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#バトル
Knight and Mist-interlude-オーセンティックサイド
書斎のような部屋に独り坐し、深峰戒は深くため息をついた。
「なんなんだこのクズな世界は!」
力任せに棚を殴り、上に置いてあるものを薙ぎ払う。物が落ちてガシャンガシャン、と音が鳴った。
「私は私の役割を果たしているはずだ! なぜあんな小僧ごときに笑われなければならない……!」
ドサッと椅子に座る戒ことオーセンティック。
その前にすうっと何者かが姿を現した。
「《冥王《ヘルマスター》》」
Knight and Mist十章-9騎士と霧
「あなたの気持ちは分かりますが、これはそういうので引き受けるものではないですよ」
もう決定していることに異を唱えることは難しいのでは、そんなことを考えながら、ハルカはセシルを見た。
勇者だけが入れると噂のバー《キタフィー亭》にて。
目の前には鴨鍋が煮えていて良い香り。おだしといとこんとネギのハーモニー。
だがおあずけをくらって話題はハルカが魔導の力を得るかどうか。
そう、魔導師になれるの
Knight and Mist第十章-8鴨鍋と魔導師ライセンス
そこでカンカンカンカーンとグラスを叩く音がする。それまで思い思いに喋っていたみんなが静まり、グツグツと鍋が煮える音だけが聞こえる。
知る人ぞ知るバー《キタフィー亭》にて。
でかいテーブルにスループレイナの姫とその婚約者、スループレイナの大貴族3人、勇者、レティシアとスコッティ、デシールの女将軍イーディス、そしてセシルとハルカが座っている。
全員がなんだろう、とグラスを鳴らした宮廷楽師イスカゼ
Knight and Mist第十章-2湯けむりファンタジー風呂
「わーい! 温泉、温泉!」
王都でも一番大きな広場に面した温泉を前にして、テンションが上がるハルカとキアラ。
それは大理石でできたテーマパークのようで、完全にレジャー施設。たぶん古代ローマ帝国のテルマエみたいなものなのだろう。
王都は水道もちゃんとしてるし、水洗トイレだし、みんな風呂好きで清潔なので現代人のハルカにとってはありがたいことであった。
そしてこの温泉。現代で言うところの水着を着
Knight and Mist第九章-9拷問部屋で
拷問部屋は鼻や目にツンとくるような異臭と汚臭がして、吐き気を催した。
鉄錆のおぞましい器具の数々、吊し上げるための滑車のついた装置、小さな檻、鉄の棘がついたなんだかよく分からないもの、トラバサミのようなもの……それらが血をかぶって存在していた。
そんななか、ロープで天井からぶら下げられ、気絶しているらしいセシルを発見した。
背中は皮膚が裂けていた。何がおこなわれたのか、ハルカにはさっぱり分か
Knight and Mist第九章-8 囚われの螺旋
衛兵から服を拝借し、代わりにキラキラマントを着せて。
「よし、準備はいいぞ。上だ」
衛兵姿のスコッティとともに階段方面へ大股で歩き出す。
何やらアンディが大声で騒いでいるのが聞こえる。周囲がなだめ慌てているようだ。
「アンドレア嬢、なかなかの役者じゃないか。この役は彼女にしかできないな」
スコッティが苦笑まじりに言う。ハルカも同意する。
「アンディが助けてくれてよかった。あとはイスカゼ
Knight and Mist第九章-7人生はやりたくないことでできている
「魔導ではない魔術は初めて見たわ。オーセンティックとかいう無礼者、跡形もなくってよ」
アンディが関心したように床の焦げを踏みにじりながら言った。イーディスとレティシアは苦笑い。
「今後はあなたたちのような攻撃にも動じない結界を作らなくてはね。三階分登っての奇襲とは、また無茶な作戦だわ。お里が知れるとはこのこと」
「まあ、うまくいったんならいいじゃねーか」
適当に答えるイーディス。一方レティ
Knight and Mist第九章-6オーセンティックは企むのがお好き
「申し遅れました、私、異端審問院・特別顧問のオーセンティックと申す者。以後お見知りおきを」
オーセンティック、日本人名は深峰戒。どういうわけか魔族の権能を得てオーセンティックと名乗っている。
対するアンディは、扇で顔を隠してしまった。そっぽを向きガン無視体制だ。
「姫君、これはどういうーー」
少し戸惑うオーセンティック。
「私が答えましょう」
言って前に出たのは、キラキラマント一団の隊
Knight and Mist第九章-5ミッションスタート
「それで、どういうことですの!!」
来るなりアンディは応接間のテーブルにバン! と両手を叩きつけた。
異端審問院の代表として現れたのはおかっぱ頭の男であった。
「どういうこととはどういうことでしょう。我ら侍従一族が王家を、ひいてはイスカゼーレ、そして国を守るためにしていることですが」
おかっぱ頭の男は特に感情のこもらない言葉で答えた。
「だから、たかが召使い風情がなんでそんな偉そうなのか
Knight and Mist第九章-4みっしょんいんぽっしぶる?
「あらためて見上げるとデカい建物ね……」
「建物っていうか、塔だな……」
ハルカとスコッティが見上げて口々に言った。
「このどこにいるんだろう?」
「塔の地図はイスカゼーレから入手した。あとは上手くいくかだな……」
そして見るキラキラマントの一団。
ちなみにスコッティもキラキラマントを羽織っている。ハルカはアンディから借りたガチの貴族のお姫様ルック。
「いいか、我々はモンド様の遣いで
Knight and Mist第九章-3 作戦会議
「そういうわけで。王家の立場としては、セシルが元テネブラエの一員で、情報と引き換えに無罪放免にしたーーこの取引のことを異端審問院に知られたくないの。たまにきなくさいところに潜入捜査もしてもらってるから」
アザナルが慎重に言った。
「逆に言うと、異端審問院から見ればきなくさいはなしだらけの男ってなわけだ。あのクソ野郎は」
イーディスがふーん、と足を組みソファにもたれかかり腕を頭の後ろで組んだ。
Knight and Mist第九章-2 スループレイナ王国の歴史 後編
「で、なんで今になってもまだ異端審問院が権力持ってるわけ? ガイア派は潰しちまったんだろ?」
イーディスの問いに、アザナルが眉間をもんだ。
「また魔王が復活して、それを止めたのがあたしたちなのは知ってるでしょ」
一同うなずく。
「そのときに暗躍してた組織があったの。秘密結社テネブラエ」
アザナルが言い、モンドがつづきを話す。
「一度目の魔王は自然発生的なもの、政治の混乱による人心の乱れ
Knight and Mist第九章-1 スループレイナ王国の歴史 前編
「ことの始まりは、ガイア派の弾圧からだーー」
重々しく語りはじめたのはモンド・デ=ラ=モンロー。
王立魔導院で官僚を育成する旧家、その宮殿で、ハルカたちは王家の歴史を、ひいてはセシルの囚われた異端審問院とはなんなのかを聞いていた。
豪奢な部屋にいるのはハルカ、イーディス、モンドの妹アンディ、アザナル、キアラ、キラキラマントのクールシトラス、語っているモンドもキラキラマント、そしてスコッティと