ほどの国々を訪れました。大学2年生の時にモンゴルまで飛行機を使わずに、神戸から天津まで船で行ったんです。2泊3日の間、船上で何もすることがなくて海の上を眺めていたんですが、海面に一番多かったのはクラゲで、2番目がなんとゴミだったんですね。見渡す限り広がっている海に、大量のゴミが浮かんでいる光景は異様なものでした。モンゴルに着いてからも、どこに行っても大草原にゴミが落ちていたんです。その後どこに行っても、繰り返し環境問題の話が出てくるんです。都会に住んでいると意識しづらい深刻な問題が地球上で起こっていると強く感じました。

その後、大学を卒業して就職してからは、環境問題に目を向ける機会がどんどん少なくなってしまいました。僕の環境への意識は大学時代がピークで、いったん下がって、子供が生まれてからまた徐々に高まってきたという感じですね。息子との経験から学生時代の経験を思い出したことが、MEGLOOの立ち上げにつながりましたし、今だったら環境問題への取り組みを事業にできそうだという思いもありました。

テイクアウト情報サイト作りから始まった取り組み

―Meglooのアイデアが生まれてから事業化するまでのプロセスは?

まず、コロナ禍の期間にテイクアウト情報をまとめたサイトを作ったんですね。お店でテイクアウトをしたいけど情報があまりないという状況で、自宅のある鎌倉市のテイクアウト情報サイトを立ち上げました。純粋にテイクアウトできるお店を掲載するサイトです。時期的に外食などができない状態だったので、自宅で物を食べるくらいしか楽しみが無かったんですね。テイクアウトの情報をまとめて見ることができると便利だという話を周囲としていました。そういうサイトを作っている方が他の地域にもいらっしゃいました。実際にサイトを作ってみると、予想以上に多くの方々が使ってくれて、テレビの取材なども受けて注目されることになりました。

そのサイトに「マイ容器持ち込み可の店を教えてくれ」という問い合わせが来たんです。同様の問い合わせが立て続けに10件ほど寄せられました。
ただしマイ容器の利用には、飲食店側としては衛生面の管理ができない、容器の形状がさまざまで盛り付けしにくい、電話を受けてすぐ作りたいのに容器を持って来られてから対応するのは厳しいといったいくつかの問題があったんです。

そうした飲食店の不安や課題を払拭するためには、共通のリユース容器を作って循環させるという方法が最適ではないかと考えました。

リユース容器サービスの先行事例を調べたら、ドイツにそうしたサービスが多数あって、優れた仕組みを持つものもありました。Meglooを始めた後の2022年末、実際にドイツを訪問し、リユース容器利用の現状を調査しました。

ドイツでは、テイクアウト時にリユース容器を使うという選択肢を義務化する法律が、2023年1月に施行されました。ドイツのリユースへの取り組みは非常に先進的で、リユース容器関連のスタートアップが3、4社あり、いずれも何千件もの店舗が加盟しています。リユースカップに関しては何万店舗も導入済みで、ドイツ国内のカフェの約半分がリユースカップを使用しています。ドイツを訪問したのは新しい法律施行の直前だったんですが、現場を見ていろいろと参考になることがありました。

Meglooによって社会にインパクトを与えるために

―Meglooを展開することで期待できる、飲食店側の行動変容についてはどのようなビジョンをお持ちでしょうか?

まず店舗には、環境のためだけではなくリユース容器が一番いいと思ってもらいたいですね。ドイツで飲食店などにヒアリングしたんですが、結局リユース容器がいちばん低コストなんです。

社会に大きなインパクトを与えるには、環境への意識が高い人だけに向けた試みではなく、しっかりとした経済性や合理性を持ったサービスにしなければいけないと思っています。まず意識の高い店舗が使ってくれる状況を作って、徐々にコスト低減を実現することで、利用する店舗数を増やしていきたいと考えています。

またMeglooを使っているから来たという新しいお客様がいることは、飲食店にとって大きなメリットだと感じています。

―お客様側には、どのような生活の変化が起きるでしょうか?

