記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【鬼滅の刃から学ぶ組織論】無惨様の弱点は日輪刀よりもビジョン経営を知らない事だった!!※ネタバレ注意※

ブラック企業も真っ青な非道ぶり、鬼舞辻無惨。通称「パワハラ会議」とも呼ばれるシーンを始め、圧倒的恐怖政治で組織経営を行ってきた無惨様ですが、実は目指すビジョンを共有できていなかったことが敗因だったのでは?

…そんな観点で、ホワイト財団代表理事の五味田先生をゲストにお招きし、徹底討論を行いました。

『鬼滅の刃』(きめつのやいば)とは
「週刊少年ジャンプ」にて連載(2016-2020年)された吾峠呼世晴による漫画作品。2019年4月よりTVアニメ化、2020年には劇場版<無限列車編>が公開され、公開から24日で興行収入200億円を突破と、今まさに大ヒット中の作品。
舞台は大正時代の日本。主人公・炭治郎は、ある日鬼に家族を皆殺しにされてしまい、唯一生き残った妹の禰豆子(ねずこ)は、鬼に変貌してしまう。妹を人間に戻し、鬼のトップである宿敵・鬼舞辻無惨を倒すため、炭治郎は鬼の討伐組織「鬼殺隊」に入隊。仲間とともに鬼退治と妹の人間化を目指す‥というお話。

本シリーズでは今人気爆発中の『鬼滅の刃』に登場する「鬼」と「鬼殺隊」の組織をビジネス視点から分析・解説してみたいと思います。
記念すべき第1回目は、主人公・炭治郎(たんじろう)の宿敵・鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の束ねる鬼組織について。


※以下、原作最終巻までのネタバレを含みますのでご注意ください!※


▼動画で見たい方はこちらから

※今回は組織分析として解説しますので、わかりやすく鬼組織=「鬼舞辻商店」、無惨様=「社長」と見立てて対談形式でお送りします

※途中登場するコミックスの画像は全て、吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(集英社)より引用させていただきました

鬼舞辻商店、超絶ブラック社風疑惑について

画像1


江本:まずはこの対比となっている鬼の組織についてですね。単行本の6巻から抜粋です。

画像3

五味田:いやあ、素晴らしいセリフですね。

江本:そこそこ幹部を集めて言ってましたよね。

五味田:そうですね、堂々とおっしゃってましたね。

江本:ということで鬼の組織、鬼舞辻󠄀商店をみていきます。
まず社長の無惨様、どういう方か。ぱっと解説するとこんな感じです。

・1000年続くワンマン経営
・社長が「正しい」と言ったことだけが「正しい」
・全ての決定権は社長にあり、社長の言うことは「絶対」


…ですが、実は目指していたことは「太陽を克服したい」。しかし、そのミッションは社内で共有されていなかったのではないか。だからそれぞれ、鬼のやりたいことはバラバラだったと。

画像4

(禰豆子が太陽を克服したと知った時の無惨様 [左])

五味田:そうですね、これは結構大きな問題かなと思ってまして。実は、社長は太陽の下で生きるための薬を作る予定だったと。そこをちゃんと共有したうえで「なので組織を形成している」とか「なので鬼を増やしている」といったことを言っておく方が良かったのではと思います。

【『鬼滅の刃』から学べるポイント① 目標の明確化について】
モチベーションを維持・向上できる人材育成のポイントの1つに「目標を明確に定める」という点があげられます。実際に、1960年代にアメリカの心理学者ロックが提唱した「目標設定理論」によると、モチベーションの違いは目標設定の違いによってもたらされると考えられ、曖昧な目標よりは明確な目標のほうが結果としての業績は高い、ということが確認されているそうです。(参考記事はこちら


どこにいても管理される「超管理マネジメント」


江本:
鬼は、いつでもどこでも場所や思考を管理されていました。「超管理マネジメント」ということですね。

▼鬼の組織のマネジメント手法
・言い訳するとアウト
・逃げるとアウト
・負けるとアウト
・説得力がないこと言ってもアウト
・会議の中で評価される


江本:実際、今回の無限列車編の列車のあの鬼ですよね、通称「パワハラ会議」で一人だけ評価されたんですけど。

画像5


江本:まあ…ちょっと理由もよくわからない、けどなんか「お前、いいね!」って一人だけ評価されるという。

五味田:そうですね、これはたぶん「評価軸が明確じゃない」っていうところがあるのかなと思うんですよ。
そもそも自分の血をどれくらい受け入れられるかで強さがけっこう変わると思うんですけれど、その評価軸もまずわからないですし…。

