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ペトリコールの共鳴【あとがき】

『あとがき』を初めて書く。

これが読まれているのは、
まだ見ぬ6月なんだと感慨深い。

日記やエッセイ、雑記に必要ない「あとがき」を、小説では初めて書いてみる。
理由はいくつかあるが、その一つは、
普段は表に出さない創作への自分の思いや考えを、
率直に表現したいと思ったからだ。


わたしは、ハムスターを主人公にした小説を書きたいという夢を抱いていた。

きっかけは、
ホームセンターで見たキンクマハムスター。
あどけない姿を眺めていると、
幼なじみが可愛がっていたキンクマを思い出した。

幼なじみが飼うキンクマは、
とても賢くて愛らしいハムスター。
朝になると、幼なじみのベッドまで起こしにきてくれたり、気に入らない餌を与えると抗議したり、
喜ぶとカーテンに登って遊んだりしていた。

表情豊かで喜怒哀楽を動作で表現する姿に、
いつも癒されていた。

肖像権もクリアし、小説を書き始めた。
今は願いを叶えて満足している。


小説のテーマについて。

SNSを通して見えてくる孤独や社会問題を書きたかった。

そして、わたしは従来の「感情移入」とは異なる、
読者に「共感」してもらうような作品を目指した。

従来の感情移入は、
作品の内容に自分の経験や感情を重ね合わせ、
共感することで生まれるもの。

一方、私が目指した共感は、作品の内容を通して、人間の本質や生き方について、読み手と一緒に考えられるもの。

ハムスターが主人公だと、
読み手には感情移入されないリスクは承知で、
他人の感受性を掴みにいくのが、
わたしの目指す、感情移入。

そもそも、万人受けする主人公や物語はない。
仮に夏目漱石の『こころ』も万人受けするとは思ってない。

人の心や経験、生きてきた環境などは異なり、
感性は千差万別。
空前の大ヒット作と言われた映画もわたしには
ヒットした理由がピンと来なかった。


わたしは最初からミステリー部門でエントリーする気でおり、不完全犯罪を書く。
伏線は事実と真実の違いを物語にしようと考えた。

世の中はマスコミとネット民が真実を作りたがる。
事実を知らなくても『真実優先型』だ。

ミステリーやオカルト、ホラーは殺人だけじゃなく
自分の物差しで、他人の事実や価値観を成敗する不気味も怪奇(グロテスク)なのではないか。

プロットは最後が「希望」で締めようと考えた。
最後の着地点を決めてタイトルをつけた。
タイトルは
具体的なもの+漠然としたものにしたいと、すぐに
「ペトリコールの共鳴」とつけ、
嫌な記憶を封印(大前提)→
現在→回想(前提)→
現在進行形(結論)の三段構成で描いた。

登場人物のキャラクター設定は、
キャラクターがブレないように実在する人物を思い浮かべ、
「Aさんならこれを言うだろう」 

キンクマは聡明なキャラクター。
キンクマの飼い主である幼なじみと
わたしが『八百万の神』と慕う
この2人の思考を検証して作り上げた。

洞察力があり、素直で冷静な判断を下す。
時に厳しい。
嬉しさは大輪の花のような笑顔を浮かべるキンクマ像を練っていった。

実在する人物は、
詐欺や監禁に遭った経験はない。
「でも、もしピンチに直面したら」
心理描写をするのに惚れるかもしれないほど、
これまでの会話などを丁寧に浮かべていた。

物語の主要人物である愛羅は、
わたしが学生時代に実際に会った男性がモデルで、彼の外見は魅力的な人物だったが、同時に
アンモラルで複雑な性格も持ち合わせていた。

一緒にいるとトラブルに巻き込まれる様子で、
わたしは不用意に近寄らなかった。

愛羅(相田梨子)は、彼の側面を創作の中で
わたし独自が展開させた。

遥香のモデルはわたしの友人。
伊集院秀麿さんのイラストで、一番友人に似ている画像を使用させていただいた。

わたしの家族や親族、
前職、お客様からきいた故人の話も参考にした。

わたしの祖父は抗がん剤治療で脱毛し、
毛糸の帽子を被り、足の爪が剥けてしまい、
スリッパを履いていた。
家族の誰かが付き添い、身体を摩っていた。

わたしの友人は、
バイト先で倒れ、地域の主要病院では手がつけられないと大学病院へ搬送された。

就職活動中の健康診断に引っかからず、
でも既にガンは全身へ転移していた。
それも奇病で当時は症例数があまりない、
「あえて言うならガン」と告げられた。

ベッドではなく、床でのたうちまわりながら、
周囲を威嚇し、泣き叫び、嘔吐し、
足の痛みを床に打ち付けていたという。

わたしはその頃、祖父や手術をした叔母の様子しか知らなかったので、
友人のご両親に呼ばれて直接詳細を聞き、
それがガンだと知っても実感が湧かなかった。

倒れて2週間後、友人は他界した。
あと1ヶ月半で大学の卒業式だった。
わたしが見た現実、外気を忘れるほどの悲嘆。

訃報は外で聞いた。
サツキで出来た垣根へうずくまり、
ハンカチで口元を塞いで泣き声を抑えた朝。

遥香の闘病生活をリアルに描写することで、
命の尊さや家族の絆の大切さを伝えたいと考え、
ただ、悲惨さを強調するのではなく、
残された家族が前向きに生きていく姿を描き、
読み手に希望を与えられるような作品を目指した。


あとは……。

伏線を回収することで、
物語に深みを持たせるだけでなく、
語り部をタツジュンとキンクマの二方向から、
犯罪被害者の苦痛(主観)とその家族の苦悩(客観)を
読み手と考えられるような作品にしたかった。

この小説を通して、読み手に「共感」という
体験を提供できたらいいなと望んでおり、
今後も、読み手の心に響くような作品を書き続けていけるよう文章の練習を重ねたい。

小説を書いたあとは、viewがガタ落ちした。

週に2〜3回投稿した雑記のviewと、
毎日投稿した小説のviewなら、雑記がviewを稼ぐ
それは織り込み済みで小説を書きたかった。

書いている時は本当に楽しく、
今は続編のプロットを書いている。
普段なら不快で傷つくかもしれない言葉が
自分でも不思議なほど、心へ入ってこなかった。

「書くって夢中になれる」

約5万字をご覧いただきありがとうございます!

©️ももまろ 2024/05/30

・:*+.伊集院秀麿さん.:+
毎度お世話になります
伊集院さんのお陰で最後まで華がありました
ヘッダーは作品の趣旨などを素早く伝える手段で
わたしにとって妥協できない部分です
文章は頭に入ってこなくても
ヘッダーで喜怒哀楽を感じて欲しいと願うからです

本当にいつもありがとうございます!


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