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読書感想文『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

皆さんも、一度や二度は海外に憧れたことがあると思います。私も、そのひとりです。一番は日本文化が大好きなんですが、その一方でそれはそれは海外に憧れまくりました。

憧れの海外!

憧れの国際結婚!

憧れのハーフの子どもたち!

憧れの、憧れの、憧れの…

とにかく、海外生活に憧れ、国際結婚に憧れ、ハーフの子たちの日本人とは異なる可愛さに憧れて、憧れて、憧れて生きてきました。

まぁ、単純に外国文学や文化、歴史や宗教などの物語や史跡が好きだったということと、外国の人って最高にクールでスマートでオシャレで、いい!!建物もいい!!日本みたく同調圧力の強いことが無いのもいい!!自己主張していいのいい!!といった単純人間だった訳ですが…

この本を読んで、海外生活に対する憧れが打ち砕かれました。なんというか、自分の国以外で生きるという事や、自分の国以外の人と生きるという事や、日本人としてある事について、それはそれは頭を殴られながら、現実を突きつけられました。

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私の中で「海外に住む」ということは「自由度の高いとってもクールでオシャレなこと」と同意義でした。中学生の頃にはオーストラリアに行く機会があり、日本の奥ゆかしさとは違う、目の前の若い子たちがきちんと自分を持って(いるように見えて)いて、堂々としている姿がとってもキラキラして見えたのです。

それに、テレビやネット、雑誌などでファッションやインテリア、トラベルのコンテンツをみると、素敵な旅行先やファッション、建物、自分とは違う考え方があり、それも魅力的でした。

だから、ホームステイという"守られた環境"での海外体験しか知らない私にとっては、人種差別問題や宗教問題、また国民性や国柄、土地柄、そして確執など、知識として知っていても、それはそれ、これはこれと、少し横にズラした風景が見えていただけだったのかと思います。

それは、私がよく言う"外国人"という括りが何を意味し、理解しているようで理解していないことがどれだけ多くあったのかということも、私の心にめちゃくちゃ重くのしかかってきました。

この本には、国際結婚した著者が、夫と息子の3人家族でイギリスに住むなかで体験した事や、日本に帰国した著者が日本で体験した出来事など、息子を通して垣間見る、自分が自分であることの難しさや、他人を他人として受け入れる難しさがあり、そこで生きること、アイデンティティーについて、様々な出来事を通して考えた事が書かれています。

タイトルを見て「あ、人種差別問題とかそういう内容かな?」ぐらいは思う人がいると思いますが、それだけではなかったです。

この本が本屋大賞ノミネート作品だというのも納得ですし、多くの世代、多くの人に読んでほしい本と紹介されるのも納得です。

一人の少年が、自分とは"異なる"友だちと接するなかで、何を考え、様々な問題を抱えた人たちとどのように過ごし、また母である著者が何を体験し、考えたり、痛感させられたのか。

ぜひ、自分は幸せだと思っている方、私と同じように海外に憧れる方、自分は様々な問題に意識を向けていると自負している方など、そして、そもそも海外に興味が無い方など、様々な方に読んでもらいたい一冊です。

海外にいるからとか、日本から出ないからとかは関係なく、個が個としての尊厳や在り方をどう考え、どう接し、生きていくのか、そして、"大人になる(大人である)"私たちは、どうすべきなのか、何を伝える事が大切なのか。

多様性が認められる時代になりつつありますが、"多様性が認められる"という事の意味を、もう一度深く深く、考えてみてはいかがでしょうか。

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