最終何を達成したいのかも隠していたので、よくわからないっていうところもありますよね。みなさんきっと報われない気持ちで戦っていたんじゃないかと思うんですけども。

江本:まあ、鬼ですけどね。

五味田:まあ、鬼なんですけどね。(笑)
だから自分なりの楽しみみたいなことを、それぞれ見出してしまったっていう感じはしますよね。

鬼舞辻商店の「待遇面」について

▼鬼の待遇(鬼だと、どんないいことがあるのか?)
・鬼として永遠に生きられる
・鬼だから怪我がすぐ治る
・鬼だから無理がきく
・人間時代の復讐ができる

五味田:なるほどー。待遇の4番目ちょっと悲しいですね…。それぞれみなさんトラウマ抱えて、最後みなさん解消したからよかったですよね。あれはあれで美しかったですけど。…しかし、こう並べるとひどい待遇ですね。

江本:そうですね。(笑)

五味田:無理やりさせられてますもんね。最後ね。
まさに無惨のための…。集められて無惨のために動けって感じですね。
確かにブラック度高いですね。

スライド3

(戦いの終盤、人間だった時の記憶を取り戻し、改心しかけた猗窩座(あかざ)に対しての一言)

江本:これが待遇なのかどうかも…

両名:(笑)

五味田:仕打ちに近いですよね。(笑)

鬼舞辻商店の「昇進制度」と「キャリアアップ」について

江本:続いて、昇進制度。結構シンプルですよね。

画像7


江本:上弦、下弦それぞれ壱から陸まであり、数字の若い方が上と。
そして、上弦の壱~陸は113年入れ替わっていない。じゃあ、昇進するためには(キャリアアップするためには)どうしたらいいか?というと…

▼キャリアアップの方法
・階級が上の鬼と勝負して勝つ
・無惨様の血をもらう(しかし体がもたない場合は…)
※ただし柱を倒しても評価はされない

江本:…これ、キャリアアップなんですかね?(笑)

五味田:いやキャリアアップだと思いますよ。
力増しますからね。僕が鬼ならもらいたくなります。

江本:しかしまあ、血をもらうと死ぬこともあると。

五味田:そうですね、体が耐えられない時ですね。

スライド2

江本:あと注意点は、柱を倒したからといって評価をされようと思うと逆に怒られます。

五味田:ああそうですね、怒られてましたよね。

江本:無限列車のあとにね、猗窩座さんが「煉獄(れんごく)さん倒したよ!!」って言いに行ったら…

画像2


五味田:
そうですね(笑)
これも評価項目が明確じゃないんですよね。
柱倒したらどうとかないんで…あれはちょっと猗窩座さんかわいそうでしたね。

江本:ねえ、がんばって倒したのにね。

五味田:煉獄さん、いい人やったんですけどね…

【『鬼滅の刃』から学べるポイント② 組織の心理的安全性について】
組織のパフォーマンスを上げる要素の1つに、誰に何を言っても拒絶されることなく、罰せられる心配もない状態「心理的安全性」があげられます。実際にGoogleが調査した結果によると、心理的安全性の高いチームは、離職率が低く、収益性も高かったという特徴があったそうです。(参考記事はこちら


鬼として出世するにはどうしたら良かったのか


五味田:
今振り返ってみたら、鬼としての出世の道も一応見えますね。

江本:見えます?!(笑)
どうしたらいいんですか??

五味田:いやいや、太陽を克服すると目的が分かってれば…

江本:ああーー…

五味田:そのために動いてたらよかったんですよね、きっとね。

江本:確かにそうですね、でもそういうと誰もそのために頑張っていなかったですね…

五味田:そうなんですよ!だから自分の過去のトラウマを忘れて、なんとなく目の前の人を食っていた…みたいなね。まあ、あんまりよろしくなかったですね。

江本:では、人材育成制度はあるかというと、ここはやっぱり特に見当たらなかったですよね。

五味田:そうですねえ…

江本:まあ強いて言えば「血を分けてあげるよ!」みたいな。

五味田:あとは人をたくさん食べていたら「前より強くなったね!」みたいな承認はしていましたね。

鬼舞辻商店「採用力」は高かった


江本:最大の強みはここだったのかもしれないですけど、採用力はあったと思うんですよね。

五味田:ああ、そうですね。

江本:採用力という言い方がいいかはわからないんですけど…。
結局、人間社会に絶望感をMAX感じて、人間に対する恨みがMAXになった人を「キミ、鬼にならない?」ってスカウトして。
上弦の鬼たちみんなそうでしたよね。下弦もそうかもしれないですけど。

