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気兼ねなく旅行できるようになったら訪ねて欲しい日本の図書館15選

最初は趣味で、今は連載エッセイ「図書館ウォーカー」(陸奥新報で毎週火曜日に掲載)の著者として、日本全国の図書館を訪ねてきました。

その数、今のところ250館以上。中にはいわゆる「公共図書館」「公立図書館」にはあたらない図書室や図書コーナー的な施設も含んでいますが、とりあえず連載でご紹介しているのは一部を除き原則「旅行者でも無料で利用でき、所蔵書籍が読める」施設(またはスペース)に限っています。

図書館ウォーカーはあくまで旅エッセイで、旅のアクセントとしての図書館を描いています。もちろん図書館そのものの啓蒙にもつなげたいので元公共図書館員としての専門的な視点も交えていますが、あまり難しいことを考えずに図書館という存在に想いを馳せて欲しいし、実際に旅行先で図書館に行ってみて欲しいと思っています。

また個人的な意見ですが、図書館訪問を旅先の街歩きプランに盛り込むと効率的にその街の空気感や日常を味わえるような感じがするんです。図書館が「地元の人たちのための施設」だからでしょうか。錯覚なのかもしれませんが。

というわけで、コロナが収まりつつある今、来たるべき「旅行OK」の時の再来を間近に控え、これまで実際に訪ねた図書館の中からみなさんにおすすめの館をご紹介したいと思います。

ちなみに、これらの館は「旅人目線」から選んだものだったり、独断と偏見でいいなと感じたものだったりするので、必ずしも「図書館として高く評価されている」「業界で有名な」館とは限りません。よく話題になる入館者数や蔵書数、または蔵書や図書館機能そのものの質とかについてはあまり評価の対象にしていません。

その館に至る道程が面白いとか併設の施設も楽しめるとかいう「アウト・オブ・図書館」の部分の評価なども含んでいますのであしからず。

美深町文化会館COM100図書室(北海道)

チョウザメの養殖で有名な道北の美深町にある巨大な文化施設がCOM100。図書室自体もすごく広々としていて過ごしやすいですし、無料で展示が見られる郷土資料室も併設。こちらの充実ぶりもすばらしいです。観光的にはJR宗谷本線美深駅も見どころ。2階は廃線になった美深線の資料室になっていて、1階ではおみやげなども売っています。ちなみにこの駅の中にも小さな図書スペースがあって、電車待ちの学生が時間をつぶしていました。

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新冠町レ・コード館図書プラザ(北海道)

ことあるごとに触れているレ・コード館。日高山脈や太平洋が見渡せる絶景展望塔(無料)や100万枚のレコードをはじめとした音楽資料の数々が楽しめる中心施設レ・コード館(一部有料)、ご当地みやげが購入できる道の駅などが併設されたスペックてんこ盛り図書館。図書館本体自体は小ぢんまりしてますが、とにかく展望塔は行って!上って!見て!

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田子町立図書館(青森県)

にんにくと肉の町、田子の市街地と田園地帯のボーダーラインに建つ、ホールなどとの複合施設「タプコピアンプラザ」内。のどかな風景の中にひときわ映えるコンテンポラリーなデザインです。かなり複雑な建築で、何度か訪れていますがまだ全貌が解明できていません(笑)。町いちおしのご当地グルメフルコース「ガリステごはん」など食を堪能した後、腹ごなしに街さんぽしつつ訪ねて欲しいです。

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大船渡市立図書館(岩手県)

水戸市立西部図書館や由利本荘市のカダーレなど、数々の図書館名建築を手がけた新居千秋設計による傑作「リアスホール」内にあり。市民文化会館との併設です。複雑でシャープなカットがなされたファサードは強い日差しの下でこそ輝く。ぜひ天気の良い夏の日に訪ねてください。図書館内の独特の構造も面白いですよ。人がいつも集まっていてにぎわいがあるのもこの施設のすばらしいところ。

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只見線駅文庫・会津川口駅(福島県)

会津川口駅は、言わずと知れたトップ・オブ・ザ・ローカル線の一つJR只見線のメイン駅の一つ。ここの駅待合室に設置してある小さな本棚が只見線駅文庫。パッと見、どこにでもある電車待ち時間用の本棚に見えますが、ここの独自性は「次においでの際に返却を」と旅行者でも借りられるところ。文庫はもう一つ、会津柳津駅にも設置してあるそうです。駅ではご当地おみやげも購入できますし、駅周辺は食堂もあるし只見川や山々の景色も楽しめます。

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阿賀町公民館津川分館図書室(新潟県)

高台に建ち、眼下を流れる阿賀野川の絶景が楽しめる小さな図書館。昔の民家風のつくりになっていて、誰でも上がれる縁側状のスペースから川と山の景色が見えるんです。複合施設「ふるさと交流川屋敷」内にあり。訪問時は気づきませんでしたがひょっとしたら1枚目の写真の真ん中にある展望塔みたいな部分に上がれるかもです。もういっぺん行かねば(笑)

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滑川市立図書館(富山県)

外観はいかにもお堅い公共施設風ながら、富山湾や立山連峰が見える飲食可能の休憩コーナー、公園の緑を間近に感じられる屋外テラス、2階カウンターのコーヒー販売など、居心地爆上げなポイントがてんこ盛り。すぐそばに建っている市民交流プラザ内にも子ども図書館があり、地上6階相当の高さの360度展望コーナーに公衆浴場「あいらぶ湯」とそちらも要注目。少し歩いた先の海の近くにはいわゆる「古い街並み」もあります。滑川、熱い!

