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著…大平一枝『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ」行が苦手な君に』

 「カフェで働きたい」という夢があった。

 スムーズに言葉が出ないから「接客は無理だ」と諦めようとした。

 でも、話すことは苦手だけれど大好きなので、諦めたくなかった。

 自分のような思いを他の吃音を持つ若者たちにはさせたくなかった…。

 これは、発起人のそうした気持ちから生まれた「注文に時間がかかるカフェ」についての本。

 当事者やその家族の本音も紹介されています。


 今の世の中には、「たとえほんの少しであっても相手を待たせてはいけない」と人をがんじがらめにする窮屈さがありますよね。

 わたしも、わずかな時間しか待たされていないのに、店員さんから「お待たせして申し訳ありません」と深々謝られて、「こんなことで怒るお客さんがいるのかな? 何にも悪くないのに謝らされるなんて、毎日ストレスが溜まるだろうな…。そんなにみんながギスギスせず、もっと待つ・待たされることに寛容であれば、みんなが生きやすくなるだろうに…」と悲しく思うこともしばしば。

 そんなわたしのモヤモヤを、この本は晴らしてくれました。

 時間がかかってもいい場所って、なんて居心地が良いのでしょうか…。

 吃音を持つ方にだけではなく、他の方に対しても、話し始めること・話し終えることを待ってくれる世の中にしていけると良いですよね。

 先を急がなくてもいい。沈黙は恐れるものではなく、ときに安らぎと信頼をもたらすもの。待つから、聞ける本音もある。

(著…大平一枝『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ」行が苦手な君に』P235から引用)

 (中略)待つことの先にゆたかな喜びがあること、他者に寄り添うことはひとりひとりの違いを慮ることであると教えてもらった。
 それを知っているのと知らないのとで、私のあしたは小さく変わる。本書を読んでくださったあなたのあしたもきっと。

(著…大平一枝『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ」行が苦手な君に』P236から引用)


 という著者のあとがきも好きです。




 〈こういう方におすすめ〉
 「多くの人たちがそれぞれの個性を受け入れ合って生きやすい世の中にしていきたい」と願っている方。

 〈読書所要時間の目安〉
 3時間くらい。

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