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著…幸村しゅう『私のカレーを食べてください』

 決して幸福とは呼べない生い立ちの主人公。

 彼女はある日、とても印象深いカレーと出会います。

 それはごく平凡なカレーだったのですが、主人公の心に強烈なインパクトをもって深く刻み込まれました。

 人生を変えるほどに。

 これは、主人公が理想の味を追い求めてカレー作りに夢中になっていく…という小説です。

 ひたすらカレーが出てくるので、読んでいるとモーレツにカレーを食べたくなります。


 小説って、主人公に共感出来るかどうかが重要なポイントですよね?

 この作品の場合、まず、主人公が児童養護施設を出て古いアパートに住み始める時に、

 昭和の雰囲気を存分に味わえるこのアパートは、おんぼろではなくレトロだと思うことにしよう。風呂もレトロ。トイレもレトロ。何もかもレトロ。楽しいではないか。

(著…幸村しゅう『私のカレーを食べてください』P23から引用)


 と考えているので、わたしはその前向きさに好印象を抱きました。

 きっとそのおかげなのでしょう、だんだん、わたしは主人公と友達になったかのような気分になって、この小説を読み進めました。

 主人公と一緒に、カレーのスパイスの種類の多さに驚き、玉ねぎの炒め方、スパイスの調合、ブイヨンの取り方を熱心に研究しているかのような気分になりました。

 共にカレーの名店を食べ歩き、お店ごとに異なるカレーの豊かな香りと味にすっかり魅了され、ああでもないこうでもないと意見を出し、励まし合いながらカレーのお店を開いているかのような…。

 そんな感覚を楽しみました。

 そしてモーレツにカレーを食べたくなりました。

 カレーという料理の持つ中毒性、無限のレシピという広がりに、すっかり心を掴まれました。

 というわけでわたしの今夜のごはんはカレーです。

 わたしはあいにく、自分で自分のためだけのカレーを作って自分で食べますが、

 カレーのことを考えているとき。カレーを作っているとき。自分が作ったカレーを食べている人の姿を見るときーー。
 私の幸せは、いかなるときもカレーライスと直結していた。

(著…幸村しゅう『私のカレーを食べてください』P23から引用)P133から引用)


 と考える主人公と同じように、わたしもいつかは幸せな笑顔で一緒にカレーを食べてくれる相手が欲しいです。



 〈こういう方におすすめ〉
 「毎食カレーだとしても全然飽きないよ!」という方。

 〈読書所要時間の目安〉
 二時間〜二時間半くらい。

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