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【人と人の関係】イヤな同僚と職場(第2話)里山での出会い

A氏は今、職場が嫌でたまりません。
やりたい放題の同僚B子さん。B子さんを放任する支店長。それに不満を持つ後輩のD君。
これまで、真摯に仕事に取り組んできたA氏もため息が増えて、一度やめたタバコをまた、吸い始めるようになりました。

1. 馬との出会い

ある春の日、日頃ストレスが溜まっているA氏は、奥さんの提案で、ご家族で鎌倉、逗子、葉山と海岸づたいに家族でドライブにでかけました。
「にほんの里100選」にも選ばれた、葉山町上山口集落の棚田を背にしてたたずむ人気のお蕎麦屋さんで、窓から見える棚田の風景をみながら、久しぶりに家族で美味しくお蕎麦を食べたました。

そばや

お蕎麦を楽しんだあと、付近を散歩した際に、偶然、2頭の馬、タロウとルーカスに出会います。

「あっ!馬がいる。」

タロウとルーカス3

小2の娘さんが馬に向かって駆け出し、「?」と思ってその方向を見たら、そこに2頭の馬が静かに立っていました。
A氏はその馬の姿をみた瞬間「!! えっ、なんで? いきなり馬? 葉山牛は聞いたことがあるけど。葉山に馬?」
その非日常の光景に驚いたそうです。

もっと驚いたのは、その2頭の馬たちが娘さんに静かにゆっくりとお辞儀をして、娘さんの方へ静かに歩いてくる光景でした。
自分よりも遙かに大きな生き物を相手に、以前からずっと友達だったかのように、嬉しそうに頭をなでている娘さん。

娘さんは普段、もの静かで言葉少なめ。感情を表現するのも控えめ。親であるA氏夫妻でも、娘さんがなにを考えている分からない時があるそうです。

2. 人との出会い

娘さんが馬の頭をなでていると、白いポロシャツをきた男性と、娘さんと同じくらいの女の子が「こんにちは。」とニコニコしながら坂の上から降りてきました。

その女の子が、「馬にこんにちはを言うときは、こうやってやるんだよ。」と、そっと馬の鼻にむかって手を伸ばし、手首を下げて、優しく匂いを嗅がせて、馬へのこんにちはを教えてくれました。

A氏の娘さんが教わったとおりにやると、2頭の馬が鼻を近づけてきて、娘さんの手の甲をペロペロ舐め始めました。
教えてくれた女の子と娘さんは、これもずっと前からお互いに知っていたかのようにキャッキャ言いながら、馬とふれあっています。

男性:「いい光景ですね。」
奥さん:「ええ、ほんとに。」
A氏 :「こちらの馬は人なつっこいんですか?」
男性:「ん~。時によりけりですね。」
奥さん:「時によりけりって、馬にも機嫌のいいときとか悪いときがあるんですか?」
男性:「え~と、その反対です。人の側のそのときの『気持ち』しだいです。」
奥さん:「え?それじゃぁ、人間の機嫌が悪かったら馬も機嫌が悪くなるんですか?」
男性:「ん~。馬には人の機嫌そのものはあまり関係ないでしょう。」
奥さん:「・・・なんかよく分かりません。(^^; すみません。でも、この光景は本当に素敵です。娘のあんな心からの笑顔はここしばらく見ていませんでした。」
A氏:「・・・」

3. 旅の入り口

A氏はまた、日常に戻ります。
相変わらず、職場にいくと憂鬱になってしまいます。胸が詰まります。

AM:1030
B子さん:「ねぇ支店長。私の通勤手当のことなんですけど、私の家からだと電車通勤よりも車で通勤した方が都合がいいんですけど、そうすると今の通勤手当では足りなくって。」
支店長:「あ、そうなの?じゃ車通勤にかえてもいいよ。足りない分は、まぁ、社内規定の範囲内で増額できるよ。」
B子さん:「ありがとうございます。でも、それでも駐車場とか借りるちゃうと、ちょっと足りないかも。それにうち、車が一台しかないから他の家族が使っている時もあるし。」

