なぜ採用にブランディングは必要なのか?(vol.2:具体と抽象の行き来から学ぼう)
あの人気企業を真似してみたのですが、
全然上手くいかないんですよ。
何をしたらよいか分らない。
だから、
過去の方法を変えなれない。
そんな会社が多い中、結果はともかく
挑戦したことは素晴らしいことです。
ただ、他社の具体的な事例を見て
それを自社でそのまま真似すると
なぜか良い結果を生まないのです。
この理由、あなたは分かりますか?
今回はちょっと難しい話ですが、
『具体』と『抽象』の概念に関係があるのです。
また、このお悩みを解決する手段として
採用ブランディングはとても有効なので
その理由も併せて解説したいと思います。
1.なぜ抽象の概念が必要なのか?
2.なぜ具体を真似ると失敗するのか?
3.ブランディングと、どう関係があるのか?
色々と気になると思いますが、
この辺りを明らかにしていきます。
1.具体と抽象の違いを理解する
今回取り上げた具体と抽象の話は
細谷 功 氏著の「具体と抽象」を
引用しながら、私の意見も取り入れて
解説していきたいと思います。
よく会社で上司から
「お前の話は分かりにくい、
もっと具体的に話せ!」
と言われたことはないでしょうか?
一般的には、
「抽象」は悪いこととして扱われ、
「分かりにくいもの」として
敬遠されがちといえます。
しかし、著書の中で
それは大きな誤解があるとされており
「具体と抽象の行き来を意識することで
間違いなく世界が変わって見える」
と書かれています。
少しイメージし辛いと思うので、
事例を見ていきましょう。
例えば、
マグロ、サンマなどが「具体」なら、
魚は「抽象」になります。
小さく視点を変えると、
クロマグロ、ミナミマグロ、メバチが「具体」
なら、マグロが「抽象」になります。
逆に、拡大していくと、
魚、動物、植物が「具体」なら、
生物が「抽象」になります。
このように見る視点によって
具体と抽象の位置関係も変化します。
これは、
上司と部下にも同じことが言えます。
上司は「職場が汚い」と感じており、
部下へ「職場をきれいにして!」と指示した時、
言葉通り捉えると、部下はどうしますか?
当然、掃除をしてゴミを捨てますよね?
しかし、
上司から見るとドアの出入り口を塞ぐ箱、
乱雑に置かれた備品など、衛生管理の視点で
部下に指示をしていたなら話が変わります。
この時、
上司は「全然出来ていない!」と怒り、
具体的に他の部分も指摘したとしましょう。
すると部下はどう思うでしょうか?
部下から見れば、その上司の振る舞いは
「朝令暮改」「気分屋」と
見えてしまうかもしれません。
このように抽象の視点で指示した上司と
具体の部分を見ている部下との間で
コミュニケーションギャップ
が発生してしまいました。
上司からすると、職場が綺麗なのは
衛生管理の視点で問題ない状態
一方で、部下は上司からの指示を
具体として捉えたため、
「汚い=ゴミが落ちている」
「きれい=ゴミが落ちていない」
と認識してしまったのです。
そこで「抽象」がどのように役に立つか
解説していきたいと思いますが、
抽象化の良い所は何でしょうか?
実は、上記のような
コミュニケーションギャップを解消し
円滑にする役割を担うのです。
では、先程の上司と部下の事例において
どう指摘すれば良かったのでしょうか?
ぜひ、あなたも考えてみてください。
それでは答えの一例をご紹介します。
上司「この職場汚いよね?
衛生管理的に見てどう思う?」
部下「そうですね。ゴミが落ちていて
清掃が行き届いていないですね。
あとドアの前を段ボールが塞いで…
すぐに直します。」
上司「そうだね。
あと、三定って覚えてる?」
部下「確か…定位、定品、定量です。」
上司「正解。
その意味で他に気になる所はある?」
部下「そうですね…あっ!
棚に置かれた備品がぐちゃぐちゃです。
すみません。これも整理整頓します。」
違いが分かったでしょうか?
まず、
「衛生管理の視点で見る」
という意味合いを持たせたことで、
部下に意図がスムーズに伝わりました。
安全衛生の視点で見ると、清潔以外にも
整理整頓や安全の視点も追加されますよね。
次に、
「三定」という定義から、意味だけでなく、
棚の備品が正しい状態ではないことに
部下は自分で気づくことができました。
これが抽象化の良い所であり、
見ている視点の違いを、こうした抽象化された
定義を使って共通認識をもつことによって、
コミュニケーションギャップを解消することが
出来きたのではないかと思います。
2.具体を真似してはいけない理由
『具体』と『抽象』の違いと
『抽象化』の重要性が分かりましたか?