お客様のメリットは何かということは当初から当然考えていて、メリットを一生懸命出そうとしました。これを使うと50円引きといったことを試したんですが、あまり利用する方々にはあまり響きませんでした。利用する人は追加料金が不要なら、ゴミが出ないほうを使いますといった感じなんです。また、1回Meglooに変えた人が使い続けてくれるということは確実にあります。もちろん今後このサービスを広げていくには、こうしたインセンティブも必要になると考えています。

ある店舗で、テイクアウトするときに普通の使い捨て容器だとプラス100円、リユース容器だと無料にしたんです。その結果、利用数が急増しました。それだけ料金が下がったらリユース容器を使う方々が増えるんだと痛感しました。

また、お客様から「Meglooを使っているお店はおいしい」という声が寄せられることが多くて、最初は偶然だと思っていたんですが、環境意識の高さと食材への意識の高さは、こだわりという面で近いものがあると感じています。

リユース容器を自宅に持ち帰った後の返却が面倒だと感じることも、現状では当然あるかと思います。オフィスなどに返却ボックスを置かせてもらう方法が有効だと考えています。

写真提供:株式会社カマン

―Meglooのリユース容器の素材や特徴についても教えてください。

素材はプラスチックです。プラスチックに決める際は非常に悩んだんですが、残念ながらプラスチックに勝る素材はないんです。ガラスは割れるし重い、ステンレスだと値段が高すぎるし環境付加も高くなります。バイオマスプラスチックはリサイクルができないことなどを考慮して、最終的に普通のプラスチックを素材に選びました。

環境負荷を計算すると、単純なプラスチックが一番負荷が低いんです。悪いのはプラスチックではなくて、プラスチックを使い捨てすることだという結論に至りました。

容器のデザインを決める際には、スタッキングや、ご飯ものと汁ものを分けられるといったことを重視しました。

写真提供:株式会社カマン

地球中心の発想で生活文化の転換に挑む

―今後Meglooのサービスを拡大していく上での課題は、どのような点でしょうか?

生活文化を変えることは本当に難しいと感じています。リユースの重要性を理解してもらうのは、容易ではありません。そうした中でお客様や店舗に、積極的に利用してくださる人がいて、周囲にしっかり説明してくださるのは、とてもありがたいことです。また、そういった方々がアンバサダー的な役割を担ってくださって、職場などで伝えてくれることが、サービスの拡大に最も効果的だと思っています。

今後のMeglooの拡大方法としては、今進めているローカルに広げていく方法に加え、スポーツなどのイベントでの利用も検討しています。

―では最後に、善積さんが考える「サーキュラーエコノミー」についてお聞かせください。

当初はサーキュラーエコノミーということを特に気にしてなかったんですね。僕自身は「プラネットセンター」という考えから取り組みを始めました。メーカーに入社した頃は「プロフィットセンター」だったんです。利益を出すことを中心に考える中から「ピープルセンター」という人間中心の発想に変わってきてその後10数年間、人間のニーズを満たすモノ作りに取り組んだ結果、地球中心で考えるプラネットセンターという発想にたどり着きました。

プラネットセンターだからといって、当然プロフィットやピープルを無視していいわけではありません。持続可能な取り組みを実践しつつ、お金もしっかり回るようにしなければいけないし、ユーザーが面倒だと思わない仕組みも必要です。そうした取り組みを続けることで、環境問題の解決につなげていきたいと考えています。また、リユース容器を巡らせると同時に、人々の心も巡らせたいんです。容器を返却する際に、お店の人とお客様の間にちょっとした会話だったり、コミュニケーションが生まれたりすればいいなと思っています。

―本日は本当にありがとうございました。

プラスチックゴミ削減に役立つリユース容器を地域で共有して循環させるMeglooには、善積さん自身の体験と環境に対する強い思いが込められています。今後のMeglooの展開に、期待したいと思います。

善積さんの事業の詳細はこちらです。ぜひご覧ください。

取材:三塩佑子
執筆:Yasuhiro Yamazaki

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