フリッタータと言えなくて
「洋風卵焼きみたいなもんですね」
ホットケーキとパンケーキ
「要は、ホットケーキやろ」
大学生のころ、パンケーキが大流行した。当時、私はこの言葉を何度口にしたか思い出せない。そのくらいパンケーキを愛したていた友人に、このキツイ言葉を浴びせていた。
「連れてってあげるから食べてみ。食べたら違いが分かるから」
当時初めてパンケーキを口にしたとき、私はそれをホットケーキと表現したことを恥じたくなった。具体的に何が違うのかは分からないとはいえ、家庭のホットプレートで焼かれたホットケーキとパンケーキには大きな違いがあった。
フリッタータと言えなくて
さて、私は当時に比べれば幾分、料理をするようになった。しかも、異国でカタカナの。そんな料理を試して、アレンジしては宿のお客様に提供するようにもなっている。
たとえば、フリッタータ。パスタやら野菜やらを卵に混ぜて焼くイタリアの家庭料理だ。
「これなんですか?」
「洋風卵焼きみたいなもんですね」
私はお客様と最初このような会話をしていた。それはフリッタータと一般的でないカタカナで話すのが、恥ずかしかったから。また「伝わらない」という怖さがあったから。
異国のカタカナを使ってみる
ただ、レシピ本やレシピ記事をみるようなると、見聞きしたことのないカタカナに惹かれている自分に気が付いた。つまり、洋風卵焼きではそのレシピを開かない。でもフリッタータとあれば、ついついそのレシピを覗いてしまうということである。
自分の知らない料理の正式名称は常に私の興味を喚起してやまないのだと知った。そんなことを思ってから、お客様との会話も、
「これなんですか?」
「フリッタータを真似た料理です」
と答えることにしてみた。すなわち、なじみのある表現で例えるのを二の次にしたということである。
疑問に対して私が「洋風卵焼き」と返すとき、それは簡単に相手の理解を得てしまう。でも聞きなじみのない言葉を使えば、疑問が疑問を呼ぶらしい。
「フリッタータって何?そもそもどこの料理なの?」
そんな会話には、
「イタリアの人は、前日の余ったパスタを入れるらしいです」
「実はパスタの代わりに素麺を使ってまして」
素麺とフレッシュバジルのフリッタータ風
フリッタータがくれた時間
確かにすぐに答えが得られないという非効率的な問答なのかもしれないが、このような会話があってこそフリッタータとは何か?をより深く理解できるのではないか?なんて思う。
そして何よりも大切なのは、お客様との会話が増えることだ。
正直フリッタータが何か?については、ネットで調べりゃ答えはそこにある。だからこそ、この非効率的な会話が発現したという事実こそが、会話の中で正式名称を持ち出す最大の価値といえる気がしてならないのだ。
ホットケーキとパンケーキ。
この違いがあるからこそ、私は友人と食事に行くという時間を得た。
フリッタータと卵焼き。
この違いはこれからもきっと私とお客様の時間を作ってくれる。
ーーー
さてさて、先日パンチェッタを仕込みました。てか、パンチェッタとベーコンって何が違うの?
うーん、まだこれは百歩譲っても塩豚かな。
もう少し熟成が必要なようです。
今回のフリッタータやパンチェッタのレシピはこちらから↓
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