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著…宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』
お料理にまつわるエッセイ本。
ただし、空腹を激しく刺激する内容ではありません。
心をホッと満たしてくれる家族愛のことを綴った本だからです。
この本を読んでいると、自分の心がいかに飢えていたか気づかされます。
特にご家族とのエピソードが素敵。
テーブルの上に手紙が載っていた。むすめの字だった。一通はサンタさんへ。寒くて遠いのにありがとう、と書いてあったので、こっそり大きなハートマークを描いて返信とした。もう一通はママへ。だいすきなママ、お仕事がんばってね、サンタさんにママへのプレゼントもたのんでおいたよ、とあった。翌朝、むすめが嬉々として、ママにはどんなプレゼントが来た? と聞くので、ママはもう一生分のプレゼントをもらっちゃったんだよとむすめを抱きしめた。プレゼントは今、にこにこ笑って目の前にいる。
「今日ね、授業中にがんばって手を挙げてみたらね」「うん」「挙げた瞬間に、当てられたの」「うん」(中略)「すっごくどきどきしたの。勇気出したの。でもね、答え、ぜんぜん違ってた……いっぱい笑われた……」(中略)「おめでとう。これで失敗ポイントが貯まったね」 むすめの小さな頭を撫でる。「失敗ポイントがたまると、今夜のごはんのリクエストができるんだよ。なんでも好きなものをつくってあげる」
なぜでしょう。
こうしたエピソードを読んでいると、わたしはつい泣けてくるのです。
ああ、きっとこのおうちの料理は心を込めて作られていて、愛情という名のスパイスが沢山入っているのだろうな、そしてそういう料理を食べた子どもはすくすく育つんだろうな…と思いながらこの本を読んでいると、どうしても涙が溢れてきます。
なお、わたしは福祉の仕事をしており、親が子どもに食べ物を与えていないケースや暴力をふるうケースにも何度も遭遇しています。
だからでしょうか…。
出来るなら、全ての子どもたちがこんな風にあたたかな家庭で育ち、美味しいお料理をお腹いっぱい食べて、ちょっと失敗しちゃってもぶたれたり殴られたりしないで、優しく頭を撫でてもらい、ぎゅっと抱きしめてもらえるような、そんな世界になったら良いのに…。
〈こういう方におすすめ〉
優しい雰囲気のエッセイを読みたい方。
〈読書所要時間の目安〉
1時間前後くらい。
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