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著…エドワード・ゴーリー 訳…柴田元幸『優雅に叱責する自転車』

 深読みすればするほど味わい深くなるエドワード・ゴーリーの世界観を存分に楽しめる作品。

 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
 未読の方はご注意ください。



 もしかしたら浮遊霊の物語かもしれません。

 この『優雅に叱責する自転車』は。

 クロッケーの鎚でお互いを叩き合っていたきょうだいの前に、突然誰も乗っていない自転車が現れて、きょうだいを連れ去っていきます。

 行き先はこの奇妙な自転車次第。

 きょうだいは、移り変わる景色をただ傍観者のように受け入れるばかり。

 不気味なくらい現実感がありません。

 物語は第1章、第2章と続くも、次はなぜか第4章、第4章の後は第7章…とおかしな展開をしていきます。

 そのうち、きょうだいは、鎚で叩き合っていた時には既に持っていなかったものを「失くした」と気付くのですが、どこでいつ失くしたのかは思い出せません。

 そして、「家だ!」と思ってオベリスクを見るのですが…、そのオベリスクにはこう書いてありました。

 『二人を偲んで173年前に建てられた』

 と。

 きょうだいがそれを読んだ途端、自転車は壊れてしまいます。

 それでこの物語はおしまい。


 …多分、このきょうだいは槌で叩いた打ちどころが悪くて死んでしまったのではないでしょうか?

 子どもらしい無邪気な遊びの中で死んでしまったのか、或いは大人のきょうだい同士何かの理由で争って死んだのかはわかりません。

 この物語にはあくまで「Brother and sister」としか書いていないからです。

 だから、このきょうだいの年齢はわかりません。

 このきょうだいが失くしたものについて、女の方が「14足の黄色い靴を失くした」、男の方が「まだらの毛皮のチョッキを失くした」と言っているので、大人である可能性は十分にあるのですが、二人とも子どもの姿をしているのです。

 だから、本当のことはさっぱり分かりません。

 …もしかしたら、体は大人になっていても心が子どものまんまだから、身内で叩き合ったりするのかもしれませんが…。

 ああ、いずれにせよ怖い。

 書かれなかった章のことも気になりますし…。



 〈こういう方におすすめ〉
 恐ろしいのにどこかユーモアもある、奇妙な世界観が好きな方。

 〈読書所要時間の目安〉
 30分くらい。

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