では、両者の違いについて
簡潔に表したものが以下の通りです。
具体の特徴
①直接目に見えるもの
②一つ一つ個別対応
③解釈の自由度が低い
抽象の特徴
①直接目に見えないもの
②分類としてまとめて対応
③解釈の自由度が高い
つまり、抽象化とは
直接目に見える具体の事象を
共通項、一定の法則などで分類してまとめ、
定義として言語化した概念である
このように言い換えると
分かり易いのではないでしょうか?
ここで一つ注意して頂きたいことがあり、
具体→抽象、抽象→具体は
それぞれ意味があるのですが、
具体→具体、抽象→抽象は
あまり意味を成しません。
特に、具体→具体は陥りやすい罠です。
あなたも経験がないでしょうか?
「具体」とはあくまで個別の事例であり、
自由度が低い=限定の条件下で適用
という特徴があります。
つまり、
そのまま実行したのでは再現性が低いこと
が最大の弱点となります。
なぜそう言えるのか?
もう少し深堀りしていきます。
具体の事例は一人称の視点で見たとき、
人とは見える景色が異なります。
なぜなら、
私たちは一人ひとり経験や知識
そして、思考回路が異なるからです。
同じものを見ているつもりでも
「違うものを見ていることに気付かない」
という罠に陥りやすいのです。
一人称が一個人ならまだしも、
会社単位となると、全くの別物です。
それでは、
冒頭の人気企業の真似をして失敗した
冒頭の事例に置き換え、考えてみましょう。
人気企業とそれを真似た企業では
会社の規模、業界、応募状況、歩留まり等
まず前提条件が異なるはずです。
企業ごとに課題も異なり、解決方法も異なります。
例えば、
就職人気ランキング上位の企業が、
イベント内容をSNSで公開してバズり
その年の採用に大成功したニュースを見た
と仮定しましょう。
では、そのイベントとは
どの時期に行われたものなのか?
また、目的は何のためのものか?
この違いを把握していたでしょうか。
目的でいえば、集客のため?
それとも、就職意向を高めて
内定受諾を促すことが目的なのか?
求職者目線でいえば、
元々、興味関心を抱いていた会社か?
名前も認知していない会社なのか?
等々
これらの違いによって
イベントの構成、集客方法も異なります。
解像度が低いため、
成功した会社の施策を真似できていないのです。
そのため、単にイベントを開催して
SNSへ沢山アップロードしようと、
表面だけ真似た場合、上手くいくでしょうか?
結果は想像に固くありません。
だから具体の真似は再現性が低いのです。
3.決め手は「具体→抽象→具体」
ここまでの話を通して
抽象化が必要な理由と
具体的な事例に再現性が低い理由を
説明してきました。
では
採用ブランディングがどのように有効なのか?
を解説したいのですが、
その前に、具体と抽象の関係から
どうすれば有効な施策になるのか?
この部分の理解が必須となります。
結論として、
「具体→抽象」へ、そして「抽象→具体」
へ戻してあげるを心がけてください。
これだけでは分り難いので
先ほどの事例に照らしてご説明します。
就職人気ランキング上位の企業が、
イベント内容をSNSで公開してバズり
その年の採用に大成功したニュースを見た
ここで注目したい点は以下の内容です。
①イベント内容がどのようなものだったのか?
②SNSには他に何が掲載されているのか?
③採用の成功とは、何を指しているのか?
例えば
・応募数が増え、大量採用ができたのか?
・辞退率が下がり、採用が成功したのか?
・就職意向が高まり、ランキングが上昇した?
こうした情報から、
誰に、何を、どのように訴求したのか?
その結果、何が成果として得られたのか?
この法則を導き出す必要があります。
情報源は限られていますが、
・媒体等に掲載されている情報
・採用ホームページの内容
・SNSで公開されている内容
・株主向けのIR資料 等
をご確認ください。
以上の内容から、抽象化をしてみましょう。
「具体→抽象」へのプロセスをご説明します。
パターンA
SNSを見ると、採用に関する情報が少なく
元々人気企業だったこともあり、
イベント自体に注目が集まったケース
パターンB
6月に大学3年生を対象にイベントを実施し、
夏の長期インターンへの切符という意味合いを
もつイベント内容であることが分かりました。
SNSでの事前告知がきっかけで注目を浴び、
結果、対前年比の応募数が1.5倍に増えたケース
Aからは何も学びがないことが分かるでしょうか?
