著…太宰治 絵…今井キラ『女生徒』
10代の少女が朝起きてから夜寝るまでの間に考えたことを綴った小説です。
悲しいけれども美しい、喪失の物語。
※注意
以下の文には、結末を明かすネタバレはありませんが、一部ネタバレを含みます。
ああでもない。
こうでもない。
少女の頭の中で、幾つもの考えが浮かんでは消えていきます。
物思いに耽り、時には妄想の世界に浸ることだってあります。
多感な思春期らしく、ひどく繊細で心が毀れそうな危うさもあれば、傲慢だと言っても過言ではないくらい潔癖な部分もあります。
また、ひどく幼い一面を覗かせたかと思えば、大人びた賢さを見せることもあります。
心が敏感に、そして大きく揺れ動くさまが伝わってきます。
…その中で特にわたしの心を打つのは、少女の父親に対する感情。
少女の父親は亡くなっています。
それを少女はちゃんと理解しています。
なのに、少女はつい、小さい声で「お父さん」と呼びます。
呼ばずにはいられないから。
それに…、少女は父親のことを過去形で語る時もあれば、現在形で語る時もあります。
まるでまだ父親がどこかで生きているかのように。
わたしはそれを読み、「もしかしたらこの子はまだ父親の死を受け入れられていないのかもしれない。そうだよね、きっと誰だって大切な人の死を、本当の意味では受け入れられないよね…。大人だってそうだよね…」と胸が痛みました。
少女が様々なことを考える中で、「お父さん」という言葉は頻繁に登場します。
何度も、何度も。
「お父さん」と呼びます。
たとえ返事が聞こえなくても。
心の中で何度も呼びます。
どこかにお父さんがいないかと、つい探してしまいます。
けれど、どこにも見つかりません。
どこにも…。
…そんな少女の寂しさを慰めるかのように、この本の挿絵には沢山のお花が描かれています。
まるで一輪、また一輪と、お花たちが少女に寄り添ってくれているかのよう。
その優しさが心地よくて、なんだか読んでいるこっちが救われたような心持ちがします。
この少女の心もいつかは少しでも穏やかになりますように…と、わたしは祈らずにいられません。
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