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冷凍食品

 無性に冷凍食品が食べたくなるときがある。
 それはきまって夕刻。
 まだ実家暮らしだったころ、焼きおにぎりや今川焼きを夕方のおやつとして食べていた。そのときの感覚が五臓六腑に残っているのだろう。「久しぶりに冷凍の焼きおにぎりでも食べるか」となって、実際に夕刻に食べている。
 私的・大人の贅沢。

 自分が口にするものについては、その歴史をある程度知っておきたい。その読書欲に応えていたら、気づけば自宅の本棚に「食コーナー」ができていた。

 冷凍食品についても、以前冷凍ピラフをチンして食べているとき、「そういえば、いつからあるんだろう」と気になり、調べてみたことがある。
 庶民の間に普及したのが1970年代で、開発自体は早くても1960年代ーー私のイメージする冷凍食品の歴史はこんな感じだったが、実状はかなり異なるものであった。

「日本での食品の冷凍は魚から始まった。製品としての単なる冷凍魚は、現在の冷凍食品の定義に不足する部分があるが、事業という観点では、冷凍魚ではあるものの、葛原猪平により冷凍食品事業は誕生したとされている。」「葛原猪平の事業は、単に保管のための冷凍ではなく、漁場から産地さらに消費地を結ぶコールドチェーンを構築したという点で、日本の冷凍食品事業の発祥と位置づけられている。」
尾辻󠄀昭秀『〈改訂4版〉冷凍食品入門』日本食糧新聞社、P1〜2)

 私の予想に反し、事業としての冷凍食品は、その出発点を大正年間にまで遡ることができる。
 尾辻󠄀昭秀によると、北海道にあるニチレイ森工場には、葛原猪平の業績を讃える「日本冷凍食品事業発祥の地」の記念碑が建てられている。また、2020年には、冷凍食品事業の門出から100周年にあたり、森町と日本冷凍食品協会の共同で、記念式典の開催が計画された(感染症の流行で中止)。

 ちなみに、上記の引用文中に、「現在の冷凍食品の定義に不足する部分がある」という一文があるが、ここでの「定義」について、日本冷凍食品協会は以下の4点を要件としてあげている。

(1)前処理してある
(2)急速凍結してある
(3)適切な包装がしてある
(4)品温をマイナス18℃以下に保持している

 日常生活の中で、「冷凍食品の定義を教えて」などと質問されることは、まあ無いとは思うが、一応頭に留めておきたいと思う。



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