元来の企業がもつブランドがけん引した結果のため
自社で適用しても意味がないケースです。
これは絶対にそのまま真似してはいけません!
Bの場合、インターンへの参加という動線があり
その集客のため、早期から大学生にアプローチする
という点に学びがあります。
あとは自社の事情に当てはめ、ベストな手法を選択
することで、ある程度の再現性が見込まれます。
※ただし、全く名もしらない企業の場合、
インターンの内容を奇抜するなど、
認知が浅い状態からの集客の方法を
工夫する必要があります。
以上から、パターンBのように、
特徴をまとめ法則化することが
「抽象化」の過程であり、これを「具体」の
施策に落とし込む過程が「具体化」です。
次に、パターンBにおける
「抽象→具体」へのプロセスを見ていきましょう。
(自社で長期インターンを導入している場合)
これは真似する価値があると思います。
更に、書類選考免除などの特典をつけることで
より多くの集客が見込まれます。
イベントへの参加理由が選考の一部免除という
理由付けができ、集客効果が期待できます。
(自社で長期インターンを導入していない場合)
これは少し工夫が必要です。
長期は無理でも短期の就業体験をしてみるのは
如何でしょうか?
イベントで自社に興味関心をもった状態で、
実際の現場を見て、より意向醸成を図るという
設計は如何でしょうか?
もし、自社でアルバイト就業者の入社確立が高い
というデータがあれば、やらない手はありません。
以上が「抽象→具体」のプロセスです。
(実際にはこんなに簡単な話でありませんが、
分かり易くするために簡略化しました。)
「具体→抽象→具体」へのプロセスを
ご理解いただけたでしょうか?
それでは、今回の本題である
採用ブランディングとの関係
について解説したいと思います。
先ほどの事例にあった人気企業は
既にブランドが確立していることから、
パターンAのような施策でも
結果が出てしまいます。
この企業で働きたい!
もっと担当者から詳しい話を聞きたい!
とイメージさせる力が
ブランディングによって得た効果なのです。
ブランディングは
「抽象化」された概念の典型例であり
直ぐに効果は出てきませんが
「具体化」への正しいプロセスを経ることで、
徐々に効果が出てきて、長く続きます。
ブランディングによって
今よりも確実にセールスやリクルーティングを
成功に導くことが可能となります。
だから、
採用ブランディングには効果がある
と主張したいのです。
しかし、
これを否定する方の立場から見れば
いつ投資効果が出るか分からないものは
効果測定が難しく、売り物として扱い辛い
と思うことでしょう。
また、
費用対効果を顧客から求められるため、
ある意味、限定的な効果と知りながら、
目先の具体施策を提案する傾向が強くなる
のは仕方ないと思います。
ただし、これだけは断言して言えます。
〇〇会社も導入しているという具体事例の提案
〇〇するだけで、確実に効果が出るメソッド等
これらはどれも怪しいと警戒してください。
前者は「具体→具体」だから、再現性が低い、
後者は「抽象→具体」に一見感じると思うが、
誰でも当てはまるという点に嘘があります。
誰にでも当てはまる具体化は存在しないのです。
今回、ビジネスマンには必須の
具体と抽象の行き来について学びながら
採用ブランディングの重要性について
解説させていただきました。
最後にもう一度気をつけて頂きたいのですが、
採用ブランディングも「抽象」の法則です。
各企業ごとに、前提となる事情が違うため
①理論を正しく理解する
②個社の事情に合わせてカスタマイズして実施
③検証、改善を繰り返す
このステップを経て苦労した先に
成功が待っていると心得てください。
残念ながら、
楽して稼げる理論も
楽して良い人をたくさん集められる理論も
存在しないと私は思います。
如何だったでしょうか?
今回はちょっと難易度が高いと
認識しているのですが、
とても大切な話なので記事にしました。
一度読んで良く分からないという方は
何度も読み返していただけると幸いです。
(私も何度も読み返して、数日間かけ
修正して、読みやすくしたいと思います。)
次回は、
なぜ採用にブランディングが必要なのか?
このWHYの部分の最終章となります。
非常に有益な情報なのでご期待ください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が良かったという方は
いいね!を
他にも読みたいと思っていただけた方は
フォローを
よろしくお願いいたします。