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[スタートアップ人事向け]-年次有給休暇の設計〜前編


年次有給休暇の設計とは

年次有給休暇の設計という言葉はあまり聞かないかと思います。
しかし、年次有給休暇は法令の定めもあり、IPOを目指すスタートアップは、特にコンプライアンスの観点から運用面含め設計をしっかりとすることが重要です。

以降の文章では、年次有給休暇の設計をシンプルに考えるために、週5日勤務する従業員(多くの場合は、正社員と呼ばれる従業員)を対象として記載いたします。パート、アルバイトなどの有期雇用契約で週5日未満の勤務の場合などは若干異なることもありますので、その点はご留意ください。

年次有給休暇の設計については、前編、後編およびスタートアップ向けの実際の設計の3回シリーズで記載したいと思います。

  • 年次有給休暇の設計〜前編

    • 年次有給休暇に関する法令の理解

    • 年次有給休暇の設計ポイント

  • 年次有給休暇の設計〜後編

    • 経営、従業員、人事担当者の視点からの年次有給休暇の設計ポイント

      • 会社/経営の視点からのメリット、デメリット

      • 従業員の視点からのメリット、デメリット

      • 人事担当者(勤怠管理/勤怠集計/給与計算)の視点からのメリット、デメリット

  • 年次有給休暇の設計〜スタートアップ向け実際の設計

年次有給休暇の設計〜前編

年次有給休暇の法令の理解

労働基準法第39条で、年次有給休暇の付与、取得、年次有給休暇の取得時の賃金額について定められています。

  • 年次有給休暇の法令(ざっくりとした理解)

    • 入社日(雇入れ日)から6ヶ月継続的に勤務した場合

    • 全労働日の80%以上勤務した場合

    • 10日の年次有給休暇を付与しなければならない

    • 以降、1年ごとに定められた日数の年次有給休暇を付与しなければならない

    • 付与日から1年以内に5日取得させなければならない

以下、年次有給休暇に関する法令の一部抜粋となります。

年次有給休暇の付与

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

労働基準法第39条1項

取得義務(年5日取得義務)

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

労働基準法第39条7項

年次有給休暇取得時の賃金額

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

労働基準法第39条9項

年次有給休暇の設計ポイント

さて法令を理解したところで、年次有給休暇の設計ポイントは以下となります。

  • いつ付与するか?

    • 最初の付与日をいつにする?

    • その後の付与日をいつにする?

  • 何日付与するか?

    • 法令通りの日数を付与するか?

    • 法令以上の日数を付与するか?

年次有給休暇をいつ付与するか?

法令上は、入社日(雇入れ日)から6ヶ月後に付与をすれば良いです。
したがって、多くの会社は入社後6ヶ月後に付与する会社が多いかとは思います。
ただし、年次有給休暇の設計ポイントとして考えなければならないポイントは、最初に付与する日、その後の付与日と2つの視点から考える必要があります。

最初の付与日として考えられるのは、以下のパターンとなります。

  • (法令通り)入社日から半年後に付与する。

  • 入社日に付与する

その後(翌年以降)の付与日として考えられるのは以下のパターンとなります。

  • (法令通り)入社日から1年半後に付与する。

  • 一斉付与

最初の付与と、それ以降の付与はそれぞれ、独立した検討事項となります。(最初に入社日に付与したからと行って、その後一斉付与にしなければならないわけではありません)

年次有給休暇を何日付与するか?

法令上は、入社日(雇入れ日)から6ヶ月後に10日付与をすれば良いですが、年次有給休暇の設計ポイントとしては、以下のパターンが考えられます。

  • (法令通り)初回10日付与

  • 法令以上に付与する

おわりに

「年次有給休暇の設計〜前編」では、年次有給休暇に関する法令と検討ポイントを記載させていただきました。
「年次有給休暇の設計〜後編」では、それぞれの検討ポイントについて、「経営」、「従業員」、「人事担当者」の視点から考えていきたいと思います。

年次有給休暇に関する参考資料

以下、厚生労働省の資料が参考になります。

厚生労働省-労働基準関係リーフレット「次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

厚生労働省-「年5日の年次有給休暇の確実な取得〜わかりやすい解説

※掲載は不定期となりますが、楽しみにしていただければ幸いです。
個別ご相談は jinji@hrbp.info までご連絡ください。

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