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#短編
【短編】日曜日のピザ
要るもの、要らないもの、要るもの、要るもの、要らないもの。手元で手早く分けると、要るものは引っ越し用段ボールの中へ、要らないものは燃えるゴミと不燃物にさらに分け、ゴミ袋の中へと押しこんでいく。
二人でディズニーランドに行ったときにおそろいで買ったコップは「そっちで要るかどうか判断して、要らないなら処分して」と、卓郎が仕事をしているパソコン机の上に置いた。
彼はかたちのよい眉を細めて「うーん」と
【短編】のこされたもの
取り壊しの決まった祖父の家に、早季子は自分の車に乗ってひとりでやってきた。祖母がさきに他界したあと、五年も一人暮らしを続けてきた祖父が、この春に亡くなり、誰も住むもののいない古ぼけた一軒家は、親戚一同で協議した末、つぶしてしまうことになったのだ。
早季子は30歳の誕生日を迎えたばかりだったが、去年看護師の仕事をストレスから休職して、両親の住むマンションに居候していたところだった。祖父の遺品を片づ