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下呂市立金山図書館(岐阜県)

JR高山本線飛騨金山駅から徒歩十数分、高台の上に建つ複合施設「金山市民会館」内。図書館は明るくきれいで、小さいけど居心地がいいです。金山の街は「筋骨」と呼ばれる迷路のような細い道路網が見どころ。また飛騨川と支流の馬瀬川の合流地点が駅の近くにあり、川と山の織りなす絶景も魅力。

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青梅市中央図書館(東京都)

JR青梅線河辺駅からすぐ。図書館自体もきれいで居心地良いのですが、ここの魅力は他にも3つ挙げられます。同じビル(河辺タウンビルB)の上階に日帰り温泉「河辺温泉梅の湯」があること、図書館のある駅東口のペデストリアンデッキの美しさ、そして駅から少し歩くと広がるちょっと昭和な街並み。河辺駅に来るまでの中央線・青梅線の車窓風景もいいですよね。

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兵庫県立図書館(兵庫県)

つい先日、お隣の旧明石市立図書館の屋上に死体が・・・というミステリみたいなニュースで話題になってしまった兵庫県立図書館。県立なんですが県庁所在地神戸市ではなくそのお隣の明石市にあるんです。JR明石駅からすぐの広大な明石公園の一番高い場所に建っています。緑豊かで池とかもあるので散策だけでも楽しめますし、通りがかりのおじさんによれば晴れている日は高台から海の向こうに和歌山のほうまで見えるらしい。館内では郷土資料室の蔵書がすごくてたっぷり楽しめます。

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出雲市立海辺の多伎図書館(島根県)

もう館名からしてそそる、その名の通り海のそばに建っている図書館。やや高台のJR山陰本線小田駅から10分ほど下りてきたところにあります。海に面した部分にバルコニーテラスがあり、潮風に吹かれて読書という夢の時間が過ごせます。今度は時間をとって、テラスから見える半島状の「シーサイド運動公園」にも行ってみたい。

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宇和島市立簡野道明記念吉田町図書館(愛媛県)

どう見ても図書館に見えない寺院風の建物と、目の前を流れる川を渡る小さな橋が魅力の図書館。もともと書架のある閲覧室は地階風の1階にあったそうですが、平成30年7月豪雨(通称「西日本豪雨」)で浸水し、2階に移動して再開館。個人的には吉田町ののんびりしたややレトロな街並みもおすすめなので、ぜひJR伊予吉田駅からゆっくり歩いて訪ねて欲しいです。

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諫早市立たらみ図書館(長崎県)

南相馬市立中央図書館も手がけた寺田大塚小林計画同人による南欧リゾートレストラン風の建物が楽しい図書館。館内探索も楽しそうですが、何よりもすぐ横にある大村湾の絶景。運が良ければスナメリが泳ぐ姿も見られます。と言うか、僕は見ました。JR長崎本線喜々津駅からかなり歩きますが、行って絶対に損はないです。

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杵築市立図書館(大分県)

坂の多い街として有名な杵築の「古い街並み」の中にある図書館。街のレトロな雰囲気を壊さないようなデザインになっている他、館内も図書館として様々な工夫が凝らされていました。フリースペースにはバーカウンターみたいなものもあって、いろいろイベントもできそう。裏にある竹林も美しいです。バスなどを使っても絶対に徒歩で坂を上らなければいけない立地になっているので、必然的に街歩きもできます。

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延岡駅前複合施設エンクロス(宮崎県)

ここはTSUTAYA図書館で有名になった株式会社CCCが運営管理する駅直結型施設です。例によって書店やカフェが併設ですが、構内に誰でも無料で利用できる図書室があるんですね。ここは上で紹介した会津川口駅の駅文庫とは逆で、貸出はしていません。新聞も所蔵し、独立した棟にあり2階構造なのもこの手の図書コーナーとしては出色かと。延岡市街地中心部はJR日豊本線延岡駅から歩いて10分ぐらいの離れたところにあるので、街さんぽの前後の休憩や観光情報の収集なんかにぴったりです。

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というわけでした。何度もご紹介済みの館もありマンネリ感を持たれた方もいらっしゃるかと思いますが、旅の思い出を振り返りながら特に良い時間を過ごせた図書館をピックアップしてみました。北東北在住なもので必然的に西日本の訪問館が少なく、まだまだ旅のついでに訪ねてみたい図書館がたくさんあります。

この記事で「そういう図書館の楽しみ方があるんだ」「別に旅行者でも行ってもいいんだ」「いろんな図書館があるんだなあ」なんて感じていただけると嬉しいです。なんにせよ、早くまた旅に出たいですね。

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