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オープン2年目、赤字続きの喫茶店がお客さんでいっぱいになったワケ その➁

結果が出せるコンサル、出せないコンサル

地元では超有名洋菓子店のパティシエが開いた喫茶店。
平日は地元のお客さま。土日は市外・県外からのお客様もお越しになります。

ちょうど、今ご主人と夏季限定のこのお店でしか提供できない、スペシャルメニューを開発中です。
ご主人が、去年のコンサル支援を教えてくれました。

去年、田中さん(コンサル)の指導では、夏から秋にかけてジェラートを売ることでした。
なんか、自分でもしっくり来なかったけど、今は店も忙しいし、やる気がめっちゃ出ています。
「夏はジェラートが売れるから、ジェラートに力を入れる」「9月すぎてもジェラートは売れるので、マロンやパンプキンの味を作れ」
こんなアドバイスでした。

 普通すぎます。こんなアドバイス、素人の意見と変わりません。


経営支援のフレームワークの罠

 コンサルの田中さんは、面識があり仲良しです。
田中さんは、就職氷河期を経験し、希望の職種や業界でないブラック企業に就職。何年もこんな会社に勤めていられない、として、一念発起して中小企業診断士の資格を取得。
そのあと、独立して個人事務所で診断士一本で勝負しているナイスガイです。

 でも、残念なことに、飲食や食品の経験・知見がまるでなかったのです。

 ターゲット、セグメント、ポジショニング。事業者の強みを見つけてより強化。そして情報発信。
こんな、診断士が多用するマーケティングの視点、経営改善のフレームワークに落とし込んで分析していったことが、透けて見えてきます。

 「手作りジェラート」。喫茶店ではなかなかお目にかからない、このメニューをウリにして、シーズンの味を展開して売上を上げる。

 こんな風に、田中コンサルは考えたのでしょう。
しかし、ご主人の「腹落ち」も悪く、やってみたけど、効果がありませんでした。


ジェラートは強みではない。

”喫茶店の主人が作る、手作りジェラート。” 
田中コンサルはこれが強みだと考えたのでしょうが、私は全く強みと思わなかったのです。

その理由は、
①ジェラートは、季節のフルーツを使用して、100%手作り。
 だが、それは看板商品のフルーツパフェのフルーツのロスの活用である。
➁ジェラートは、家庭用のジェラート製造機で作っている。
 味、食感、数量の点で限界がある。
③手間がかかりすぎ。ストックの場所がない

単純に言えば、ジェラートの品種を増やせばフルーツのロスも増える。ジェラート製造機の生産能力が高くないので、手間がかかりすぎる。仮に店が暇な時間にジェラートを作ってもストックしておく場所(冷凍ケース)がない。一見すれば、すぐにわかるので、私だったら”ジェラートは強みでなはい”と断言します。

仮に、「ジェラートが美味しい喫茶店」とするのであれば、ジェラートのおいしさ、品種、見せ方、提供方法をレベルアップする方に振り切るい方向に私だったら提案します。

 ・・・そもそも、その場合投資が必要なので、「ジェラートメイン」の提案は私は絶対やりません。


真の強みを見つけられることがコンサルの価値

 私はご主人のパティシエの経験や、看板商品(フルーツパフェ)から、
強みは「季節のフルーツによるデザート」と設定しました。

 地元超有名店のパティシエですから、季節のフルーツのこだわりはハンパじゃありません。そして、仕入れルートや生産者情報も熟知しているはずです。
 ご主人に確認するとその通りでした。

その日仕入れた、新鮮なフルーツでパフェを作る。
3日も経てば、品質が劣化するので、そのフルーツでジェラートを作る。

とすれば、どう転んでも”ジェラート”がメインになることはないはずです。

私は、「フルーツパフェ」を全面に押し出すことを提案しました。
フルーツパフェには、そのジェラートが2種類入っています。
しかし、そんな商品の特長は、メニュー表はPOP、どこにも表現されていません。

「季節のフルーツパフェ」
(季節のジェラート付き)好きな味を2種類選択できます。

これをしっかり表現するようにし、単独のメニュー表とPOPを作りました。

たったこれだけ。メニュー表をPOPを変えるだけで、
「季節のフルーツパフェ」(ジェラート付き)は、お店にとって真の看板商品となったのです。


真の価値を見つけられるセンスとは

 このお店の場合、田中コンサル(中小企業診断士)とフードコーディネーターががっつり入り、1年あまり改善活動を続けていましたが、残念ながら成果が出ていませんでした。

 田中コンサルやフードコーディネーターの支援は、フレームワークの罠にはまっているようなもので、その道のプロであるご主人にとって、田中コンサルやフードコーディネーターのフレームワークにはめるだけの支援では心動かす支援ではなかったのです。
ご主人の心が動かないため、売上アップにつながりません。


食品製造、飲食の場合、こんな悲しい支援をよく見聞きします。
この場合、良いコンサルと良くないコンサル、
この差はセンスだと思っています。

そのセンス、もって生まれたものではなく、
圧倒的な量の知識と体験・経験から生まれるものです。

ちなみに、私はかつて、イタリアにジェラート修行したことがあるため、
「ご主人のジェラートにウリになるほどの強みはない」と瞬時にわかります。一方で、「生フルーツを使ったデザートづくり」が強みになるのでは?と見えてくるのです。

経験や体験ができなければ、知識でカバーすればよいのです。
センスがない、センスを身に着ける努力ができなければ、
他人の支援はやってはいけない、と思います。

田中コンサルには、ストレートに言えませんが、
「飲食、食品の支援があったら、手伝うよ」とだけ伝えています。

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