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猫の気持ちが分かるとは…

昔、付き合っていた裕ちゃんのこと
わたしは寵愛を受け、特別扱いされていた
いつも膝の上に座らされ、髪を撫でられていた

あるとき
裕ちゃんのお父様はある著名人のお友達で
お父様から得た情報をわたしに教えてくれた

ある著名人の話が出たとき、思わず
「裕ちゃんのお父様って、おいくつ?」と質問した

会話の流れから
裕ちゃんは次男で、お兄様とはかなり歳が離れ
お兄様の奥さまは約20歳違う、元モデルらしい

裕ちゃんの高校時代の武勇伝まで聞いて
「あの事件の関係者だったの…」

自分の顔から表情がこわばるのが分かった
どんな巡り合わせで、こうなったんだろう
男性は容姿や学歴じゃないと教訓になった

裕ちゃんは高層のホテル住まいだった

「住む世界が違う」血肉や心が凍結して
裕ちゃんといるのが苦痛になり、逃げることを考え
ホテルの窓枠に三角座りをして
どんなに名前を呼ばれようが動かなかった

急速に恋愛熱は恐怖へ墜落する

窓枠に座るわたしを裕ちゃんがお姫様抱っこした
「やめて!」と叫び
裕ちゃんの腕から転がり落ちたとき
猫の気持ちが心底分かった

靴を履きながら、荷物を引ったくるように取り
部屋を出て
エレベーターを待つ間に捕まったとき
「タダじゃ済まない」と怯え、その場にしゃがんだ

それまでは溺愛されていたのに
捕まった瞬間から、全ては力尽くで
太ももに残った大きな内出血を見たとき
「警察に行ったら水掛け論になるのかな」

うちのなっちゃん(猫)に、わたしは優しい
あんなことで
猫の気持ちが分かるとは予想打にしなかった

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