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【星のアダム 第3話 -振り向けば君がいた-】

「私はApeca(アペカ)。あなたの身の回りのお世話をするAI搭載型人形109号です。」

僕の目の前にいる白い卵のような機械は何度も同じ自己紹介をしている。

「分かった。分かったから黙っててくれ。」

さっきまでは自分一人でいるのが心細かったが、

こんなうるさい機械が一緒なのも嫌になるものだ。

「で、その…アペカだっけ?君は何でここにいるの?」

「それは先ほどお話ししたように、あなたのお世話をするためです。」

「そうじゃなくて。何で君しかここにいないのかって聞いてるの。近くに開発者とかいないの?それにー…」

ここで僕は気付いてしまった。

機械が喋るなんてことは、ちょっと前までならありえなかったことだろう。

でも最近はこういった端末を他の電子機器、それこそ家庭用電気と接続するだけで、一声命令すれば何でもしてくれる時代になった。

だから会話が成立すること自体はさほど驚かなかったし、そのことに気付いて固まったわけではない。

問題なのは、何故記憶のない僕がこういった知識を持ち合わせているのかということだ。

その違和感に気づき、僕は改めてその機械アペカに聞いてみる。

「アペカ、もしかして君は僕のこと知ってるかい?」

もしかしたら、このアペカとやらは僕のことを知っているのかもしれない。

だから、僕も無意識にその知識が備わっているのだとしたら。

しかし、その期待も虚しく終わった。

「いえ、ぶっちゃけあなたのことは大して知りません。」

しかもぶっちゃけられた。

最近の機械はルーズな言葉も使うのか。

AIも日々進化しているということか。

「でも、あなたの情報はインストール済です。そのため身の回りのお世話はお任せください。」

訂正。やっぱり機械は機械だ。

今僕がして欲しいのは身の回りの世話じゃなくて、現状把握だ。

「あーもう!誰かいませんかー!?」

「ハイ。私がおります。私はApeca(アペカ)。あなたの身の回りのお世話をするAI搭載型人形です。」

「だから、お前じゃないってば!」

こうして、僕らの物語が始まった。

いや、始めざるを得なかった。

だって

「呼んだー?」

返事をしてやってきたのは宇宙人だったからだ。


【次回はこちら↓】


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