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がんばれ氷河期の生き残りエゾナキウサギ|愛しい北海道ANIMALS

この連載愛しい北海道ANIMALSは、北の大地に暮らす動物たちを24年間にわたり見守り続けてきた結びさんによるフォトエッセイです。そんな結びさんの撮影する動物たちの姿は、おもわず息をのむほど美しかったり、可愛らしかったり、ときに猛々しかったりします。今回は、結びさんにとっていちばん付き合いが長いというエゾナキウサギをお届けします。

北海道に生息するエゾナキウサギは氷河期の生き残りとも言われ、可愛く「ピッ!ピッ!」と鳴くのが特徴です。長年会いに行っているので当たり前の存在に感じていましたが現在は準絶滅危惧種に指定されています。

紅葉と一緒に撮れた!と思ったら顔がクモの巣だらけ……そこがまた可愛い

そして今年はさらにエゾナキウサギの貴重さを感じる年になりました。貯食で忙しいはずの時期、生息地に3 度足を運び、ようやく1 度の撮影。「野生動物に絶対はない」と思っている私ですが、鳴き声すら聞こえないこともあり今回はさすがに生態を少々調べました。

昼行性か夜行性か、それもはっきりわかりません。登山をする方から「野営をすると夜も鳴いている」と聞いたことがあります。暗い岩の中を移動できるのだから夜も活動はできるはず。なかなか会えなくなったのは、夜しか行動しなくなったのかな……と考えたりもしました。

考えてもわからないし、行くしかない。その後、何か状況に変化があったのか数匹の姿をボチボチ見かけるようになりましたが、私が写真を始めた頃より、周りからの声も少なく感じます。個体数が減っているのかなと想像しています。

まだ幼い子。毛がふわふわ

上の写真は日差しの強い日にほんの一瞬だけ会えた子。それでもとても嬉しい瞬間でした。私にとっては会うことが簡単ではないナキウサギ。

ある日、何か丸いものが見えたので確認すると、こっそり近くの岩の上に出てきてくれた子。じっと待っていると、どんどんこっちに向かって来ます。嬉しくておもわず声を出しそうなのを我慢し体を動かしちゃった瞬間、シュポっと穴の中へ。動かなければもっと近くに来てくれたかも?じっとしていると人間のすぐ側にでも来てくれる、そんな可愛いエゾナキウサギなんです。

きりりとした眉毛のような毛がとっても可愛い子
(左)美しい苔のある森ですが、人間の踏み跡があることも
(右)普段は人が歩いている通路にこっそりと出てきた可愛い子

長年、エゾナキウサギに会いに通っているのは、美しい環境にもあるのかもしれません。素敵な苔のある森に人間が立ち入ることはできません。こうした環境は一度壊してしまうと、再生までに永い年月がかかるそうです。人が入れるのは通路だけがそこも動物のすみか。ガレ場までの通路には、エゾナキウサギのフンがあったり、ちょこんといることもあります。

ある時、ナキウサギの鳴き声を聞き、上ばかりを探していると「ピュルルルル~」と逃げる時に発する声。その時は足元近くにいたのかもしれません。気をつけなくちゃと思いました。

(左)葉っぱをくわえて嬉しそう?
(右)音がなくて残念ですが鳴いている「ナキウサギ」です

ここは、野生動物のすみか。気候変動という大きな課題もある中、せめて自分にできることはやりたい。「お邪魔させてもらっている」という気持ちを忘れず、動物たちが少しでも安心して暮らせる環境を保つことで、以前のようにたくさんの鳴き声が聞けるようになったらいいな……と願っています。

※私も写真を始めた頃「追いかけるな~」と注意をうけたり先輩方や動物から色々学びましたが、いまだに学んでいる途中。初めて野生動物に会いに行く方には、この記事からそんな学びのヒントを少しでも受け取ってもらえたらいいなと思います。

秋の晴れた日
背景がキラキラときれいでした
だら~んと日向ぼっこをしたり、近くで瞑想してくれることもあるかも(※岩の上でじっとしている姿が瞑想していると言われています)
雪が降る季節
寒い中で出てきてくれるのを待つのは厳し~

※ナキウサギの生息地は、場所により入れない時期もあります。
※野生動物(ナキウサギ)の生息地は、熊の生息地でもあります。餌付けなどの行為は絶対におやめください。
※ナキウサギは野生動物であることを念頭に置いた行動をお願いします。

文・写真=結び

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全68種のかわいくて素敵な動物が勢ぞろい
北海道の野生動物をとらえた写真集

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人気のシマエナガや「エゾのつく」リス、モモンガ、シマリス、ナキウサギ、珍しいオコジョなど、北の大地でしか出会えない野生動物たちに、迫力のシャチ、フクロウの仲間まで多数収録。親子や赤ちゃんの愛らしい様子など、北の大地の素敵な動物たちの小さな物語やびっくりが隠れています。本の中には、白いエゾリスやエゾオコジョも出てきます。
撮影時の動物とのエピソードを描いたイラスト付きで、親子で楽しめる写真集になっています。23年間にわたり北の大地を撮影してきた北海道在住のフォトエッセイストが手掛けた、ほっこりと雄大さを兼ね備えた一冊です。

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