ヤソヒラ

詩やトンチキな日記を書いています。 少しでもわたしの詩が伝わると嬉しいです。

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マガジン

  • 詩集「アンプル」 収録作品(一部)

    処女詩集「アンプル」に収録した作品の一部を掲載しています。

  • ヤソちゃんの朦朧日記

    異界と現界の淡いに生きております。

  • 詩集「詩的エクトプラズム」収録作品(一部)

最近の記事

「シン・エヴァンゲリオン」 〜檻を後にした日〜

シン・エヴァンゲリオン。 鑑賞し終わりました! これが「万感」……。 と言った具合で綾波ばりにぽかぽかしております。 この文章は鑑賞後すぐに書いておりますので、エモーション優先で取り留めのない物になるかと思いますが、どうぞご勘弁ください。 ※ネタバレが含まれますのでご注意ください。 今作は観客、その中の1人である私、そしてこれは私の想像に過ぎませんがエヴァンゲリオンに向き合い続けた庵野秀明という人が、長年囚われ続けてきた『檻』から解放された作品だったと感じました。

    • 2020年 7月10日「エミュレートの話」

      最近、友人Kと話をした。 K「しっかし、部屋の掃除ってのはどうしてああもめんどくさいんでしょうね」 八十平「そりゃあれですよ。他にもやる事が山ほどあるからじゃないですかね」 K「そうかもしれんね。僕の部屋で特に散らかるのがね、パソコンの裏。もう凄いの」 八十平「そりゃうちもだ。配線やら何やらね」 K「そうそう。僕なんかはもうどんな惨状になってるのか怖くて三年は見てないですよ、パソコン裏」 八十平「そりゃあんた、もう誰か住んでるよ、そこ」 ゲラゲラゲラ。 といった

      • 「サムと僕」

        朝、 目が覚めると僕は整理のなっていない 屋根裏にいます。 昨日の夜はこむら返りになってしまって 痛くて痛くて、悲しくもないのに泣いてしまいました。 足にはもう痛みはなくて、 朝はいつもと変わりません。 いつもと変わらない朝だから、 僕は外の犬小屋まで寝巻きで歩き出します。 小屋の前まで来ると、 サムは僕の手を舐めに来るために 素早く立ち上がります。 僕はサムがいつも好きでした。 彼はとても賢くて強いから 憧れていました。 とても会いたいです。 サムは少しくすんだ白

        • 「ふるさと胸中」

          わたしは今 すぐさま立ち返って、 ふるさとの冬を描きたい。 わたしの知る中で一番冷たくて わたしの知る中で一番血に馴染む。 ここが嫌いなわけじゃなくて、 とりわけあの町が好きなのだ。 町に残った旧友が 誇らしい。 少し悪いと思っている。 わたしは置いてきてしまったから。 あの町で働いて、生活をしている。 今感じていなくても、 間違いなく町を支え、 繋いでいるのは彼らで、 決してわたしではない。 わたしが町の子どもだったこと、 誰が覚えているのだろ

        「シン・エヴァンゲリオン」 〜檻を後にした日〜

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        • 詩集「アンプル」 収録作品(一部)
          10本
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          32本
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          2本

        記事

          2020年 5月4日「緩い地獄の話」

          月曜日。 〈地獄の日々の始まりやな〉という先輩の声から仕事が始まる。 地獄。嗚呼、地獄。 私はどんな罪を犯したのだろう。 きっと沢山の罪を犯したのだろうが、大概気付いてはいない。 たまに気付けば自らを責め立てたり、言い訳をしてみたり。罪の顔を見ない様にする。 そうして地獄を作るのだ。 地獄というものは〈罪の意識〉という炎で脳漿がぐらぐらと煮えるだけの現象だ。 他の誰にも見えやしない。 今日は祝日で休みだ。

          2020年 5月4日「緩い地獄の話」

          2020年 4月18日「尻尾の話」

          朝目覚めると尻の付け根に妙な感覚に気付いた。 ボウっとする頭のままでまさぐるとなんとも手触りのいい毛並みがそこにあった。 毛並みのいい尻尾だった。 〈もうダメだ〉と思い会社の上司に休みの連絡を入れようとしたが、社用携帯のディスプレイには〈土曜日〉と表示されていたのでそのままもう一度眠ることにした。

          2020年 4月18日「尻尾の話」

          「熱に浮かれて」

          誰があの夏の歌を口ずさんだのだろう。 そんなことを 春の月のせいで思い出す。 畦道に一人佇み、 そっと聞き耳を立てる。 違う。 これはあの歌じゃない。 小川にかかる古い橋の上。 そう、これかもしれない。 でもまだ遠くて。 どうしても手が届かなくて。 猫じゃらしを撫でる。 耳元でゆっくりと、何度も。 少しずつ、目の前が狭くなる。 近いはずで、同じはずなのに 離れてゆく気がした。 月夜。 少し紅く輝く。 いつだってあの月という奴は 確固たるものだ。 そのく

