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著…イッサ・ワタナベ『移動するものたち』

 まさに「絵」のみで構成された絵本。

 何枚もの絵からどんなメッセージを受け取るかは、あなた次第。


 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
 未読の方はご注意ください。



 この絵本に描かれているのは、ライオン、キリン、ウサギ、カエルといった生き物たち。

 みんな、暗闇の中、どこかを目指して歩いています。

 死神を彷彿とさせる真っ白な人物も、みんなのあとをずっとついてきます。

 「追いかける」と言うよりも、「共に在る」とでも言うかのように。

 みんな、進み続けます。

 時には、立ち止まったり、バッグ(中身は無い)を置いたり、眠ったり、苦しそうに泳いだりしながら。

 道半ばで仲間を失うこともありました。

 みんな、死に向かって歩いているのでしょうか?

 それとも、実は死から生の世界へと歩いているのでしょうか?



 わたしはその両方だと解釈しました。

 生きることは苦しいです。

 死ぬことも苦しいです。

 生まれ変わることだって容易ではありません。

 過去世で得たものを現世や来世に持っていくことは出来ません。

 ただ在るのは、自分と共に歩いてくれた仲間の旅が終わるのを悼む気持ちだけ。

 その喪失感が和らぐことはありません。

 ずっと悲しいまま。

 ずっと寂しいまま。

 それでも移動し続けなければなりません。

 死、誕生、生、再生…あらゆるものを絶え間なく繰り返しながら。

 命とはそういうものだから。

 わたしはこの絵本を読んで、そう思いました。

 あなたはどう思いますか?




 〈こういう方におすすめ〉
 大人向けの絵本をお探しの方。

 〈読書所要時間の目安〉
 10分くらい。

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