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編…ヒューバート・ヴェナブルズ 訳…大瀧啓裕『フランケンシュタインの日記』

 やっていいことと悪いことがある。

 そのことに気づかせてくれる小説です。

 死んだ人間の細胞に人工的な刺激を与えるといった、生命倫理に触れるような実験をもともと行っていたヴィクトール・フランケンシュタイン。

 ヴィクトールはエリーザベトという女性と出会い、エリーザベトのこと以外は何も考えられなくなり、結婚もして、これから人間らしい幸せを掴むと思いきや…。

 残念ながらその幸福は束の間。

 エリーザベトは突然亡くなってしまいました。

 それを機に、ヴィクトールは狂気の世界へと解き放たれてしまいます。

 死体を手に入れては繰り返される実験、実験、実験…。

 ヴィクトールが死体の腐敗を食い止めようとしたり、脳の蘇生を試みる研究をしたことから、「ヴィクトールは最終的にはエリーザベトを蘇生させたいのだろうか?」と、読み手としては少し同情も覚えてきます。

 しかし、何の罪もない他人の子どもをさらって、その母親が取り乱して我が子を探していると知りながら、その子を殺して解剖し、その子の脳を使って怪物に仕立て上げ、その子が泣いていても己の行いを正当化し、神様にでもなったかのように「わが被造物」なんて呼ぶのだから、やはりヴィクトールはクズ中のクズ。

 「いや、あなたは何一つ造り出してなどいないよ。殺して切り刻んで繋げただけ。ただの異常者だよ」とわたしはヴィクトールに言ってやりたい!

 やっていいことと悪いことの線引きの大切さに気づかせてくれる小説なので、わたしは定期的にこの本を読み返しています。

 自分勝手なことをしたり、驕り高ぶらないようにという、自分への戒めとして。

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