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【連載】東京アビシニアン

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これは、わたしの自伝。 小洒落た、鼻持ちならない、胡散臭めのミステリーが書きたい! お洋服が好き、東京はまだまだ探検中。
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#東京

【連載】東京アビシニアン(14)Roppongi

【連載】東京アビシニアン(14)Roppongi

 明け方から決行した抗議活動に、斎藤はいやいやながらつき合ってくれた。素人じみた真似するんじゃないと、機嫌はかんばしくなかったけど、結果的に十人くらいの仲間も集めてくれた。どれくらい払ったんだろう。毎回協力者を買収しないといけなくなると、先の見通しは暗い。幸い、市民が声を上げるのが珍しい国だから、とたんにニュースやバラエティー、ワイドショーのカメラが回って来た。遠巻きに騒ぎを撮影するメディアたち。

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【連載】東京アビシニアン(2)Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(2)Jiyugaoka

 海外ブランドの路面店はないけれど、値の張るアンティーク家具やジュエリーを売る店の並ぶこの界隈には、数か月前から怪盗が出没すると噂だった。報道番組はその話題で持ちきりだ。言ってしまえばただの強盗だけど、ガラスは無傷、警報も反応せず、それでいて一級品ばかりをくすねとって、重厚な封蝋をほどこした犯行声明に「頂戴いたします」なんて走り書きをわざわざ遺していく。そんな浪漫をそそる手口から、雑誌やニュースは

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【連載】東京アビシニアン(12)Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(12)Jiyugaoka

 数か月前より、東京各地で犯行に及び話題をさらっている、通称・怪盗アビシニアンについて、独自取材による続報が入った。それも、第一報を発した女性ライターからの再投稿。なんでも、今まで報道機関があてにしてきた怪盗の特徴が間違っていた可能性があるというのだ。

 周音は原稿から顔を挙げ、慶介に勝利の色の瞳を向ける。疲労感は完全には去っていないが、安堵が前面に張り出していた。まず、ここまで来られた。周音は

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