農家さんの顔や想いが伝わってきてうれしい。
「やっぱり4つの方がいいか?」
茜空がうっすらと広がり始めたころ、
スーパーの野菜売り場でトマトを選んでいると、隣にいたおじさんに急に話しかけられた。
状況が飲み込めず、トマトを手にしていたからトマトについて何か聞かれたのかと思っていたら、おじさんが私のカゴに入っていたカブを指差して、
「いやねこれ、俺が作ってるのよ。ちょっと大きく育っちゃって3つにしたんだけど、やっぱり4つの方がいいんかなぁと思って」
そのおじさんは、私が手にした野菜を作ってくれた農家さんだった。
今年始めて目にするカブ。まんまるでまっしろなカブは遠目から見てもおいしそうで、ついつい吸い寄せられた。
たしか売り場には4つ入りと3つ入りがあって、なんだか頭がぽーっとしていて無駄にどっちにするか迷ってしまって、最終的に4つ入りをカゴに入れた。
それを見ていたようだった。
「あ、そうなんですね!料理をすることを考えて、2個2個で使いやすいかなぁと思ってなんとなく4つにしただけで、3つでも特に問題ないですよ」
と、私は答えた。
「あぁそうかそうか。本当は上の葉っぱも取っちゃうんだけど、今の人は葉っぱも使うでしょう。だから残してあんだ」
葉っぱは持ち帰りやすいくらいの長さで切られていて、しゃんと伸びていてみずみずしくおいしそう。普段捨てがちな私もちょっと使ってみちゃおうかななんて、手にしたときに思っていた。
おじさん流カブの食べ方も教えてくれた。
「俺なんかは、薄く切ってステーキにして食べちゃうよ」
「味付けは醤油で?」
「いやいや、BBQソースとか焼肉のタレよ」
なんだかちょっと照れ臭そうに、でもちょっとえっへん顔で教えてくれたおじさんの顔が素敵だった。
「あ、本当にステーキみたいに食べるんですね!美味しそう私もやってみます。」
「今日は一回朝来てるんだけど、なくなったっていうから今また来たんだよ」
これまたおいしそうなブロッコリーを指差しておじさんは言う。
「パプリカもあるからね、よかったら見てってね」
そう言っておじさんは裏に消えていった。
かっこよかった。
そんなに多くはないやりとりだったけど、
おじさんが話す言葉の端々から、野菜への愛や誇り、手にして口にする私たちへの想いや工夫までもがじわじわと伝わってきた。
それがすごくあったかくて、うれしかった。
私もおじさんの真似をして、カブをステーキにして食べよう。
味付けはもちろん、BBQソースか焼肉のタレで。
そしてまたいつかお会いできたときに、「おいしかったです!」って伝えよう。
あのおじさんなら、農業も優しく教えてくれるかもしれない。
余裕があったらちょっと勇気を出して、「農業手伝わせてください!」って言ってみよう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。よろしければ、サポートもしていただけたらとっても励みになります😊活動の幅を広げていきたいです。