画像9

五味田:ああ、そうですね。上弦は特にそうですね。

江本:その絶望感がでかいほうがやっぱ強かったですかね。

五味田:まあ(その方が)血を受け入れられたんでしょうね、きっとね。

江本:現代にもありそうな話ですけど、育成などは完全に放棄して、採用力のみで組織を拡大運営していくような企業体質だったと。

五味田:そうですね。

江本:まあそういう会社も減ってくるでしょうね。

五味田:そうですね…やっぱり情報が行き渡りやすいですからね。
あれは舞台が大正時代なので。
「無惨やべえww」みたいなのは掲示板に書き込まれないですからね。
書き込まれたらたぶん入らないですよね。
「いや、前掲示板で見たんですけど鬼はちょっと…」みたいな。

江本:(笑)

御社は大丈夫?鬼舞辻商店から学べること


江本:
総じてまとめると、こういう感じですかね。

・社長が超人的。その実力により、大きな影響力を時代の中でもった、一大オーナー企業である。
・幹部も超人的。実力をもつものがスカウトされてきているのも強み。
・圧倒的ワンマン、かつ、あまりにも怖い
・強固な組織体制を維持するものの、社長の「鬼でも太陽の下で楽しく暮らしたい」というビジョンは共有されておらず、強さを極めることを求める者(例:猗窩座さん)しか生き残れない会社であった

五味田:まあビジョンが共有されていなかった…というところが結構大きな問題かなというところで…

江本:そうですよね。だから最終よくよく考えたら…珠世さんでしたっけ?

五味田:ですよね、珠世さんに「ちょっと太陽の下に行きたいんだけど…」っていえば済んだ話じゃないかなと思って。

江本:そうですよね(笑)

五味田:人間化の薬とか作れるわけですから。
たぶん作れたはずです。

江本:そうですよね、求める人物像が違ってましたね。
これ副社長くらいに入れたらよかったのでは…

五味田:これ本当にそうで、やっぱ結局珠世さんが自分の言うことを聞かないというか、支配下に置けなかったわけじゃないですか。
支配下に置けなかったから憎い!ということで。つまり、会社でいうと「言うこと聞かない幹部」なんです。

画像10

(言うことを聞かないどころか、復讐まで果たしてしまう珠世さん[左コマ・上])

江本:なるほど、要するに無惨さんからすれば、他の鬼は全て思考もとにかく全部把握できて、何でも言うことを聞くと。ただ、珠世さんだけ強要できなかった。

五味田:そうなんです、だから支配下から逃れたから「こいつムカつく」っていうことで。実は重宝しなかった人が一番できたという…。
もういっこ言えば、次に生まれた、支配下に置けなかった鬼が禰豆子ですよね。

江本:あー、そうですよね。

五味田:禰豆子も本来それを取り入れればよかったということで、やっぱり自分の言うことを聞くだけの人を集めていると、それはそれでうまくいかない、ということですね。

江本:なるほど、非常にこれ現代の組織運営に非常に参考になる…
鬼舞辻商店の事例から色々と学ぶことができますね。(笑)

五味田:勉強になりましたね。(笑)

――次回は、主人公・炭治郎が所属する「鬼殺隊」を徹底分析!どうぞお楽しみに!

【『鬼滅の刃』勝手に分析シリーズスピーカー】
◆江本亮
株式会社学生援護会(神奈川)出身。
2005年より求人メディアがASPにて安価で早く提供できるシステム「ジョブメーカー 」にて自社サイト・オウンドメディアによる採用成功を支援、構築実績はこれまで200社以上に及ぶ。「反響があがる求人広告・求人メディア」をテーマに、「indeed対応の自社求人サイト構築システム」の開発などを手がけている。

◆五味田匡功
ソビア社労士法人 創業者兼顧問
クリエイトマネジメント協会 代表取締役
2007年に会計事務所在籍中に社会保険労務士、中小企業診断士に同年度合格。その後、会計事務所内での社内ベンチャーとして社労士事務所を立ち上げ、独立。Wライセンスを活かした人事・労務の設計だけでなく、多数の企業のサポート経験を活かしたビジネスモデルの改善サポートも実施している。また、補助金・助成金申請の仕組化にも注力し、企業支援実績は3,000社を超える。2020年3月に自身が立ち上げた社労士事務所を事業承継すると同時にクリエイトマネジメント協会を承継し、温故知新の精神で既存事業を継続的に実施しつつ、新規事業においても働く人の心の健康を取り戻すべく躍進中。

◆日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)について
https://jws-japan.or.jp/
“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織。中堅中小企業がより良い会社を目指すための概念・指標をまとめ、21世紀のモデルケースとなるような素晴らしい会社を称賛し、公表していくことで経営者、従業員にとっての道しるべ「ホワイト企業指標」を生み出すこと、および改善すべきポイントに適切な経営アドバイス、研修、講習を提供していくことを活動目的としています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?