          「熱に浮かれて」

          「ノスタルジー」

          ノスタルジーは簡単に人を殺せるんだ。 今ここにいて、昔自分がいた場所がある。 ぼくは一旦、現在を全部捨てて 過去を吐き出すために彼女を連れ出した。 ぼくが昔、根城にしていたお化け屋敷に。 ぼくはまるで 一週間飲み続けた後の早朝の様に 吐き出し続けた。 彼女だって負けなかった。 お母さんのこと、 お父さんのこと、 栗のこと、 杉の木から飛び散る胞子のこと、 上から見つめた犬のこと、 はじめてのセックスのこと、 小石を拾ったこと。 全部を全部吐き出した。

          「ノスタルジー」

          2020年 4月13日「町と自動販売機の話」

          昨日の夜中。もしくは今日の朝方。 日清カップヌードル シーフードのスープを飲みながら思った。 〈腹が減った〉 こうなってはいつもの如く、コンビニで何か買うか。 しかし、私にはもう一つ選択肢がある。 クリーニング屋に赴く、という選択である。 わたしはイヤフォンをはめ、財布を携えて家を出た。 焼きおにぎり、焼きそば、ハンバーガー、チーズハムサンド、たこ焼き。 耳の中では「君は天然色」がいつもと変わらない調子で流れている。 クリーニング屋はわたしの住処から歩いて10

          2020年 4月13日「町と自動販売機の話」

          「ground」

          淀んだマンションの足元。 番犬の吠える声。 立ち上る濃い空の水子。 誰かの不機嫌が 私の影を踏んでいて、 足が上がらない。 縫いとめられたパペットを 想う。 未来は重い。 目を覚ましたはずだというのに、 不吉に囚われたまま 瞼には夢がぶら下がっている。 今日の雲は役立たずで、 陰気を孕んで群れているくせに、 太陽を隠そうとはしない。 ここにいつまでも居られない。 だからといって、 今は何処へもいける気など 全くしない。 だけれど、 ここは私のマン

          「ground」

          「メニー」

          卓上のフラスコに、 三億の記憶。 誰が蒔いた種かは知らない。 咲き誇る花を摘み続けるのは、 何に対する罰なのだろうか。 言い渡されたのは随分と昔のことで 思い出せない。 また、フラスコが私の元へ来る。 哀れ。 なんと哀れか。 権利は剥奪され、 価値は消え失せた。 もう君を買えるのも 私しかいない。 こんなに安く 売った気もないだろうに。 三億の記憶。 一纏めに手掴みにして、 一(または私)に還す。

          「メニー」

          「終末旅行」(少女らの終末旅行に寄せて)

          あなたがここに居てよかった。 何もかもに意味が生まれた。 ゆらりと風に吹かれ 髪をはためかせるような 稲穂を想える。 あなたがここに居て良かった。 一番恐ろしいことから遠ざかる。 暗い洞窟より、何もない。 私の声すら飲み込むような孤独を 想うことができる。 あなたがここに居て、 本当に良かった。 有限を知ってしまっても、 あなたとなら 私は終わって行ける。

          「終末旅行」(少女らの終末旅行に寄せて)

          「今が苦しい友達へ僕から」

          恥を知らずに言ってやろう。 いとしい友よ。 失くし難い友よ。 今君に牙を突き立てた人生。 君の頭を無下に濡らすその雨。 針のむしろの如き幾多の目。 君の心を無残に引き裂くその声も。 それは一つの表情で。 今は機嫌が悪いんだ。 そしてその痛みを僕も知っている。 せめてこの魂だけでも 君の隣に座らせておくれよ。 肩を並べさせておくれ。 僕らは学ぼう。 自分の声の聞き方を。 なんせまだまだ先は長い。 その声は酷く小さく、 途切れ途切れで、 その上ロクなことを言わな

          「今が苦しい友達へ僕から」

          「暮れの色は水色の」

          目に見えない その羽ばたきに焦がれる。 今日はもうあの川縁さえ 霞むようで、 ランプに灯したはずの火の 行方を探すこともやめてしまった。 ぼくがシオカラトンボだったなら。 どんな明日もやさしいはずだった。 黄色い花園を忘れることはなかった。 ぼくは時を捨て、 機械を拾う。 窓辺にとまった キミには目もくれず。

          「暮れの色は水色の」

          「シミ」

          詩が外気に触れる。 シミが 少しずつ拡がる。 愛すべきシミが。 そこのあなた。 いいからこの詩を買いなさい。 何が変わるかって そんなの 私の知るところとお思いか? ただこうはいえますよ。 この詩をあなたが読むのです。 この詩はあなたの目の動き、 あなたの割いた時間、 あなたの心の揺らぎを その内に染み渡らせるのです。 思ってもみなかった? それは上々。 ほら シミが拡がる。 愛すべきシミが。

          「シミ」

          「ホリデイ」

          死にかけの灰の先で 君の墓標の窪みをなぞる。 背中に触れるその指が消える日が 来るものだとは思っていなかった。 そんな頃の私。 私を呑気だと言ったね。 その先には何も無いと 知っていて そう言ったのかい。 だったら君は悪い人だ。 夜の境界線が消える。 背後から見つめる熱が。 当然のように止む雨が。 分かり合えたはずの夏が。 私の朝を作っていたのだと 今になって知ってしまった。 墓標の窪みを灰で撫でた。 君の指先は思うよりずっと 優しかった。

          「ホリデイ」