A氏 (心の声):「電車より車が便利?当たり前だろ、でも皆、電車で通勤してるよ。単なるわがままだろ!支店長もなんだ!規定の範囲内で増額する? 馬鹿も休み休み言ってくれよ!」

このあと、A氏は、耳を疑うような二人の会話に直面します。

支店長:「あ、そうなんだ、じゃ、社用の軽自動車一台、B子さん用に使っていいよ。そうしたら駐車場借りなくてすむじゃん。それに通勤手当は今までのままでいいよ。」
B子さん:「えぇぇ、いいんですかぁ?」
支店長:「あぁ、いいよいいよ。他にもなにかあったらいつでも言ってね。B子さんはいつも本当によくやってくれるから。」

A氏、無言で席を立ち、喫煙所に行きます。
先に来ていたD君:「今日のB子さんの香水・・・。僕、きついです。あの胸の開き具合も。あれ、見えちゃいますよ。」
A氏 、タバコを長ーく吹かしながら:「すまん、なにも言わないでくれ。タバコを吸わせてくれ。」

D君(心の声):「オフィスで何かあったな。Aさん。 僕ももう一本吸ってから帰ろ。」

A氏の我慢はそろそろ限界に達しています。

そんなA氏にさらに追い打ちがあったそうです。

普段、B子さんとはあまり口をきかないA氏。
そのA氏に・・・。

PM:1630
B子さん:「Aさん、この書類、目を通しておいて下さい。問題なかったら明日、支店長に出しておいて頂けませんか?」
とA氏のデスクにポンとおかれました。
A氏(心の中) :「ん?」
書類を受け取って、さっと目を通し、それはB子さんが自分で支店長に決済をもらうべき書類。自分にとっては直接関係の無いこと。
これに「目を通せ?」、「明日、支店長に出せ?」、「しかもお前、これ、提出期限が切れているじゃないか!」

A氏は心の中で、もう抑えきれなくなりつつある怒りのマグマが、噴火しそうになっていることに気づきました。

PM:1730
B子さん:「じゃ、お先に失礼します。支店長、ありがとうございます。」
支店長:「はい。お疲れさまでした。」

A氏(心の声):「おい! おいB子。
お前の書類をチェックしている私に、なんの一言もないのか。
お前の書類を見るために、俺は残業しなければならないのか。
おい支店長!お前の脳みそ、どうなっているんだ?大丈夫か?」

PM:1740 10分後
支店長:「じゃ、私も帰るか。」

A氏 :「・・・」

D君がなにか言っていたようですが、
もうどうでもいい。A氏も静かに席を立ち、帰宅しました。

自宅の玄関前に立ったとき、珍しくなにやら賑やかな声が中から聞こえます。
A氏:「ただいま。」
娘さん:「お帰りなさい。タロウとルーカスに会ってきたんだよ。これ、タロウとルーカスの蹄だよ。こうやって置くと魔除けで、こうやって置くと幸運を招くんだって。パパに1つあげる。お仕事の机においてね。」

と言いながら、喜んで馬の蹄を上に下にかわりばんこに立てて見せてくれます。
奥さん:「最近、あの子が塞ぎ込んでいるから、今日、ちょっと学校をお休みして、こないだのお馬さんの所へドライブに行ってきたの。(^^; 横横(横浜横須賀道路)を使って片道30分だった。意外にすぐ行けたよ。」

A氏 :「そうかぁ。それは良かったね。良かった良かった。」
奥さん:「あら?なんという心の広い一言! ありがとう。」
A氏 :「楽しんできたみたいだね。」
奥さん:「すごい楽しかった。そして癒やされた。 あなたも今度一緒に行こうよ。ジョインアップしようよ。タロウとルーカスに。」
A氏 :「ジョインアップって?」
奥さん:「馬と人が絆を結ぶこと。 でも言葉よりもやってみるのが一番いいよ。あなた、今日も会社で何か嫌なことあったんでしょ。こんなに早い時間にケーキなんて買ってきて・・・。」

A氏 :「・・・」

奥さん:「・・・ よし!明日も行こう! 明日も子どもは学校休み。あなたも会社休み!」

このようにA氏の旅の入り口は開かれました。


4.3 イヤな同僚と職場(第1話) ストレス

目次:馬に訊いてみよう!






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