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惑星と人の再生を見た、「反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ コンサートツアー2023」_2023年2月13日
2023年2月13日に、「反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ コンサートツアー2023」に行ってきました。
前半の、ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番」は、反田恭平さんの弾き振り。明確なメロディラインがなく合わせるのが難しい曲だと思うのですが、ピアノを弾きながら反田さんが行う指揮にJapan National Orchestra(管弦楽)の演奏がピッタリ合っていて、気持ちが良かったです。
私は初めて聴いた曲だったのですが、まるで雨足が強くなる中、軒下で雨宿りをしているような気持ちになりました。曲を聴きながら想起するイメージの中で、私は俯いているのか足元の2メートル先あたりを見ています。
そのうちに、この映像は遥か昔の記憶だと気がつきました。今、目の前には干からびてヒビ割れた大地が、どこまでも続いています。ときどき微かに風が吹きますが、枯れ草はなびくことさえありません。
曲が展開していくのに合わせて、この地面がゆっくりと波打ち始めるのが分かりました。うねりは次第に大きく、大地が砕けていく音がします。
すると、うねりの先に虹が見え、地平線の向こうから大地の波に乗って緑が広がって来るのが見えます。長い時間をかけてそれは森になり、再び大地が命を取り戻します。
「ああ、私の頭の中に浮かんだイメージは、惑星の再生だった」
曲が終わり、拍手をしながら私はそう実感していました。
このイメージは2幕目にも引き継がれていて、1幕目で指揮をしてい反田さんが舞台の袖でピアノ演奏に徹し、指揮が佐渡裕さんに代わったマーラー「交響曲第1番「巨人」室内オーケストラ版」では、まるで再生した惑星に人類が生まれ、文明を築いているように見えました。
原始の時代はとうに過ぎ、当たり前に文明を味わう時代に入っています。人たちは華やかな舞踏会を楽しみ、しかし戦があり、尊い命が失われていく。曲の流れの中で私は、嘆きや悲しみを抱えた葬列を俯瞰する、圧倒的に静かな視点でイメージしていました。
「ただ、ひとつの物語が終わった。それだけのこと」
惑星も人も、すべての生命は巡る。それだけのことだと感じたのです。
私は2幕で演奏されているのが「巨人」という、新しい存在の誕生の曲であることを知りませんでした。それでも曲を聴きながら、葬列の後に人知を超えた巨人が見え、恐怖とも畏怖ともつかない感情で見上げていたのです。
音で想念を伝える作曲家の力に、その純度を保って現代に受け継ぐオーケストラの力に、しみじみ感動しました。
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さて、1幕目のアンコールは、反田さんによるショパンの「練習曲」でした。私はとりわけこの曲が大好きなのです!
かつて辻井伸行さんがジャパンツアー最終日のアンコールで弾いたときに、その演奏の強さに弦がはじけ飛ぶ様を見た後は、何度も夢に見たほどです。
反田さんのショパンはいくぶん軽やかで、華やかな広がりのある演奏でした。同じ曲もピアニストによって違う魅力を引き出されるという当たり前のことに、感動で涙が溢れました。
反田さんが演奏するこの曲を、私は同じオペラシティで数年前にも聴います。しかしこの日の演奏の色彩の豊かさたるや、目を見張るものがあった。おこがましくも、そう感じるのです。
演奏に関してアカデミックなことは分かりませんが、私にとって音楽を聴きながら湧き続ける想念と戯れている時間は、日常においてもっとも楽しい経験の1つです。
佐渡さんが指揮した最後の曲は日本の歌でした。
曲名も分からないけれど、懐かしい。
「結局、命を尊び人生を楽しむこと以外、人間が関与できることなどないのではないか」と思いました。そして、DNAに組み込まれた原風景。世代を超えて受け継がれるものとは、こういった言語化の及ばないものなのかもとも。
※サムネイルなど、講演の写真は「BMW Japan Presents 反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ コンサートツアー2023」公式ウェブサイトよりお借りしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1677376490340-8RN7d1jNFf.jpg?width=800)
【ききみみ日記】
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