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著…上島光『竜ちゃんのばかやろう』

 ついさっきまでそばにいた大切な人が、いなくなる。

 しかも自死によって。

 これは、遺族の慟哭を綴った本です。


 なお、著者は上島竜兵さんの奥様。

 この本には、お二人の出会いから別れまでが書かれています。

 それにしても、なんて悲しいタイトルなのでしょうか…。

 本心では「大好き」と言いたくても、「ばかやろう」と泣かざるを得ない状況になってしまったなんて…。

 私は、どこかで間違えて、パラレルワールドの扉を開いて入り込んでしまったのかもしれないとよく思います。
 今、私のいる世界に、なんで竜ちゃんはいないのか、どこに行っちゃったのでしょうか……。

(著…上島光『竜ちゃんのばかやろう』P42から引用)


 という文からも、途方に暮れる感覚が伝わってきます。

 突然ぽっかりと大きな穴があく感じが…。 

 しかしながら、遺族がやらなければならないことは山程あります。

 関係者への連絡。

 葬儀。

 告別式。

 役所への届出。

 銀行やカードや携帯電話の解約。

 生命保険や相続の手続き。

 大切な人が亡くなったという現実はあまりにも大きいのですが、ごく近い遺族であればあるほど、打ちのめされて泣き腫らすような時間はありません。

 やることがあった方が気が紛れるという考え方もあるのでしょうが、上記に加えて、マスコミ等の好奇の目や耳や口にも晒され、著者は非常に辛い思いをされたそうです。

 それでも、芸能人仲間たちも含めた多くの方々の協力のもと、

 「俺の葬式は、笑って送ってほしい」

 という、以前上島さんが遺した言葉の通りにしてくださったようですが…。

 実際はみんな涙の別れ。

 これほどまでに愛されていただけでなく、今も愛されているのに、それでも死を選ばざるを得なかったであろう上島さんの心の中には、一体どんな世界が広がっていたのでしょうか…。

 それはご本人にしか知り得ぬことですし、ご本人もさぞ辛かったのでしょうが、大切な人を失った方のショックや「もし自分があの時ああしていたら…」と後悔してもしきれない苦しみの深さは、想像しようとしてもしきれません…。


 〈こういう方におすすめ〉
 大切な方を自死で失う…、その悲しみを味わったことのある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 文章量はさほど多くないのですが、読み進めるごとに悲しみが伝わってくるので、少なくとも2時間以上はかけることをおすすめします。

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