「ground」

淀んだマンションの足元。
番犬の吠える声。
立ち上る濃い空の水子。

誰かの不機嫌が
私の影を踏んでいて、
足が上がらない。
縫いとめられたパペットを
想う。

未来は重い。
目を覚ましたはずだというのに、
不吉に囚われたまま
瞼には夢がぶら下がっている。

今日の雲は役立たずで、
陰気を孕んで群れているくせに、
太陽を隠そうとはしない。

ここにいつまでも居られない。
だからといって、
今は何処へもいける気など
全くしない。

だけれど、
ここは私のマンションでもないし、
犬は嫌いで、
汗ばむことは鬱陶しい。

誰かの気分なんてどうでも良くて、
人形はもう捨てた。

時に質量などあるはずもなく、
私の目は確かに開いていた。

天気などどうしようもないのに、
なぜか故郷を思い出す。

いつまでもここには居られない。

だからせめて、
夢の様に遠い場所へ行くと決めた。

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