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【詩】夜とイルカ

『夜とイルカ』

仄暗い部屋の隅
一息ついて横たわった思考が
夜の静寂(しじま)に澱んでいく

幽々たる意識の底
どこまでも沈んでいけそうな水の重さに
身を委ねるのは早すぎる

闇夜を照らす月光が 水平線を教えてくれる
このまま沈んでしまったら 忙しい朝に溺れてしまう
浮上したい 泡沫(うたかた)の安息

乗り越えた苦労を忘れて まだ泳いでいたい
噛みしめた喜びを抱いて まだ藻掻いていたい
息の続く限り 私が途切れる前に

イルカたちは唄う 今日を生きた私への鎮魂歌
水面(みなも)を蹴りつけ 微睡みの方へ
しなやかな曲線が 私の抵抗をするりと抜ける

サヨウナラ おやすみなさい

今日という一生が終わり
明日という人生が始まる

サヨウナラ おやすみなさい

鎮めていく
溺れていく

サヨウナラ

おやすみなさい

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仕事を終え、家事を終わらせ、束の間のひととき。
その時間が1日の中で唯一自分の時間と呼べるもので、すぐには眠りたくないと思ってついつい夜更かししてしまいます。
そんな夜とイルカ。
Night and Dolphins
ナイト エンドルフィン
この自由な時間を堪能したい私の意識を鎮める、夜とともに現れる睡眠という名の強力な鎮静剤。
そんなイルカに攫われたら、あっという間に朝を迎えてしまいます。

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